ページの本文へ

  1. 首都圏ナビ
  2. 埼玉WEB特集
  3. 埼玉の県立高校 すべての女子制服でスラックス選択可能に

埼玉の県立高校 すべての女子制服でスラックス選択可能に

  • 2023年04月04日

入学式のシーズン。埼玉県の県立高校では、この春からすべての女子の制服でスカートかスラックスかを選べるようになりました。
性の多様性などを背景に、制服の組み合わせを選択できる動きが広がっています。

(さいたま局 記者/藤井美沙紀)

スラックスも選択可能に 新入生たちの反応は?

3月上旬、埼玉県熊谷市の百貨店で恒例の制服の注文会が開かれました。
県立高校16校の制服が展示され、この春、入学する生徒が採寸に訪れました。
生徒たちにスカートとスラックスの両方が選べるようになったことを、どう感じているのか、聞いてみました。

「私はスカートをはきたいと思っていますが、スラックスも選べるようになったのは、個人の自由になっていいと思います」

「みんな着ているなら、私も着てみたいと思います。寒い時や風が強い時に、スカートだと寒かったりめくれたりするので、いいなと思っています」

多くの女子生徒は、とりあえずはスカートを注文したということですが、しばらく取材を進めると、スラックスを注文した人にも話を聞くことができました。
夏用にはスカート、冬用にはスラックスを注文したといいます。

生徒
「普段はスカートのほうが多いんですが、冬は自転車に乗って通学するので、乗りやすい服装がいいかと思ってスラックスにしました」

母親
「ズボンをはいている子が多いので、娘にもはいてもらって大丈夫かなと思って薦めました。時代は変わったなと感じます」

百貨店によると、スラックスを注文する女子生徒は以前はわずかでしたが、今シーズンは全体の1割ほどに上るということです。

百貨店の担当者
「昨年は10人20人というレベルだったので、ことしはだいぶ多くなったと感じています」

県教委通知「女子制服を選択制に」

県立高校の制服でスラックスが選べるようになったのは、埼玉県教育委員会が去年7月に出した通知がきっかけです。
原則として、2022年度中に女子の制服を選択制とするよう、すべての県立高校に求めました。
社会で女性のスラックス着用が一般的になっていることも背景にあるといいます。

埼玉県教育委員会 高田直芳 教育長
「大人の女性がどちらでも、ファッションの1つとして選択して生活や仕事をしていますよね。きょうはスラックスにしようとか、きょうはスカートにしようとか、あまり深く考えることなく、自由に選べる環境があることが大事だと思います」

一歩先に進む学校も 生徒の声をきっかけに

こうしたなか、さらに一歩先の取り組みを進めているのが、県立川口北高校です。
3年前の2020年4月から女子生徒がスラックスを選べるようにしました。いまでは、ふだんからスラックスをはいている女子生徒も多くなりました。

スラックス着用の女子生徒
「ひらひらして邪魔というのがないので、動きやすいかなと思ってはいています」

きっかけは5年前、性的マイノリティーの当事者の生徒が自ら声を上げたことでした。
「制服によって、男性らしさ、女性らしさが決められてしまっている」と、問題提起したのです。

川口北高校 生徒会担当 辺田洋文 教諭
「教員も、そもそも男性らしさとか女性らしさに縛られている場合が多いので、まずびっくりしたというのは正直にあります。生徒の声をきくことによって誰もが過ごしやすいような環境を作っていくということに、少しずつですが目を向けられるようになりました」

これを受けて、生徒会がすべての女子生徒を対象に、「女子の制服にスラックスを追加すべきか」アンケート調査を行いました。
すると、およそ6割が賛成。「生徒が着たいものを着られるようにすべきだ」などの意見が寄せられました。

性の多様性尊重した制服 導入へ

スラックスを選べるようにしたことをきっかけに、生徒会のメンバーは性の多様性を尊重するために何ができるか、制服のあり方も含めて検討してきました。

その結果、1年後の2024年度からは、さらに選択の幅を広げた新たな制服が導入されることになりました。
詰め襟だけだった男子はブレザーが選べるようになり、男女を問わず首元のリボンやネクタイ、それにスカートを選択できるようにしたのです。

この日、生徒たちに、新しい制服が初めてお披露目されました。

「前より動きやすい感じがします。このブレザーとか動きやすいなって」

「スラックスもちゃんと統一性もあって、川口北高校らしいと思います」

「制服を男の人と女の人で分けるのではなくて、自分で着たい制服、自分の表現したい制服で登校することができるので、すごくそれがいいなって思います。生徒だからこそ分かることもあると思いますし、いろんな人が考えを主張していくことで、今後もみんなが過ごしやすい環境を作れたらと思います」

「継続的に制服の点検・見直しを」

埼玉県教育委員会は、各高校に、性の多様性を尊重して、継続的に制服の点検や見直しに取り組むよう求めています。

埼玉県教育委員会 高田直芳 教育長
「どれを選んでもいいというユニセックスの制服を導入している学校も増えてきたので、そういう動きは歓迎すべきだと思います。子どもの気持ちに配慮することが第一ですので、その気持ちに寄り添って、安心して学校生活が送れるようにしていきたい」

取材後記

埼玉県教育委員会によりますと、男子生徒がスカートを選びたいというケースもあるということで、「周囲の理解があってこそ、気兼ねなく選択ができるようになるので、性の多様性への理解が広がるような教育を進めていきたい」としていました。

川口北高校では、制服の選択の幅が男女を問わずに広がることになりますが、どんな組み合わせを選んでも受け入れられるよう、生徒の理解を深めていきたいということです。

高校に通う生徒にとって、1日の大半を着て過ごす制服。その制服に身を包んだ自分の姿に、愛着を持てるか、それとも違和感を抱いてしまうのか。思春期の生徒にとって、日々の過ごしやすさに影響する大きな違いだと感じます。

ページトップに戻る