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「エスカレーターは立ち止まって利用を」埼玉県の条例施行半年

  • 2022年05月09日

私たちの生活で利用することも多い、エスカレーター。埼玉県では、去年10月、エスカレーターに関する条例が施行されました。条例では、エスカレーターを利用する際には、走ったり歩いたりせず、立ち止まって乗ることを求めています。全国で初めてとなるこの条例が施行されてから半年あまりがたちました。県内でエスカレーターの利用のしかたは変わっているのでしょうか。

(さいたま放送局 記者 西山周)

エスカレーターを定点観測

筑波大学医学医療系の水野智美准教授は、障害者支援などを専門としています。視覚障がいのある人などから、話を聞いていくうちに、埼玉県内の2つの駅(JR大宮駅と越谷レイクタウン駅)の計3か所で、条例が施行された前後でエスカレーターの利用者の行動に変化がないか、調査することにしました。

筑波大学医学医療系 水野智美准教授
「視覚障害者の方がエスカレーターを利用している時に横を歩いてる人が白杖を蹴ってしまって落ちてしまったとか、子ども連れの方が、本当は子どもの横に乗りたいというような声があったので、調査をすることになりました」

朝の通勤時間帯に、大宮駅の東武線からJRへの乗り換えの上りエスカレーターで行った調査の結果です。

大宮駅での調査結果

条例が施行される前の去年9月は、60.2パーセントの人が歩いていました。これが施行後の去年11月には51.9パーセント、今年1月には38.1パーセントに減少しています。今回調査したほかの地点でも歩いている人は減少していました。

水野准教授は、この調査結果を受けて、条例が浸透してきてはいると分析しています。その上で、まだ十分には減っておらず、さらに徹底させるためには、現在、罰則がない条例に罰則規定を設けることも検討すべきだと話しています。

水野准教授
「立ち止まって利用する方が増えたのは事実なんですけれども、そのことを知っていてもやはりまだちょっと歩きたいと考えてしまう人が一定数いるのが現実です。そのために、条例の中で罰則規定というのも検討していく必要があるのかなと思います」

条例施行後も危険を感じる人も…

川瀬正広さん

条例の施行後もエスカレーターを利用する際に身の危険を感じている人もいます。
7年前に脳出血をおこし、左半身にまひが残った埼玉県和光市に住む川瀬正広さんです。
川瀬さんは右手しか使えず、右側をあける習慣のある関東では、右に乗った後、ゆっくり左に移ったり、手すりをもたず左側に乗ったりしています。

左半身にまひが残っているため、川瀬さんは右手で手すりをもつ

川瀬さんは条例が施行された後も、歩いてきた人とぶつかり、怖さを感じることもあったといいます。
その上で、利用者には安全に利用して欲しいと訴えています。

川瀬さん
「条例の浸透はまだ足りないような気がします。例えば、大宮ですとか浦和のような大きい駅に関してはやはりまだ右側を普通に歩いている、もしくは駆け上がったり、駆け下りたりもしてますよね。障害がある人とか小さい子、お年寄りだけのために、ということではなくて、雨の日ではエスカレーターは結構滑るので、自分が事故にあわないために、立ち止まって安全に利用して欲しいです」

デザインでマナーを徹底

こうした中、条例に頼らず、マナーを徹底するための方法を模索する動きもあります。

六本木ヒルズに設置された足跡のついたエスカレーター

足跡がついたこちらのエスカレーターは、文京学院大学の学生らが、安全にエスカレーターを利用するため、東京・港区の六本木ヒルズに設置しました。

文京学院大学の新田都志子教授は、この活動について以下のように振り返っています。

文京学院大学 新田都志子教授
「自発的に行動することをメインにしまして、私たちはビジュアルデザインでそういった行動を変えようってことでやってきました。両側に乗るのが当たり前なんだ右をあけることは常識ではないんだっていうことを訴えていこうっていう思いでやってきました」

新田教授と学生たちは、コロナの感染が広がる中でも、他の利用者と間隔を空け、密を避けられる乗り方、「ジグザグ乗り」を考案しました。

新田教授らが考案した「ジグザグ乗り」 画像提供:文京学院大学

新田教授
「人との距離もとれるし右にも乗れるということで考えました」

新田教授は条例によらずとも、多くの人がエスカレーターで立ち止まるようにするには、こうした工夫とともに、立ち止まることの意義を伝えていくことが必要だと訴えています。

文京学院大学 新田都志子教授
「困っている人がいるんだということをいかにわかってもらえるか。全体最適を考えたら両側に乗っていく方が速いし、安全だっていうことをわかっていただくのが一番大事だと思います」

エスカレーターはさまざまな方が利用しているものです。自分が歩くとどうなるのかを想像して安全に利用することを心がけていきたいと思います。

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