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eスポーツで高齢者の健康増進を さいたま市

  • 2022年05月17日

「はっけよーい、残った!」
大相撲のコンピュータゲームに夢中になっている高齢者の人たち。「さいたま市民シルバーeスポ―ツ協会」のメンバーです。月に一度集まってeスポーツを楽しんでいます。対戦型のコンピュータゲームをスポーツとして楽しむeスポーツは年々、競技人口が増えています。さいたま市ではeスポーツを高齢者の健康増進に役立てようという取り組みが行われています。
(さいたま局/ディレクター 池端祐太郎)

「シルバーeスポ―ツ協会」の事務総長を務める水野臣次さん(65歳)がeスポーツに着目したきっかけは、11年前に脳出血で左半身がマヒしたことでした。リハビリのための入院生活が続くなか、水野さんが病室で夢中になったのがコンピュータゲームだったのです。

「(私がゲームをしている様子を)後ろで見ていた理学療法士の先生から“水野さん、左手がよく動くようになったね”と言われたんです。テレビゲームは両方の手を動かしますから、自然と楽しみながらリハビリができたんじゃないかと気づいたんです。」
(水野臣次さん)

4年前の設立当時、9人だった会員は約40人に増えました。最高齢のメンバーはなんと89歳です。

eスポーツで家族や地域との絆も

eスポーツを始めたことで地域とのつながりが生まれた人もいます。菅野修一さん(61歳)は、長男の達也さんの勧めでeスポーツを始めました。これまで仕事に夢中で近所付き合いもほとんどなかったという修一さん。最初は半信半疑でしたが、周りのメンバーが楽しむ様子を見て、次第に意識が変わっていったと言います。

「実は、近所付き合いとか、知らない人となんとなく集まりに参加して話をするというのはすごく苦手だったんですが、そういうところが少しなくなってきて、自然と入れるようになってきたのかなと思います。(メンバーには)多彩な方がいますし、全く私と違う世界にいる方とコミュニケーションができるのは今までになかったことですので、すごく楽しいです。」
(菅野修一さん)

eスポーツを始めたことで家族との会話も増えたといいます。1年ほど前には関西のeスポーツカフェを訪ねるため、長男の達也さんと一緒に旅行にも出かけました。

「まず一緒に旅行することがなかったので、父から旅行に行ってみようかと言われるのもかなり新鮮でしたね。」
(長男の達也さん)

「将来、孫ができたときに一緒にeスポーツができるよう、今のうち長男を練習台にしておきたい」と修一さんは嬉しそうに話してくれました。

eスポーツは認知症の予防にも

eスポーツを楽しむ高齢者の脳の働きについての研究も始まっています。埼玉県伊奈町にキャンパスがある日本薬科大学の大上哲也教授は、学生と一緒に高齢者を対象に認知機能のチェックを無料で行う「いきいき脳健康教室」という活動を進めています。認知症が発症するメカニズムは残念ながらまだわかっていません。大上教授は健康教室を通じて、認知症の兆候をいち早く発見して免許の返納などを促すとともに、認知症の原因究明につながる基礎データの収集を進めているのです。

今月7日、大上教授は「シルバーeスポ―ツ協会」のメンバーを対象に認知機能のチェックを行いました。チェックではパソコンを使って、記憶力、注意力、空間認識力など5つの機能を調べます。この結果、どのメンバーも5つの機能がバランスよく維持されていることがわかりました。

「協力いただいた方の検査結果を見ますと、私が思っている以上に成績は良かったです。ゲームですので、戦略を立てる、作戦を立てるという思考力を自然と使っているわけです。また、相撲ゲームなどは指先を使いますので運動機能の面でも非常に良いと思っています。」
(大上哲也教授)

大上教授は、今後、どんなゲームが認知機能の維持に効果があるのなどについて研究を進め、eスポーツと脳の健康チェックを組み合わせることで、高齢者が気軽に、そして、楽しみながら認知症の予防する仕組みをつくることができないかと考えています。

「65歳以上の4人に1人が認知症ないし、認知症予備軍と呼ばれています。認知症は、ほかの病気のように痛みや熱が出るものではないので、自分ではなかなか気づかないんです。脳の検査というと緊張してしまうし、暗いイメージを持たれがちですが、eスポーツを活用することで、高齢者が楽しみながらご自身の頭の健康状態をセルフチェックできるようになるのではないかと思います。」
(大上哲也教授)

取材を終えて

さいたま市も「シルバーeスポーツ協会」の活動を後押ししています。65歳以上の高齢者が健康づくりの活動に参加した場合にポイントが貯まる「長寿応援手帳」の対象にしたほか、市内の老人福祉センターなどで高齢者にeスポーツを楽しんでもらう取り組みも始めています。

5分16秒(2022/5/12おはよう日本放送) 

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