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川越の小学校 AED使い授業 突然倒れた人に3分で何ができる?

  • 2023年02月20日

もし今、目の前で誰かが意識を失って倒れたら、どうしますか。
埼玉県川越市の小学校で、子どもたち自身で考える授業が行われました。
学校での突然死を防ぐ取り組みです。

さいたま局記者/高本純一

目の前で人が倒れたら? 公開授業で考える

2月、川越市立中央小学校の体育館で6年生31人が参加して公開授業が行われました。日本AED財団や川越市教育委員会などが開いたもので、教育関係者や医療関係者などが見学に訪れました。
授業では、心停止してから1分経過するごとに助かる確率は約10%ずつ下がること、一方で救急車が通報を受けてから現場に到着するまでの平均時間は約8分かかることが説明されました。

鈴木敏之 教諭
「救急車が到着するまで何もしなかったら、命を救える可能性はどんどん低くなります。では、みなさんは、目の前で人が倒れた時に何ができますか。前回の授業では、助けを呼ぶ、AEDを使う、心臓マッサージをする、119番通報するなど学習しましたね。それでは、きょうは、助けを呼んで、大人の人が到着するまでに3分間かかると想定して、その間に、自分たちに何ができるか考えてみよう」

大人が来るまで3分 子どもだけで何ができる?

子どもたちは6人ずつのグループに分かれて、それぞれどんな場所でどんな人が倒れていたかという状況を伝えられて、何ができるかを話し合いました。
想定の場所は、それぞれ商店街、通学路、公園で、条件は携帯電話が1台だけです。
子どもたちは、それぞれの役割を決めていました。

足が速いのでAEDを取りに行ってもらう。

説明が上手だから119番通報してもらう。

リズム感がいいので心臓マッサージを交代して行う。

声が大きいから大人を呼ぶ。

冷静なので、119番通報してもらう。

心臓マッサージは力がないとできないので、1人1分間ずつ交代しながら行う。

“小学生でもできることが” 自分ごととして実践

119番通報で状況を説明

役割分担を決めたら、次は実践です。
決められた時間は大人が駆けつけるまで3分間、子どもたちで対応できるのか。

交代しながら心臓マッサージ

1人が119番通報をして状況を説明すると、別の1人は人形への心臓マッサージ。
「1、2、3」と声をかけながら、交代して心臓マッサージを行いました。

そして、1分30秒が経過。模擬のAEDが運ばれてくると、人形に装着させて電気ショックを与えるスイッチを押す。子どもどうしで、すばやく連携しながら行動していました。

AEDの音声指示に従いスイッチを押す

小学生でも、AEDを持ってくることや大人の人に助けを呼びに行くこと、119番通報することはできるので、もしもの時には、きょう学んだことを思い出して勇気を持って行動したい。

目の前で人が倒れた時に何をすればいいかわかり、勉強になった。しっかりと対応できるように、もっと勉強したいと思った。

「小学生だからできない」ではなく、もし目の前で人が倒れたら、ためらわずに勇気を出して、AEDを使って、命を救いたい。

緊急事態はいつ訪れるかわからないので、AEDがどこにあるか場所を把握しておいて、もしもの時に備えたい。

授業を見学した別の小学校の校長
「命を救うため、子どもたちが知恵を出しながら、それぞれの良さから役割を考えている姿がすばらしいと思った。体験することは大切なことであり、学んだ児童から保護者に伝わるので、本校でもこうした授業を取り入れていけたらと思う」

鈴木敏之 教諭
「救命の知識や技術的なことを学ぶだけでなく、目の前で人が倒れた時に、自分にどんなことができるか、自分ごととして考えてもらうことで、『小学生でもできることがあるんだ』ということに気づいてもらいたいという思いで、この授業を考えました。大切な命をみんなで守ることができる学校を作っていきたい」

川越市で広がる「命を救うための授業」

桐田明日香さん

川越市のとなり、さいたま市では2011年、小学6年生の桐田明日香さんが学校で駅伝の練習中に倒れて、亡くなる事故がありました。
この事故を教訓に「ASUKAモデル」と名付けた教員向けのテキストが作られ、心臓マッサージやAEDの使い方などを学ぶ授業が行われています。

川越市では、地元の埼玉医科大学総合医療センターの医師や救急救命士が、2018年に、桐田明日香さんの母、寿子さんから直接、話しを聞いたことをきっかけに、ASUKAモデルを広める取り組みが始まりました。
医師たちは直接、市内の小学校の校長に電話をして、医師らが学校に出向いて授業を行うことを提案しました。さらに校長が別の学校を紹介して、授業を行う学校が少しずつ増えていったということです。

2020年2月に市内の小学校で行われた授業

川越市教育委員会でも、職員が桐田さんの話を聞いたことをきっかけに授業の実施に関わるようになり、現在は教育委員会が窓口となって、学校と埼玉医科大学総合医療センターの間で調整を行い、医療関係者が多くの学校に派遣され、授業が行われるようになっています。

「命を救うための授業」さらに広げるために

川越市立中央小学校での1月の授業

川越市では、昨年度からさらに一歩進めて、子どもたちに指導する役割を各学校の教師たちが担うよう取り組みを始めました。

今回の公開授業が行われた小学校で、1月に別の学年で行われた授業では、心臓マッサージやAEDを体験する場面では、担任の教諭が子どもたちに手順を教えていました。

埼玉医科大学総合医療センター 救急救命士 安齋勝人さん
「医療従事者が教えるにも、マンパワーの限界があります。学校の先生たちが教えることは、日頃から子どもたちとコミュニケーションもとれているので、理解が進むものと期待しています。こうしたスタイルで、救命の授業が広まればといいなと思っています」

救命カード

この小学校では教職員のために、いざという時にあわてず対応できるよう「救命カード」を作って配りました。救命処置や心肺蘇生の手順、救急車の要請方法など、目の前で人が倒れた際の対応手順が記されています。

川越市立中央小学校 福島みどり 校長
「心臓マッサージやAEDの使い方については、教員を対象に研修は実施していますが、いざという時に、こういうものが手元にあることによって、素早く自信を持って対応できるのではないかと考えて作りました。折りたたむとネームプレートに入る大きさなので、すべての職員のネームプレートに入れています」

川越市教育委員会 千代田和也 指導主事
「医療関係者を招いた授業を参観した先生がその授業を参考に、自分のクラスで授業を行うことも目指しています。こうしたことを積み重ねていくことで、校内の普及はもちろん、異動先でも同様の授業を実施することで、さらに広がります。今回の中央小学校での取り組みを市内の小中学校に伝えていきたい。知識や技術的なことだけでなく、子どもたちに、自分も含めて『命を大切にする心』も育てていきたいと考えています」

授業の意義や狙いは 関連記事はこちらから

取材後記

川越市の「命を救うための授業」では、子どもたちが桐田明日香さんのことを紹介するビデオを見ます。授業を始めた救急医療に携わってきた医師は、自殺を図った子どもを治療することもあったため「自分の命も他人の命も大切にしてほしい。自殺やいじめをしてはいけない」という思いを込めて、ビデオの感想を聞くそうです。すると、子どもたちは命の大切さへの自覚が高まって、心臓マッサージやAEDの使い方を学ぶ意欲も高まると話していました。
もうすぐ春。希望に満ちた新入生が安全な学校生活を送ることができるように、こうした授業が多くの学校に広がってほしいと思います。

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