卒業シーズン、さいたま市大宮区の中学校に巨大な卒業証書が登場しました。大きさは高さ6メートルに幅9メートル。そこには親たちの思いが込められていました。
3月15日、さいたま市大宮区の中心部にある市立桜木中学校で卒業式が行われました。
生徒143人が3年間通った学びやを巣立っていきました。
この日、卒業生たちに特別に贈られたのが巨大な卒業証書です。正門近くの校舎の2階から掲げられ、ビニール製のシートで作られています。
迫力があってすごいと思います。
圧倒されました。大きいとは聞いていたんですけど、こんなに大きいと思わなかったので。思わず写真を撮ってしまいました。
この卒業証書は、生徒の父親らでつくる「桜木パパの会」が中心になって地域の人たちで実行委員会を作り、ことし1月から準備を進めてきました。
新型コロナの影響でスキー合宿が中止となり行事が縮小されるなど、3年間の学校生活が制限されてきた卒業生に最後の思い出作りにしてもらおうと計画されました。
中心メンバーの松本健市さんは、卒業証書の制作には地域を元気にする思いも込めたといいいます。
松本健市さん
「町のみなさんに見えるところにつけたら、コロナ禍や物価高で疲弊している地域も明るく盛り上がってくれるかなと考えました」
当初は「世界最大の賞状」としてギネス世界記録への認定を目指しました。
しかし、認定されるには本物の卒業証書と同じように素材を紙にすることなどが必要だとわかりました。
それでは屋外で地域の人たちにも見てほしいという思いを果たせなくなるとして、世界記録への挑戦を断念しました。
「卒業生を頑張ってねと応援してくれた人たちも見ることができて、当然、卒業生も見ることができて、われわれも見ることができて、地域の人たちも見ることができるものを作るのが一番だと思う」
卒業式を3日後に控えた日、学校の体育館で松本さんたちと卒業生の有志が一緒に巨大な卒業証書を制作しました。
あらかじめ看板制作会社で細長いシートに分割されて印刷されたものをひとつに貼り合わせます。
強度が高い両面テープをシートに貼り、継ぎ目がわからないよう、ずれないように慎重に1枚ずつローラーなどを使って整えていきました。
そして、ロープをつるすための穴を空けておよそ120個もの金具を取り付けました。2時間あまりで巨大な卒業証書が完成しました。
「大きな卒業証書をつくると父親から言われびっくりしたけど、3年間過ごした仲間との思い出作りになりました」
「けっこう体を使う作業だったので少し疲れましたが、達成感の方が大きいです。楽しかったです。一番仲がいい友達と記念撮影をしたい」
「学校生活では、体育祭で今までできていた競技ができなくなったり、合唱祭も歌えない時があったりいろいろありました。きょうの制作は、すごく楽しかったからいい思い出になりました」
そして、卒業式当日。
掲げられた卒業証書には、あえて「世界一」の文字は残されました。
世界記録への挑戦はあきらめましたが、卒業生が世界中で活躍するようにという願いが込められました。
生徒たちはマスクを外して笑顔で記念写真を撮って、門出を祝っていました。
最初は大きすぎて自分でもびっくりしたんですけど、こういう卒業証書をほんとうにつくれるんだなと感じました。
みんなの笑顔をここで見ることができて、この思い出を地域で受け継いでいきたいと思いました。
巨大な卒業証書は、学校の前の道路からもよく見える位置に掲げられ、地域の人たちもその様子を眺めたり写真を撮影したりしていました。
「びっくりしましたが粋なことをやるなと感じました」
松本健市さん
「想像以上に喜んでもらえて本当に企画して良かったなと思いました。今回のような大きなこともみんなと協力すればできると、卒業生に感じてもらえたらうれしいです」