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人気の陰でマナー悪化 岐路に立たされた飯能河原の打開策

  • 2022年11月11日

煙や騒音、散乱するゴミ。埼玉県の景勝地・飯能河原は、マナーの悪化で一時閉鎖に追い込まれました。にぎわいとマナーをどう両立するか。解決に向けた動きを取材しました。

(さいたま局 記者/西山周)

人気の景勝地 飯能河原

埼玉県西部の飯能河原は、市街地のそばにありながら豊かな自然に囲まれ、地域の憩いの場として親しまれています。都心からほど近いこともあり年間およそ8万人が訪れる人気のスポットです。
飯能河原を管理する奥むさし飯能観光協会の中里忠夫会長は、飯能河原の魅力を次のように語ります。

「春は桜、夏はバーベキューなど春夏秋冬場面が変わり、みんなに愛される場所です」

そんな景勝地で、ここ数年、ある課題に悩まされてきました。

「7月、8月の時期は、バーベキューとかキャンプに来る人が多く、煙とか騒音がひどく、さらには、帰ったあとにごみが散乱する。そんな状況が続いていました」

マナー悪化 閉鎖の事態に

新型コロナの影響で、「密」を気にせず楽しめるアウトドアが注目され、多くの人が飯能河原に集中したのです。
利用客同士がトラブルになるなど、警察が出動することもたびたびあったといいます。

さらに、利用客が帰ったあとは、ごみが散乱し、景観や環境は悪化しました。

近隣の住民は、そうしたマナーの悪さに悩まされていました。

地域住民
「窓を閉めなきゃいけないし、洗濯物は干せない。道路は狭いですから大渋滞で、日常生活にかなり大きな支障が出ました」

住民からの苦情も相次ぎ、去年の夏には、一時閉鎖される事態に追い込まれました。

奥むさし飯能観光協会 中里会長
「みんなで飯能の観光を維持しようという思いが乱れてしまい、地域住民のことなどを思うと、もう閉鎖をするしかなかったですね。本音を言えば、観光協会としては閉鎖したくない。やっぱりここを利用していただきたいという思いもありました」

打開策は利用制限と有料化

にぎわいとマナーをどう両立するか。地域住民や観光協会の要望を受けて県が公募を行ったところ、さいたま市のコンサルティング会社が手を挙げました。この会社は、地元の銀行の子会社で、幅広いネットワークを強みに課題解決に挑みました。

地域デザインラボさいたま 青木大介社長
「コロナの影響もあって新たに出てきた地域課題に、地域の皆様との合意形成や地域資源の生かし方を展開できると思いました」

まず、コンサルティング会社が検討したのが、混雑の緩和です。これまで、飯能河原の利用制限はありませんでしたが、使用できるスペースを限定し、予約制にすることで集中を防ぐことにしました。
次に、取り組んだのがマナーの向上です。バーベキューなど、火を使えるエリアを住宅地から離れた一角に限定することにしました。さらに、有料化することで意識を変えようと考えました。

こうした対策の効果を確かめるため、ことしの春の大型連休と夏休みに、2回に分けて実証実験を行いました。

夏の実験では、火を使える区域を1度に500人までとし、料金は1人1000円、小学生以下は無料としました。

毎年訪れているという利用客
「去年までは無料だったので驚いた。有料化したらごみが減る効果があるのではないか」

また、実験では、火を使える区域にごみ箱を設置しました。

有料化で得られた収入を、ごみの回収費用に充て、環境の美化を図ることで、持続可能な観光スポットを目指すことが狙いです。

にぎわいとマナーの両立を

実証実験から1か月後、行政や地域住民などが参加し、コンサルティング会社の担当者から結果が示されました。

地域デザインラボさいたま 村瀬光汰さん
「実験後に行ったアンケートでは、以前よりごみが落ちていなくて、環境が良くなったという意見がありました。『また利用したいか』という設問につきましては、約90%の方々が『利用したい』という回答をいただいております」

利用制限や有料化の効果は大きいことが確認され、これらのルール化を進めることになりました。一方、住民からは、さらなるマナーの向上を求める声も聞かれました。

地域住民

「一番は周辺環境を考えなければならない。人間に対する環境、生物に対する環境、そういうのも考慮していかないと、理想の観光地にはならない」

地域住民

「小さい子を含めて楽しく遊べればそれがいいと思います」

観光協会やコンサルティング会社は、こうした住民の意見も踏まえてルールづくりを進め、来年の春ごろの運用開始を目指すことにしています。

奥むさし飯能観光協会 中里会長
「飯能河原が本当に素晴らしいものだとわかってもらうには、ルールというのが第1条件です。お客さんが毎年来ても『飯能河原はいいね』って、継続して言ってもらえるよう応援してもらえればと思います」

地域デザインラボさいたま 村瀬光汰さん
「地域の方々と一緒に、地域の在り方を作り上げ決めていくノウハウを取得できたと考えています。環境と観光の両立を“飯能モデル”として、他の地域でも同じような形で展開していきたいと考えています」

制限を設けることは、その意義を利用者ひとりひとりに理解してもらうことが欠かせず、課題は残されています。一方、利用制限と有料化を組み合わせたこの取り組みは、各地で起きているオーバーツーリズムへの対策のヒントになるかもしれません。

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