ことし4月に投票が行われる埼玉県議会議員選挙では2つの選挙区を1つにする「合区」が行われ、さいたま市議会議員選挙では定数の変更が行われる条例の改正案が、それぞれの議会で可決されました。
なぜ、このようなことが行われたのか、NHKさいたま放送局マスコットキャラクター「サイちゃんタマちゃん」が、取材を担当したさいたま放送局の粕尾記者に聞きました。
粕尾記者、去年10月の草加市長選に引き続き、今回もよろしくお願いします。
よろしくお願いします。
ことし4月は、埼玉県内でも、いろいろな所で選挙があるって聞きましたが、これってどういう選挙なんでしょうか?
4月に行われるのは「統一地方選挙」といいます。この選挙は有権者に投票への意識を高めようと、地方自治体の知事や市区町村長、市町村議会議員の選挙について、投票日を統一して全国一斉に行うもので、4年に一度行われます。
今回、埼玉県では4月9日に埼玉県議会議員選挙とさいたま市議会議員選挙が、4月23日に行田市、北本市、毛呂山町の首長選挙のほか、県内各地で市議会議員や町議会議員の選挙が行われる予定です。
今回行われる選挙は、4年前の前回と何が違っているの?
埼玉県議会とさいたま市議会では、4年に1度の選挙を前に、毎回、区割りや定員の見直しを行っているんです。その結果、今回の埼玉県議選では「合区」が、さいたま市議選では「議員の定数の変更」が行われることになったんです。
それぞれの選挙で変わる部分があるんですね。県議選の「合区」って何ですか?
「合区」というのはいくつかの選挙区を文字通り1つに合わせて新しい選挙区を作ることです。今回の県議選では、秩父市を選挙区とする「北1区」と横瀬町や皆野町などを選挙区とする「北2区」を合わせて、新しい「北1区」を設けることになりました。
この2つの区はいずれも定数が1人で、新しい「北1区」は、2つの選挙区の定数をそのまま足して、2人となります。
あまり変わらないような気もするけど。なんで、こんなことするの?
これまでと同じ数の議員が選ばれることになるので、タマちゃんの言うとおり、確かにあまり変わらないように感じますね。でも、この「合区」で大きな問題が解決することになる見込みなんだよ。
そうなんですか!
公職選挙法では、県議会議員選挙の選挙区の人口は、各都道府県の人口を議員の定数で割ることで計算される、議員1人あたりの人口の半数以上でなければならないと規定されています。これは「1票の格差」をなくすために規定されているものです。
この規定を計算式にすると、次のようになります。
選挙区の人口≧各都道府県の人口÷議員の定数÷2
しかし、県の議会事務局によりますと、3年前の令和2年に行われた国勢調査の結果をこの計算式に当てはめると、「北2区」はこうなったんです。
3万7725(北2区の人口)<3万9487=734万4765(埼玉県の人口)÷93(議員の定員)÷2
式の左側の数字の方が大きくないといけないのに、右側の方が大きくなっていますね。
そうなんです。「北2区」は人口が減少したため、このように、規定を満たしていないことがわかったんです。そこで、県議会では各会派の代表による協議会を設置し、改正案をまとめていました。この結果、2つの区を合区する案が可決されました。
新しい「北1区」について、さきほどの計算式にあてはめてみると…
9万7399(新北1区の人口)>3万9487=734万4765(埼玉県の人口)÷93(議員の定員)÷2
以上のように、今度は式の左側の方が大きくなるので、公職選挙法の問題は解消される見込みです。
なるほど、今回の「合区」は「1票の格差」が生じないようにするには、必要なことだったんですね。
次に、さいたま市議選では、議員の定数が変更されるということですが、どのように変わるんでしょうか?
市議選ではさいたま市の緑区で議員の定数が1人増え、桜区で1人減ります。
ここでサイちゃんタマちゃんに聞きたいんだけど。
なんでも聞いて!
緑区といえば何を思い浮かべるかな?
僕は「見沼田んぼ」です。「わたしたちのさいたま市」で勉強したことがあります。
私は「埼スタ」!ことしは満員の「埼スタ」で、大声で応援したい。
そうだね。緑区は自然が豊かで、「埼玉スタジアム」のような施設もあったりする一方で、都心からのアクセスも良くて、浦和美園駅を中心に人口が増えています。
たしかにあのあたりは行くたびに、「ここ、ちょっと景色変わったな」って感じること多いね。
今回議員の定数が見直されたのは、この緑区の人口の増加が理由なんです。
さきほども紹介した公職選挙法には、「地方議会の議員は人口に比例して条例で定めなければならない」という規定もあります。
その規定に沿って、さいたま市が調べたところ、令和2年の国勢調査では、それぞれの区の人口を議員の定数で割ることで計算される「議員1人あたりの人口」が、緑区では2万5664人、桜区が1万9732人となり、2つの区の間で約6000人となり、最も差が大きいことがわかりました。
これは緑区では人口が増加しているのに対し、桜区の人口が横ばいになっていることで、2つの区の差が開いてしまったんです。このため、2つの区の差を縮めるために、今回定数の変更を行うことになりました。
この結果、緑区の定数は1人増えて6人に、桜区は1人減って4人になりました。
2つの選挙とも、人口が大きく関わっているんですね。人口の変化で、選挙区を変えなければならないんですね。
埼玉県議選の「合区」もさいたま市議選の「定数変更」もともに、地域の格差をなくして、有権者の意見をより平等に、選挙に反映するため行われるものです。選挙での格差が少なくなり、人口の多い地域と少ない地域に住んでいる人の意見が同じように反映できれば良いですね。
今回、対象の地域に住んでいる人は、初めは戸惑うかもしれませんが、居住している地域の役所に確認するなどして、間違えないように投票に行ってください。
粕尾記者、ありがとうございました。