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おひとりさまも本格「和紅茶」を 狭山茶産地のティーポット

  • 2023年01月12日

狭山茶の産地として知られる埼玉県では、国産の紅茶「和紅茶」も盛んに生産されています。その和紅茶を“おひとりさま”でも本格的に楽しんでもらおうと、プラスチック製品メーカー、紅茶の専門店、茶農家が連携して、ちょっと変わったティーポットを開発しました。

おひとりさま用のティーポット

このティーポット。
直径9センチのプラスチック製の透明な容器に茶葉とカップ1杯分のお湯を注ぎます。
取っ手はありませんが、熱を伝えにくく保温性にすぐれたプラスチック素材を使っているため、素手で持っても熱くありません。
また、注ぎ口のところで茶葉を受け止めるようになっていて、茶こしを必要としません。取っ手や茶こしがないので、洗いやすいのも特徴です。

コロナ禍で挑戦した新たな商品開発

ティーポットを開発したのは川越市のプラスチック製品メーカーの社長、佐藤亘さんです。
車や医療機器の部品などを製造していますが、新型コロナの影響などで売り上げが落ち込み、新たな商品開発を模索していました。

佐藤さんは、以前からの知り合いで、川越市内で紅茶専門店を営む吉田幸果さんに相談しました。
提案されたのが「自宅で1人分の紅茶をおいしくいれることができるティーポット」でした。

吉田さんは、紅茶をティーバッグではなく、茶葉からいれようとすると、多くのティーポットはカップ2、3杯分の量があり、1人分としては大きすぎると感じていました。

吉田幸果さん
「2杯分の容量の半分で入れると、ティーポットの中で、茶葉の開きがあまりよくないので、ティーバッグを勧めていました。お客さんからは『ティーバッグではなくて、茶葉から1杯分いれたい』という声が大変多くありました」

こだわりの形 イメージしたのは地元の風物詩

この提案をきっかけに、佐藤さんは“おひとりさま”でも、本格的な紅茶を気軽に楽しめるティーポットの開発に取り組みました。
こだわったのは、ティーポットの形です。 

茶葉の香りやうまみを十分に引き出すためには、お湯を注いだ際に茶葉が上下に動く「ジャンピング」が必要です。
ポットが丸い形で十分な深さがあれば、それが起きやすくなるということです。
半年間、試行錯誤して完成したティーポット。

川越氷川神社の風鈴(2019年)

丸い形は地元の川越氷川神社で夏の風物詩として、およそ1500個飾られる風鈴をイメージしています。風鈴にちなんで「茶鈴(ティーリン)」と名付けました。

佐藤亘さん
「形状もさることながら、注ぎ口をどうするかが難しいポイントでした。そこをなんとかクリアするために、試行錯誤しましたが、プラスチックの特徴をよく生かした、ティーポットに仕上がったと思っています」

埼玉県産の和紅茶をセットに

佐藤さんと吉田さんは、ティーポットをクラウドファンディングで販売するのにあたって、隣接する狭山市の茶農家、菅野正さんにも協力を求めました。
菅野さんは「和紅茶」の生産に力を入れていて、コンテストで入賞したこともあります。
県内産の紅茶のPRにもつなげようと試飲を繰り返して、2種類の商品をティーポットとセットで販売することを決めました。

1つは、地元オリジナルの品種「ふくみどり」の、収穫時期と発酵の度合いが異なる茶葉をブレンドしたもので、華やかな香りが特徴です。
もう1つは、異なる3つの品種をブレンドしたもので、ミルクティーに向くコクのある味です。

菅野正さん
「仲間たちの意見にあわせて、新しいティーポットにいかにうまく味が出せるように調整するのが、難しかったです。自分では思いつかないブレンドの配合も感じられて、楽しかったです。ティーポットは透明で、しっかり中も見えるようになっているので、茶葉が開く様子もしっかり見てもらい、疲れた時のリフレッシュに使ってもらえたらと思います」

紅茶好きの人たちの反応は

去年12月中旬、吉田さんの店でお披露目会が開かれ、3人は訪れた紅茶好きの人たちに開発のいきさつやティーポットの特徴を説明し、紅茶を味わってもらいました。

持った時に熱くなくて、ほどよく温かい紅茶が飲めるというのはすごくいいなと思いました。注ぎやすく、デザインもかわいらしくて、すごくアイデアが詰まっていると思います。

おいしい紅茶を自分の飲みたい量だけ飲めるのはうれしいです。透明で、和紅茶の大きな葉が見られるのもうれしいです。

ティーバッグだとちょっと物足りないと思っていたので、ぜひ買いたいです。

吉田幸果さん
「みなさんの希望をかなえるいい商品ができたと思います。いつでも手軽にリーフの紅茶を飲めるので癒やしの時間で使ってもらいたい。紅茶はもちろん、和菓子とか地域の特産ともコラボして、盛り上げていければと思っています」

佐藤亘さん
「きょうの反応を見て、いいものができたと自信につながりました。もう少し改良する余地もあると思っているので、いいものをみなさまのお手元に届けられたらと思っています」

地域の製造業者と飲食業者、それに農家が連携することで生まれた“おひとりさま”ティーポットが狭山茶の産地に新たな風を吹かせています。
クラウドファンディングのサイトを通じて注文を受け付けていて、2月から本格的に生産を始めるということです。

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