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女子相撲日本一を目指して 中学2年生の挑戦 埼玉県

  • 2022年11月17日

女子相撲の全国大会で、去年3位になった中学生が埼玉県にいます。日本一を目指して、ことしの大会に挑む姿を取材しました。

(さいたま局 所沢支局/高本純一)

「相撲が一番自分に合っている」

埼玉県入間市の相撲クラブで、男子部員を相手に稽古に励む女子生徒がいます。中学2年生の濱野桜子さん(14)です。低い姿勢でぶつかり前に押していく「押し相撲」が持ち味です。

濱野さんは、相撲のだいご味を次のように語ります。

「短い時間で勝負が決まるので、いかに自分が練習してきた成果を出せるかにかかっていて、それが魅力です」

濱野さんが相撲を始めたきっかけは、小学生のときに出た地元の大会で好成績を収めたことでした。それ以来、もっと強くなりたいという思いが強くなり、「入間少年相撲クラブ」の門をたたきました。

相撲クラブの総監督の西澤正夫さんは、20年あまり子どもたちの指導にあたってきましたが、女子選手を教えた経験は無く、当初は困惑したといいます。

「相撲クラブに入りたいと言われたときは、戸惑いましたが、とにかく熱心でした。日々、必死になって歯を食いしばりながら厳しい稽古についてくるようすを見て、『この子を教えたいな』と思うようになりました。それに、自分の夢『日本一になりたい』という強い気持ちを持っていました。そのような強い気持ちを持っている子に出会うことはめったにありません」

濱野さんが小学生のうちは、出稽古という形で受け入れていましたが、中学校でも相撲を続けることを聞き、西澤さんは入部を認めました。相撲クラブの一員になったことを示す、自分の名前が書かれた木の札を受け取った日、濱野さんは涙を流して喜んだといいます。

濱野桜子さん
「この木札をもらえた時はうれしかったし、日本一になりたいという思いも強くなりました。相撲が一番自分に合っていると思います。このクラブのみんなと相撲をとるのも楽しいし、自分の居場所はここだなと感じています」

部員になって早々、濱野さんは頭角を現します。去年の全国大会で、1年生ながら3位になったのです。2年生のことしは優勝を目指しました。

親子二人三脚で日本一へ

そんな濱野さんを支えているのが、母親の由佳さんです。

相撲クラブへの送迎をはじめ、食事面でもサポートしてきました。大会は体重別のため、栄養面だけでなくカロリーのコントロールが重要になってきます。由佳さんは、お米を抜いて、野菜たっぷりのスープや鶏ハムなど、低カロリーでもおいしく食べられるようにメニューを工夫しました。

目に見える形で成果を実感できるよう、体重の変化を模造紙に記録したこともありました。そこには、濱野さんの母親への思いが大きな字で書かれています。

ママに金メダルをかけてあげる

こうした地道な取り組みが実を結び、1か月でおよそ5キロの減量に成功しました。

濱野桜子さん
「お母さんには、私のサポートで大変な思いをたくさんさせてしまっているので、相撲クラブで、自分が強くなれるように、懸命に稽古することが恩返しだと思っています」

立ち合いを特訓

大会直前の3日間、相撲クラブでは濱野さんのために、特別に稽古が行われました。

繰り返したのは「立ち合い」です。力強くぶつかり、前に押していくには、立ち合いで遅れないことが重要だからです。さらに、相手の体格や戦術にあわせた対策を繰り返していました。
稽古を終えると、濱野さんは、神棚に自分の木札を供え、支えてくれた人たちのためにも必勝を誓いました。

勝負の一番

迎えた大会当日。
初戦の相手は、自分より体格が大きい優勝候補の1人でした。

母親の由佳さんも観覧席から見守ります。

稽古で大切にしていた注目の立ち合い。相手が1歩前に出た時点で、濱野さんはまだ踏み出せず出遅れます。

相手の前まわしを取ることはできましたが、立ち合いの遅れを取り戻すことが出来ず土俵際に追い込まれ、最後は押し倒されてしまいました。

稽古の成果を発揮できず、悔しさが残りました。試合の後、西澤さんは、濱野さんに声をかけました。

「ふだんの力を出し切ることは難しいことだけど、課題だな。来年もここに来よう」

こうして、ことしの挑戦は幕を閉じました。

来年こそ日本一に

大会から3週間後。相撲クラブの土俵には濱野さんの姿がありました。

「弱くなるぞ。出し切れ、出し切れ」

西澤さんの指導にも、いっそう熱がこもります。

来年こそ、日本一に。ことしの悔しさをバネに、濱野さんは自分を限界まで追い込む覚悟です。

濱野桜子さん
「ことしの大会では、自分の思うように、相手に当たって全然前に押し込めなかったのが一番悔しいと思っています。私がここで磨いているのは押し相撲なので、来年は、最初の立ち合いで、相手を一気に押し出せるよう、押し相撲で日本一を目指します」

相撲クラブには、濱野さんに憧れて、小学生の女の子も通うようになりました。濱野さんは、後輩の面倒もみながら、目標に向かって土俵に立ちます。

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