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夏の高校野球 3年ぶりにブラスバンド応援復活

埼玉はグラウンドも熱いがスタンドも熱い
  • 2022年07月20日

今月8日に開幕した夏の高校野球埼玉大会では3年ぶりにブラスバンドによる応援が本格的に復活しました。試合はもちろん、応援の演奏を楽しみにしていらっしゃる方もいると思います。県内の高校の応援の特徴について、編集者でライター、そして、高校野球ブラバン応援研究家の梅津有希子さんに武田涼花キャスターが伺いました。

夏の高校野球が始まったわけですけれども、今の率直な気持ちはいかがですか。

まだ声出しの応援は禁止されているので選手名のコールなどはできないんですが、ようやく吹奏楽部による応援が再開されて、本当によかったなという気持ちでいっぱいです。

埼玉の高校野球の応援の印象はいかがですか。

一番、印象的だったのがスタンドでバケツの水をかけることです。おそらく暑いからだと思うんですが、どこの学校も応援の野球部の選手がバケツから柄杓で水を汲んでスタンドにバシャバシャかけているんです。いろいろな先生に聞くと、東京やほかの都道府県ではやっていないんですね。千葉県では水をかけるのは禁止されているんです。今はコロナの影響でやっていないはずですが、“水かけ”は埼玉の応援文化なんじゃないかなと思います。

埼玉大会は応援の人数も多いですよね。

スタンドで応援する選手たちがすごくよく踊るというのも印象的です。応援の練習も熱心にしていますし、甲子園で見ていても応援の振り付けは埼玉が一番激しいと思います。ある高校の先生は、部員が100人を超えるような高校が多いので、ありあまる選手のエネルギーを発散させる意味もあるんじゃないかと話していました。

浦和学院高校

きょうは4つの高校を取り上げたいと思います。まずは春のセンバツでベスト4になった浦和学院高校です。

浦和学院の吹奏楽部は野球部の応援はもちろん熱心にやってますが、コンクールやマーチングの活動もとても盛んで、いろいろなことにチャレンジしています。また、浦和学院は埼玉大会の開会式の入場曲の演奏も担当しています。ことしの大会は録音音源で対応したということですが、入場曲の演奏も明るくて楽しいので毎年、楽しみにしています。

浦和学院の応援曲はどんなものがありますか。

浦和学院の代表曲といえばオリジナル曲の「浦学サンバ」ですね。サンバの応援曲は全国的に珍しいです。とても明るい曲調で球場がパッと華やぎます。

どんな経緯でできたんですか。

1991年につくられたんですが、それまでは吹奏楽部の先生がプロ野球の巨人ファンで、巨人の応援曲を中心に演奏していたらしいです。当時、就任したばかりの野球部の森士(おさむ)監督が「俺は野球部を変えるからお前は応援を変えてくれ」と吹奏楽部の先生に話して、そして、誕生した曲が「浦学サンバ」だということです。

甲子園ではことしのセンバツからスタンドの生演奏がOKになったんですが、浦和学院は開幕試合だったんですね。久々の生演奏が「浦学サンバ」とともに幕を開けたので、静かだった甲子園がすごく明るい雰囲気になって、開幕戦が浦和学院でよかったなと思いました。

浦学サンバ(演奏:浦和学院吹奏楽部)

春日部共栄高校

続いて紹介するのは、こちらも強豪校の春日部共栄高校です。

春日部共栄の吹奏楽部はもともと野球の応援をするためにできたんですが、吹奏楽コンクールの全国大会常連でもある名門校です。

春日部共栄といえばという応援曲があるそうですね。

「ガッツ」というオリジナル曲があるんですが、この曲は吹奏楽部の顧問だった都賀先生がつくった曲で、先生の名字の都賀をひっくり返して「ガッツ」という曲名になったそうです。

どんな曲ですか。

やはりすごく明るい曲で、実は「浦学サンバ」に対抗してつくられた曲の1つです。春日部共栄はオリジナル曲が10曲くらいあったんですが、野球部が気に入って今も演奏しているのが「ガッツ」なんですね。やはり、たくさん応援曲をつくっても野球部が気に入らないと残らないんです。

ガッツ(演奏:春日部共栄高校吹奏楽部)

曲を聞いてみると、いかにも“打てそう”なメロディですね。

この曲には歌詞もついているんですね。「燃えろ共栄、いざ行け」と言った勇ましい歌詞がついています。実は都賀先生は80年代のアイドルが野球部を応援しているイメージで曲をつくったらしいんですが、野球部に歌詞を考えてもらったら勇ましい感じになってしまって、最初、先生は「いやだ」と言ったらしいんです。でも、野球部がすごく気に入ってこの歌詞が採用されたと聞いています。

2019年のセンバツに春日部共栄が出場したときにアルプススタンドにいたんですが、この年にヒットした映画の「翔んで埼玉」の曲も演奏していたんですよ。これは埼玉代表しかできない曲だなと思いながら聞いていました。あとは春日部が舞台となってるアニメの「クレヨンしんちゃん」の曲も演奏していました。でも、やはり私は「ガッツ」が断トツで好きですね。

花咲徳栄高校

3校目は2017年の夏の甲子園で優勝した花咲徳栄ですね。

花咲徳栄の吹奏楽部はコンクールに力を入れていて、全国大会にももう少しで手が届きそうな実力校です。 野球部もとても強いので応援にも熱心に取り組んでいます。

花咲徳栄の代表曲はなんでしょうか。

まず攻撃の初回に必ず演奏するのが、THE SQUARE(現・T-SQUARE)の「オーメンズ・オブ・ラヴ」という曲です。吹奏楽では人気のある曲で、もともとは兄弟校の埼玉栄が取り入れていました。

この曲が演奏されると、花咲徳栄の攻撃が始まるなと言う感じで、とても好きですね。応援では野球部がこの曲に合わせて青いメガホンを左右に振るんです。大勢の選手が一斉に同じ動きをするのはまるで稲穂のようでとても美しいです。

オーメンズ・オブ・ラヴ(演奏:花咲徳栄高校吹奏楽部)

 

花咲徳栄にはもう1つ有名な曲があるそうですね。

「サスケ」という曲です。花咲徳栄と言えば「サスケ」というファンも多いですね。この曲は強打者が打席に立ったときに演奏される曲として代々、受け継がれています。

相手にとっては、じわじわ追いつめられるような曲ですね。

花咲徳栄はプロ野球選手もたくさん輩出していますが、西武の愛斗選手、オリックスの若月健矢選手、日本ハムの野村佑希選手、ソフトバンクの井上朋也選手が高校時代にこの曲にあわせて打席に立っていたんです。ですから相手にとっては、この曲が流れたら「やばいぞ」と警戒するような感じですね。

サスケ(演奏:花咲徳栄高校吹奏楽部)

松山高校

最後に紹介するのは松山高校の「プロミネント松高」という曲ですね。

2015年の夏の埼玉大会の準決勝で松山高校と花咲徳栄が対戦したんですが、このときに大宮球場のスタンドでこの曲がエンドレスに流れていたんです。松山高校は男子校ですので吹奏楽部は25人くらいでこじんまりとしているんですが、男子校ならではの力強い演奏で、大好きになった曲です。

もともとは1980年代の人気アイドル 堀ちえみさんの「CHIEMI SQUALL」という曲です。高校野球の応援曲は新しい曲を取り入れることが多いんでが、この曲をアレンジして応援曲としてずっと受け継いでいるという伝統もすごいなと思います。 

男子校ならではの野太い声の応援が重なって力強い曲ですね。

昔ながらの学ランを着た応援団がこの曲に合わせて振り付けをして応援する姿を見たとき、すごく格好いいなと思いました。そもそも80年代のアイドルの曲を応援に使っている学校はほとんどないんです。

松山高校の生徒に聞いたところ、当時の先輩に堀ちえみさんのファンがいたらしいです。この曲自体は1983年の堀ちえみさんのサードアルバム「風のささやき」の特典についていたスペシャルシングルというかなりマニアックな曲なんですね。必ずしも大ヒットした曲ではないんです。このマニアックな曲を応援に使えると選んだ先輩もすごいと思います。

プロミネント松高(松山高校吹奏楽部)

こうしてみると、いろいろなエピソードがありますね。

学校によって応援の方法も全く違いますし、一つとして同じ応援はありません。ですから毎年、すべての学校の応援を見ないと気が済まないんです。

私はスタンドで実際に応援した経験がなかったので、2016年のセンバツのときに、花咲徳栄の吹奏楽部の先生にお願いして実際に応援の演奏に参加させていただいたことがあるんです。そのときの試合は負けてしまったんですが、演奏していた生徒たちは息もできないほど号泣していたので、やはり吹奏楽部も野球部と一緒に戦っているんだなと強く感じましたね。

2019年にマスターズ甲子園 大阪代表・PL学園のスタンドで演奏した梅津さん

キャスターからひと言

数多くの高校のブラスバンド応援を取材している梅津さんですが、埼玉の高校だけに特化して取り上げたのは初めてだということです。およそ30分話していただいたんですが、埼玉の高校野球は本当に魅力的なんだなと実感しました。熱戦が続く高校野球、試合だけでなく、応援にも注目して楽しんでみてはいかがでしょうか。

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