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予期せぬ妊娠「相談を」 匿名で無料診察の医療機関も(後編)

NHKさいたま「子どもプロジェクト」
  • 2022年08月09日

NHKさいたま放送局の「子どもプロジェクト」。7月は予期せぬ妊娠に悩む若い女性たちへの支援に取り組んでいる熊谷市の産婦人科「さめじまボンディングクリニック」の看護師、吉田知重子さんをゲストに迎え、この問題を取材している大高政史カメラマンとともにお伝えしました。後編をお届けします。

(ひるどき!さいたま~ず 2022年7月15日放送)

『予期せぬ妊娠「相談を」 匿名で無料診察の医療機関も(前編)』はこちらから

予期せぬ妊娠で悩んでいる場合の相談は
「さめじまボンディングクリニック」 048-580-6628
 chuukousei@bonding-cl.jp (NHKサイトを離れます)
 ウェブサイトはこちら (NHKサイトを離れます)
「あんしん母と子の産婦人科連絡協議会」 048-522-5571
 ウェブサイトはこちら (NHKサイトを離れます)
「にんしんSOS埼玉」 050-3134-3100 (16:00~23:00)
 ウェブサイトはこちら (NHKサイトを離れます)

大高政史カメラマン(左) 看護師・吉田知重子さん(中) 大野済也アナウンサー(右)

予期せぬ妊娠で悩む女性に社会の理解を

予期せぬ妊娠で悩む10代の女性たちについて、支援に取り組む吉田さんがいま課題と考えるのは何でしょう。

家庭で親との関係がうまくいっていない場合、妊娠が分かった時に誰にも相談できないおそれがあるということです。

看護師 吉田知重子さん

学校は、その時どのような関わり方ができるのでしょうか。

最近ですと中学校から保健センターに連絡して、私たちのところに相談がくるケースがあります。理解は少しずつ広がっていると思いますが、高校によっては妊娠をきっかけに退学を余儀なくされる女性もいて、まだ課題があると思います。

大高さんはどう思いましたか。

予期しない形での妊娠は、自分や周囲の人などに突然訪れる可能性があり、いわば緊急事態です。そういう時に、どう行動するべきか、支援はどうあるべきかなど社会の理解が不可欠と感じました。行政の支援はもちろん、教育現場や家庭にも理解が広がるべきだと思います。

一定の期間クリニックに滞在しての出産も

10代で妊娠すると、おなかが大きい様子を誰かに見られたくない場合があります。「さめじまボンディングクリニック」では安心して子どもを産むことができるよう、おなかが目立つ前から一定期間、クリニックに滞在して出産することが出来ます。看護師や助産師、保育士に加え、厨房のスタッフなど皆で支えながら、安心してお産を迎えてもらう取り組みをしています。

乳児院との連携も

そのほかにも県内には乳児院という存在があります。連携はどのようにしているのですか?

例えば特別養子縁組を選択する方もいますし、最初は特別養子縁組と思っていても、出産後に養育を選択する人もいます。ただ、自分の準備ができてから赤ちゃんを迎えたいとか、決断がつかない時には、児童相談所と連携して乳児院にお願いすることもあります。家庭的な環境を考えながら特別養子縁組の支援を行うことが必要だと思います。

クリニックで生まれた子どもたち

乳児院の立場から、埼玉県内の乳児院で働く石井晴美さんに話を聞きました。

乳児院 職員 石井晴美さん
さまざまな事情があっても、乳児院では元気に赤ちゃんを産んでもらうのが一番と考えています。乳児院には看護師や保育士、栄養士など専門職の職員がたくさんいます。そういう人たちが母親に寄り添い、子育ての話や悩みを聞くことができたらいいと思っています。
若いうちに母親になりますが、母親にも人生があります。きちんと学校で授業を受けたいとか、将来の夢に向かって進みたいなどの思いを叶えながら、将来的に自分が自立したあとに子どもを育てたいという母親もいます。私たちは母親に寄り添いながら、一緒に考えていきたいと思っています。
生まれる前に里親に出そうと考える場合でも、実際に出産をして子どもの顔を見るとやはり自分で育てたいと思い直す人がたくさんいます。乳児院で子どもと直接かかわる中で、少しずつ母親としての母性が芽生えてくる人もたくさんいます。

吉田さん、どのように受けとめましたか。

産んですぐに母親としての自覚が芽生えるわけではないと思います。赤ちゃんの人生と母親のその後の人生、例えば学校生活を送りながら母親としての準備をしていくことはとても大事なことだと思います。

学校に戻ることについて、皆さん大切と考えていますね。学校に戻るための支援は、これから重要になりますか。

最近は、包括的性教育と言われていますが、学校で早い段階から男性も含めて性のことを考える教育が必要ではないかと思います。

あんしん母と子の産婦人科連絡協議会で活動する吉田さん

男性側の当事者意識は

ここで出てくるのが、私たち男という立場です。やはり男性の存在が見えてこないもどかしさがありますね。

そうですね。例えば、いま梅毒がすごく増えています。そのうち3分の2は男性と言われています。性感染症もSNSの被害についても男性が女性をどのように扱うかというところが大きな問題と考えています。

病院、あるいは「あんしん母と子の産婦人科連絡協議会」として、男性に対してはどのように接していますか。

実際に妊娠の相手として男性が来た時も、男性の家や家族とも丁寧な面談をしています。

やはり男性側に当事者意識があまりにも少なすぎるというのは、本当によくないことだと思います。我々は子どもの世代に、教育という形でしっかりと受け継いでいかなければいけませんね。

例えば性交渉に関しても女性だけで妊娠するわけではないですから、避妊を含めて男性がしっかり考えるために教育が必要だと思います。

夏休みを迎える皆さんへ 吉田さんからのメッセージ

【中学生や高校生など若い女性の皆さんへ】
心配事を相談するというハードルはとても高いかもしれませんが、何かあったら「さめじまボンディングクリニック」、通称「さめボン」に連絡して下さい。
【保護者の皆さんへ】
子どもたちの小さな変化に注意して下さい。口数が少なくなるとか、元気がないとか、何かあったのかと声をかけられるような関係性でいてほしいと思います。ナプキンが減っているかなど、家庭内での小さな変化に気をつけて下さい。

親としては、子どもとコミュニケーションをとりながら、見守ることが大事なのですね。

そうですね。変化を見逃さず、こちらから声をかけることが大切です。

なるほど。大高さんは今後どのように取材を続けようと考えていますか。

私は、思いがけない形で妊娠をして悩む人たちに、さめじまボンディングクリニックや、乳児院のような安心できる所があるということを広く知ってもらいたいという思いがあります。さらに取材を重ねて、より詳しく皆さんに届けたいと思います。

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