ページの本文へ

  1. 首都圏ナビ
  2. 埼玉WEB特集
  3. 埼玉県秩父市の盛り土崩落 所有者に無断で運搬か

埼玉県秩父市の盛り土崩落 所有者に無断で運搬か

  • 2022年06月24日

おととし、秩父市で山林の盛り土がふもとの川などに流れ込む被害が出ました。土砂は所有者に無断で持ち込まれた疑いがあり、今月事件に発展。所有者が思いを語りました。

(さいたま局/記者 西山周)

山林の土砂崩落「一瞬だった」

土砂崩れが起きたのは、おととし7月下旬のことでした。大雨のあと秩父市田村の山林の斜面が一気に崩れ、ふもとの蒔田川に流れ込みました。土砂は、長さおよそ150メートルにわたって川をふさぎ、一部は川沿いの水田にも達しました。

土砂崩れが起きた山林を所有している宮下泰男(65)さんは、当時の状況を次のように振り返ります。

「自宅から聞き慣れない轟音がして、何が起きたのかと思ったら、土砂が大きな木を巻き込み流れてきた。一瞬だった」

盛り土「勝手に運び込まれた」

崩れた土砂は盛り土で、勝手に運び込まれたものだったといいます。宮下さんが、そのことに気づいたのは2019年の暮れのことでした。近所の住民が連絡してくれたのです。山林から数百メートル離れた自宅からも夜遅くに重機の音が聞こえ、車のライトが見えることもあったということです。その後、山林のようすを見に行くと、すでに、所有する土地の3分の1ほどに土砂が積まれていたといいます。
宮下さんは、県に通報しました。これを受けて、県は業者を特定し中止するよう求めました。しかし、盛り土は撤去されるどころか、その後も増え続けたということです。

宮下泰男さん
「土砂が置かれた場所は沢の上流にあり水が集まってくるところだ。残土に水を含ませているようなもので、雨が降ればいつ流れ出てもおかしくなかった」

県などによりますと、業者は、最初は自らが管理する土地に県の許可を得たうえで盛り土をしていました。その後、越境して宮下さんの土地に運び込むようになったということです。
そして、おととし7月下旬、土砂崩れが起きました。

写真提供 宮下泰男さん

刑事告発そして逮捕へ

県は業者に撤去を命じましたが、一向に応じなかったということです。放置すれば台風などによる大雨で土砂にせき止められた水があふれて被害が出るおそれがあるとして、県はおととし9月に業者に代わって土砂を撤去する行政代執行を行いました。撤去にはおよそ1億5000万円の費用がかかったということです。

その後も、県は、残った土砂の撤去を命じましたが、状況が改善されることはなかったといいます。

県は、無許可で土砂を運び込んだとして刑事告発に踏み切りました。そして今月、警察は、重機などを使って木を押し倒したうえ無断で土砂を運び込んだとして、業者の3人を不動産侵奪の疑いで逮捕しました。警察によりますと、不法に使用した土地の面積はおよそ3000平方メートルに及ぶということです。

不適切な盛り土ほかにも

埼玉県内では今回の事件以外にも不適切な盛り土が確認されています。県によりますと、去年8月から11月にかけて県内にある470か所の盛り土を調査したところ、排水設備など災害防止の対策が行われていないケースが63か所にのぼり、是正するよう指導したということです。
一方、盛り土をめぐっては、去年7月に静岡県熱海市で起きた土石流を受けて国も対策に乗り出し、大雨などで崩落のおそれのある盛り土の規制や罰則の強化を盛り込んだ宅地造成等規制法の改正案、通称「盛土規制法」が先月成立しています。法律は来年5月ごろに施行される見通しです。

宮下さんは、同じようなことが起きないためには行政による監視や管理の強化が必要だと訴えます。

「一般市民が1対1で対応するのには限界がある。熱海の土石流以降、法整備が進んでいるようだが、廃棄物や残土がちゃんと処理できているかをチェックするようなしくみを作る必要がある」

ページトップに戻る