親からの虐待などで児童養護施設で暮らした人たちの施設退所後の生活を支援しようと、生活や就労に関する困りごとの相談先を紹介するWEBサイトが公開されました。サイトの作成には、施設などで生活した経験のある全国の若者およそ30人が参加しました。
児童養護施設で生活する子どもたちは、原則18歳で施設を退所しますが、退所後に頼れる親族などがいないケースが多く、必要な支援につながりにくいことが課題となっています。
こうした中、施設退所者などを支援するさいたま市の団体が、施設を退所した若者たちが生活や就労などについて相談できる全国の団体をまとめたWEBサイト「なびんち」を作り公開しました。
施設退所後の若者への支援は、「アフターケア事業」と呼ばれていて、このWEBサイトのアフターケア事業所のページを開くと、全国の団体の所在地や連絡先、相談方法、それに具体的な支援内容を一覧で見ることができます。
サイトの作成には、児童養護施設や児童相談所の一時保護所で生活した経験がある全国各地のおよそ30人の若者が参加しました。若者たちは直接事業所に出向いたり、オンラインでつないだりして団体の担当者に支援内容やどのような思いで取り組みを行っているのかを詳しく取材しました。その様子を撮影した動画もサイトに掲載しています。
施設を退所した若者の中には、困りごとを抱えてもSOSを出せないケースがあるということで、支援する人の顔が見えるようにすることで相談のハードルを下げることが狙いです。
サイトでは、随時、紹介する団体を増やしていくということです。
サイトの作成に参加した藤本翔さん
「取材を通して当事者である僕たちが知らないなと思う部分がたくさんあり、どんな思いで団体を立ち上げたのか、どんな思いで支援を続けているのかなどを知る機会になりました。自分の経験に置き換えると、退所後は、施設の職員に頼りづらく、自分の居場所はそこにはないんだという思いがある。当事者が主体的に関わったサイトだと親近感や安心感をもってもらえるのではないか」
サイトでは、どのような時に相談したらいいか、以下のように具体的な事例も紹介しています。
会社をやめてしまって、住むところもなくなってしまいそう。
大学に通っているが、バイトとの両立が厳しくて、退学しようか迷っている。
将来が不安。社会に出て行く自信がない。
孤独を感じる。さびしくてしかたがない。
いつもお金を使いすぎていつも赤字!貯金なんて全然できない。
サイト作成の中心となった団体「コンパスナビ」のブローハン聡さん
「みんなが思っている以上に若者のために力になりたいと思っている大人がたくさんいることや僕も含めて仲間となるような当事者が全国にたくさんいて、ひとりじゃないということを知ってほしいです。一歩勇気が出るのであれば動画をみてもらって様子を見るところから始めてもいいと思います。受け止めてくれる場所はたくさんあるので困りごとがあってもあきらめないでほしい」