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学生×宅食業者×警察=特殊詐欺被害防止へ 埼玉県所沢市

  • 2023年03月10日

あとを絶たない特殊詐欺。被害の多くは高齢者で、いかに効果的に注意を喚起できるかがポイントとなっています。こうした中、所沢市で、学生と宅食業者、それに警察がコラボしたユニークな取り組みが行われました。

(さいたま局記者/海老原悠太)

特殊詐欺被害 増加傾向に

埼玉県内の特殊詐欺の被害が増加傾向にあります。埼玉県警によりますと、去年は1387件と前の年に比べ、およそ3割増えました。警察は、新型コロナの影響が落ち着きつつある中で、犯行グループの動きが活発化したためとみています。

埼玉県警本部

被害者の年代別では、65歳以上の高齢者がおよそ9割と依然多く、喫緊の課題になっています。また、手口を見ると、最も多かったのが身内をかたるオレオレ詐欺で、全体のおよそ4割を占めました。次いで預貯金詐欺がおよそ2割などとなっています。

警察と若者がコラボ

特殊詐欺の被害を防ぐため、埼玉警察は本部に専門チームを作るなど対策を強化しています。各地の警察署でも個別に活動していて、所沢警察署は、多くの人が訪れるプロ野球・西武の本拠地ベルーナドームで特殊詐欺の被害防止を呼びかける動画を流したり、電話の着信音に反応して詐欺への注意を呼びかける犬のぬいぐるみを配ったりするなど、さまざまな対策を繰り出してきました。

所沢警察署

その所沢警察署が、次の取り組みとして白羽の矢を立てたのが学生でした。特殊詐欺を撲滅するためには、被害の多い高齢者だけでなく、若者にも特殊詐欺の実態を知ってもらい、幅広い世代で対策を講じる必要があると考えたのです。この警察署は、市内の短期大学と防犯対策の協定を結んでいて、これまでも大学で講義を行ったり学生たちと一緒に街頭活動をしたりしてきました。そして今回新たに、高齢者向けに啓発用のイラストを作ってほしいと学生に持ちかけました。

思いこもったイラストが啓発グッズに

依頼を受けた羽柴彩夏さんは、これまでに学んだ特殊詐欺対策の知識を生かし、わかりやすく、インパクトがあるデザインを目指しました。

そして、3つのイラストが完成しました。

1つ目は、ATMを悪用した特殊詐欺への注意です。「ATMを操作すれば、払いすぎた税金が戻ってくる」などといってATMに向かわせ、手続きをしているようにみせかけて詐欺グループの口座に金を振り込ませる手口を、ATMの前で女性が犯人と電話で話すようすで表現しました。また、イラストには「通話しながらATMを操作している人を見かけたら通報しよう」というメッセージを添え、周囲の協力を呼びかけています。

2つ目は、自宅の電話を留守番電話に設定するよう促すイラストです。被害の多くは、自宅にかかってくる電話がきっかけです。このため、留守番電話にしていれば、電話がかかってきても自動音声が流れるため、犯人との接触を断つことができます。また、犯人は録音を嫌うため撃退することもできます。羽柴さんはこうした対策の効果を、電話に出ないようにしている女性の姿で表現しました。

3つ目は、家族とのコミュニケーションを促すメッセージです。女性が家族と話す場面を描くことで、あらかじめ合言葉を決めておけば「オレオレ詐欺」を防げることを表現したほか、不審な電話があったときには1人で抱え込まないようにと思いを込めました。

所沢警察署は、3つのイラストを1枚に収めた啓発用のグッズを作りました。折ることで、電話の近くなどに立てて置くことができるポップになります。

3つに折るとポップに

宅食業者ともコラボし効果アップ狙う

羽柴さんの思いが詰まったポップ。所沢警察署は、詐欺グループから狙われやすい高齢者に、効果的に届けるための秘策を考えていました。それが宅食業者とのコラボです。業者は、高齢者のところに毎日訪問して食事を届けているため、一緒にポップを渡してもらえば見てくれるかも知れないと考えたのです。

この日、所沢市内の80代の男性のもとを宅食業者が訪問しました。そして、食事とともにあのポップを手渡します。受け取った男性は、さっそく食卓に置いてくれました。

80代男性
「怖い印象を持たせるところが非常に良いと思います。これを見ると注意をしないといけないなという印象を受けますね」

宅食業者の宅配スタッフも手応えを感じていました。

宅食業者
「気をつけないといけないという言葉をもらい、電話の横に置いてくださいって言ったら、置くねってみなさんに言ってもらいました。結構、手応えはありました。私たちと学生さんたちと警察の三位一体でこの地域を守っていけたらと思います」

羽柴彩夏さん
「自分の特技のイラストで人助けができたらうれしいです。ポップがいろいろな人に行き渡って、電話台の上に置いてもらって、詐欺が少しでも減ればいいなと思います」

このポップは、さまざまな啓発活動の場で配られるということです。

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