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どうなる越谷サンシティ 全面建て替え計画の見直しで

  • 2023年07月21日

埼玉県越谷市のショッピングセンターや市民ホールなどが入る複合施設「越谷サンシティ」。建て替えの計画が進められていましたが、越谷市は5月、部分改修にとどめる新たな方針を発表しました。その方針に対し、市民から疑問や反発の声が上がっています。

(さいたま局春日部支局記者/小川高史)

越谷サンシティとは

「越谷サンシティ」は、JR武蔵野線南越谷駅と、東武スカイツリーライン新越谷駅の近く、徒歩3分ほど場所にあります。
敷地面積1万9000平方メートルあまりに「イオン南越谷店」を中核に衣料品店や飲食店など18のテナント、大小2つのコンサートホールに展示スペース、市の出張所や図書館の機能なども備えた複合施設です。
昭和54年(1979年)のオープン以来、多くの市民に親しまれ、この地域最大の祭り「南越谷阿波踊り」も、ここのホールや施設の周辺で行われてきました。

老朽化で建て替え 当初の計画は

しかし、オープンから40年以上がたち老朽化が進んできたことから、越谷市は町のにぎわいを取り戻そうと、2年前の4月、越谷サンシティを全面的に建て替える「整備基本計画」を策定しました。
その計画は、現在の建物をすべて解体したうえで、市がホールや図書室などの公共施設を新たに建設し、残る土地に民間主導で商業施設を建設するものでした。
市の負担額としておよそ390億円を見込んでいて、2028年度のオープンを見込んでいました。

1年延期からのホール建て替え見送り

ところが去年5月、市は建設資材の価格高騰などを理由に事業開始を1年延期し、オープンは2029年度にすると発表しました。
さらに、ことし5月、越谷市は計画そのものを大きく見直すことを発表しました。
その内容は、ホール棟の建て替えを取りやめ、大規模改修にとどめるというものでした。
現在は商業棟にある図書室などの機能をホール棟に移したうえで、現在の機能を中心にした改修することになりました。
その理由として、市は市立病院や小中学校、保育所など、サンシティと同じ時期に建設された公共施設でも老朽化が進んでいて、その整備に多額の費用が見込まれるためだと説明しています。
この計画見直しで、市の財政負担はおよそ220億円に圧縮され、170億円減らせるということです。

越谷市 福田晃市長

越谷市 福田市長
「基本的に老朽化した施設を再整備して必要な公共施設の維持とにぎわいを創出する目的です。高度経済成長期にできた多くのものは、今後10年で手を着けていかねばならない。持続可能な行政運営を考えた場合、費用はできるだけ抑えていかなければならない。にぎわいをどのようにつくるのか市民の方から多くの要望があったが、引き続き意見を聞き適切に対応していく」

計画見直しの背景は

越谷サンシティの建て替え計画には「南越谷地域のにぎわいを創出していく」という大きな狙いがありました。
商業施設はアクセスの良さから多くの買い物客などを集めてきましたが、老朽化に加えて1駅隣の越谷レイクタウンに、15年前に全国有数の規模のショッピングモールがオープンした影響などで、以前ほどの集客力はなくなっているといいます。

計画見直しで影響も

越谷サンシティを拠点にウェルビーイングなまちを目指す会 ホームページより

また、市民からは今回の再開発にあわせて、越谷市をホームタウンとするバスケットボール、B2リーグ「越谷アルファーズ」の新しいホームアリーナ設置を求める声も上がっていました。
2026年にスタートする新B1リーグの基準を満たす、5000人以上の収容力を持つ多目的施設ホール設置を求める署名活動も行われ、これまでに7000を超える署名が集まっていました。

突然の見直しに疑問の声も

そうした中での突然の大きな方針転換に、市民からは疑問の声が上がりました。
ホール棟建て替え見送りはアリーナ設置が遠のく形となり、SNSでは疑問の声も上がっていました。

『サンシティにアリーナできるの楽しみにしてたのに』

『サンシティをにぎわい創出の中でどう活かしたいのか見えてこない』

『話が急に変わりましたね。市民の意見も聞かずに変更』

中村直弘さん

署名活動を行っていた「越谷サンシティを拠点にウェルビーイングなまちを目指す会」代表の代表の中村直弘さんは、この施設の整備向けて開かれていた市の懇談会の委員を務めていました。

中村直弘さん
「突然の方針転換は寝耳に水でした。高度成長期に建設した病院などの公共施設の老朽化は以前からわかっていたことで、決定の経緯が不透明だと感じます。むだな財政負担は減らすべきですが、国や県、近隣自治体、民間企業や市民などの協力による多様な資金調達で負担の分散を図ることもできるではないか」

“「計画見直し」の見直しを” 市議会で請願可決

中村さんたち当時の懇談会の委員などは6月、市議会に対し、市民の意見を聞いた上で方針を決定するよう求める請願を提出。
請願の理由として、市の建て替え計画見直し案は「にぎわいを創出するという当初の目的が欠如していて、市民や議会などからの意見を聞かずに行われ経緯や検証内容が不透明」だと批判しています。
そして、今後のサンシティのあり方に関する方針を決定する際は、市民や有識者などの意見を聞くための審議会を設けることや、議会の議決事項とすることなどを求めています。

越谷市役所

この請願は市議会で賛成多数で採択されました。
市は「請願を真摯に受け止めてしかるべき対応を考えていきたい」としています。

これにより、2029年度のオープンはさらに遅れる見通しとなりました。
越谷市は、市民の要望と財政負担の両立を図りながら、どのように地域のにぎわいを創出していくのか、難しい判断を迫られています。

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