10月23日、投開票が行われた草加市長選挙。現職と新人のあわせて3人が立候補し、激しい選挙戦が繰り広げられました。
開票の結果、新人で元衆議院議員の山川百合子氏が、自民党と公明党が推薦する現職の浅井昌志氏らを破り、初めての当選を果たしました。なぜ、新人の山川氏が当選したのか。今回の選挙戦のポイントなどをNHKさいたま放送局マスコットキャラクター「サイちゃんタマちゃん」が取材を担当した、さいたま放送局の粕尾祐介記者に聞きました。
粕尾記者、きょうはよろしくお願いします。
よろしくお願いします。
今回の市長選挙が行われた草加市と言えば、「草加せんべい!」と思うんですけど、ほかにはどんな街なんですか?
草加市は埼玉県の南東に位置していて、東京の足立区と接しています。人口はおよそ25万人で、人口増加が今も続いているんだよ。
市内には東武伊勢崎線が通っていて、都心へのアクセスも良いベッドタウンです。最近では、新型コロナウイルスの影響などで移住者が増えていて、駅前にマンションが建設されるなどの再開発が進んでいます。
都心に近くて自然も多い、人が暮らしやすい街なんですね。人口増加が続いている理由もわかりました。
今回の選挙では、どんな選挙が行われたのですか?
今回、行われた市長選挙は市のトップである「市長」を決める選挙です。市長の任期は4年間で、市長は、税金としてみんなから集めたお金を公園や学校の整備などに使ったりして、より住みやすい市にするために、仕事をします。
誰が草加市の先頭に立つかを決める大事な選挙だったんだね、粕尾さん。今回の市長選は、誰が立候補したんですか?
立候補したのは届け出順にこの3人でした。
今回の市長選挙は現職と新人あわせて3人が立候補しました。
▼新人の山川百合子氏。
県議会議員などをへて、 5年前の衆院選で初当選しました。衆議院議員の時は立憲民主党に所属し、今回は無所属で立候補。
子育てをしている親に支援ができる財源の設立などを訴えました。
▼自民党と公明党が推薦していた現職の浅井昌志氏。
市議会議員などをへて、前回、4年前の選挙で初当選。
今回、2期目を目指し、新型コロナウイルスの対応にあたった実績などを訴えました。
▼新人で、NPO法人の代表理事の福田誠一氏。
市長選は、前回に続いての立候補で、市立病院の機能充実やフリースクールの設置などを訴えました。
開票の結果、山川さんが浅井さんに4300票あまりの差をつけて、初めての当選を果たしました。
ここで「サイちゃん」と「タマちゃん」にクイズです。
どんな選挙戦になるのか、予想するときに一番気にすることって、何かわかるかな?
訴えている内容が大事じゃないのかな。
それも大事なんだけど、実は誰が応援しているかってことが重要なんだよ。
そうなんですね、粕尾さん。
こういうのを「選挙戦の構図」っていうんだけど、今回だと浅井さんを自民党と公明党が推薦し、党として支援していました。
このため、当初は、浅井氏の方が優勢と見られていたんです。
告示日の10月16日、草加駅で行われた浅井さんの第一声には、自民党と公明党の国会議員が応援に集まり、支持を訴えました。
さらに、埼玉県の大野知事も浅井さんの応援にかけつけて支持を訴えました。
一方、山川さんは今回の選挙には無所属で立候補しました。さらに、「地元の人として選挙に臨みたい」として、所属していた立憲民主党にも推薦などを求めず、政党からの支援を受けなかったんです。
山川さんの活動を支えたのは、地元の個人の支援者でした。
そんな中で、山川さんは、なぜ当選できたんですか?
多くの関係者が話しているのは、「山川さんが多くの無党派層を取り込んだ」ということなんです。「無党派層」というのは特定の政党を支持していない人たちのことで、この人たちの動向で当選が決まることもあるんだよ。
その無党派層を、山川さんが浅井さんよりも多く取り込んだとみられているんです。
山川さんは、草加市を選挙区とする県議会議員を4期務めた後、衆議院議員として、国会で活躍していたこともあり、新人ではあっても、高い知名度がありました。こうした高い知名度が無党派層の取り込みに効果があったとみられています。
また、もうひとつの要因としては、山川さんが女性の支持を得られたことが考えられます。山川さんは子育てや教育の支援を訴えていました。今回の選挙の投票率を見ると、女性の投票率は男性よりも高くなっていました。
こうしたことが山川氏に有利に働いたとみられています。
浅井さんは、落選した原因をどう分析しているんですか?
浅井さんを推薦した自民党の関係者は、今回立候補していた福田さんに、3年前の県議選では、自民党の公認で立候補していたので、浅井さんと福田さんで、票がばらけたのではないかと見ています。
また、有権者へアピールするための運動量が足りなかったとも分析していました。
また、別の自民党の関係者は、旧統一教会の問題で自民党のイメージが悪くなり、票が伸び悩んだのではないかと分析していました。
一方、公明党は、選挙の後、以下のようにコメントを出しています。
公明党埼玉県本部 西田実仁代表
「最後まで懸命に押し上げたものの及ばず、誠に残念です。結果は厳粛に受け止め、草加市政につくしてまいりたい。敗因をよく分析し、今後に生かしていきます」
初当選した山川さんは、市長として何をやらないといけないのかな?
まずは、引き続き、新型コロナウイルスの対応にあたることになると思います。さらに、新型コロナウイルスの影響を受けた地域経済の活性化や人口増加が続く中での子育てや福祉の充実などが課題になります。当選した山川氏は次のように話していました。
山川百合子氏
「『だれもが幸せなまち草加』、この理念の実現に向けて、しっかりと一つ一つ掲げた公約を実行していきたい。市民一人一人の思いをちゃんと聞いて対話して、いっしょにまちを市民のみなさんと一緒につくり上げたい。特に子育て支援や教育のほか、一人一人に寄り添う福祉政策の充実に努めていきたい」
ぜひ、より良い市にしてほしいですね。
山川さんは10月31日に初登庁します。山川氏は国政での経験を生かしたいとも話していたので、その手腕を草加市でも発揮してほしいですね。
きょうはありがとうございました。