記録的な猛暑となった先月、埼玉県で熱中症で病院に運ばれた人は1371人、死者は3人と、6月としては統計を取り始めた2010年以降最も多くなりました。7月も全国的に気温が平年よりも高くなると予想されていて、引き続き、熱中症への対策が必要です。
気象庁は27日、「関東甲信、東海、それに、九州南部が梅雨明けしたとみられる」と発表しました。梅雨明けは、平年と比べると関東甲信と東海で22日、九州南部で18日、いずれも早くなっています。統計を取り始めた昭和26年以降、関東甲信のこれまでで最も早い梅雨明けは4年前の2018年の6月29日で、このまま確定すれば過去最も早い梅雨明けとなります。
埼玉県では、6月24日から各地で猛暑日が続き、特に30日には鳩山町で39点9度、寄居町で39点8度、熊谷市で39点5度、越谷市と久喜市で38点7度、さいたま市で38度、所沢市と秩父市で37点4度と、熊谷市と秩父市を除いて6月としてはこれまでで最も高い気温を記録しました。
埼玉県によりますと、先月、熱中症で病院に運ばれた人は1371人で、去年に比べて1141人増加しました。このうち、29日には吉見町で95歳の女性が熱中症の疑いで死亡するなど3人が亡くなっています。また、症状別の程度では、入院が必要な「重症」や「中等症」が合わせて525人、「軽症」が841人でした。
搬送された人を年齢別に見ると、65歳以上の高齢者が807人(58.9%)と半数以上を占めています。
兵庫医科大学の服部益治特別招聘教授は、体の水分の量が減り熱中症のリスクが高まっているのに自覚症状がない「かくれ脱水」と呼ばれる状態に注意するよう呼びかけています。特に体内の水分量が成人より少なく、のどの渇きを感じにくくなっている高齢者は注意が必要です。さらにコロナ禍では運動をする機会が減り、水分を体に蓄える役割を担う筋肉が衰えたり、マスクをつけることで口の中の渇きを感じにくくなったりしていることから、「かくれ脱水」のリスクが高まっているということです。
服部特別招聘教授は、「かくれ脱水」にいち早く気づくには、手の甲をつまんでみることが有効で、戻りが悪いときは水分が不足している可能性があるとしています。そして、のどが渇いていなくても1時間にコップ1杯を目安に水分を補給するとともに、食事でも水分を補給できるため、できるだけ3食とることが大切だとしています。また、運動不足で筋肉の量が減らないように、無理のない範囲でしゃがんだり立ち上がったりして体を動かすことも重要だとしています。
熱中症の発生場所別にみると、「住居」が591人(43.1%)と最も多くなりました。29日に狭山市で55歳の男性が自宅から熱中症の疑いで搬送され、その後、死亡したケースでは、救急隊が男性の部屋に到着した当時、扇風機はついていましたが、エアコンは使われていなかったということです。
帝京大学医学部附属病院高度救命救急センターの三宅康史センター長によりますと、高齢になると暑さを感じにくくなり基礎代謝も落ちるため、体感に頼ると、「まだ暑くない」と対策が遅れるとしています。
三宅センター長は「家族や周囲の人が電話するときは『室温は何度?』と確認し、『28度に下がるまでエアコンを入れ続けて』などと具体的に伝えて下さい。そして、『2時間後にまた電話するね』と継続して確認する意思を伝えることも大切です。しつこいようですが、繰り返し確認することで、エアコンを付けることが習慣になるのが望ましいです」と指摘しています。
気象庁によりますと、7月も全国的に平年よりも気温が高い状態が続くと予想されています。例年、7月と8月は、6月よりも熱中症で運ばれる人が増える傾向にあります。
埼玉県では、熱中症への対策を呼び掛けるとともに、めまいや立ちくらみなど熱中症の兆候があり病院を受診するかどうか迷った場合は「#7119」に電話して相談してほしいとしています。