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新型コロナ後遺症422人症例分析 埼玉のかかりつけ医で診療を

  • 2022年03月31日

新型コロナウイルスの感染者数は減少傾向になっていますが、そうした中でも深刻なのは後遺症に悩まされる人たちです。
埼玉県と県の医師会は、ことし1月までの4か月間に新型コロナウイルスの後遺症外来を受診した400人あまりの症状を分析した症例集をまとめました。4月から後遺症を診療できる医療機関を大幅に増やし、この症例集を診療の指針としていかすことにしています。
(さいたま局記者/永野麻衣)

422人の後遺症 症例分析は

埼玉県と県の医師会は、オミクロン株が急拡大した第6波の前にあたる、去年10月からことし1月までの4か月間に、県内7つの医療機関の「後遺症外来」を受診した422人の症状などを分析し、症例集をまとめました。
主な症状でみると、最も多かったのは、「嗅覚障害」の25.6%で、4人に1人が訴えていました。

新型コロナの発症時期でみると、第5波の去年7月から9月が最も多くなりましたが、発症からおよそ1年経過しても後遺症に悩む人が一定数いることがわかりました。

診療科ごとに指針まとめる

症例集では、内科や耳鼻咽喉科、呼吸器内科など6つの診療科ごとに診療の指針をまとめています。

内科
▽けん怠感に加え、頭がぼんやりして記憶力や集中力が低下する「ブレインフォグ」など複数の症状が出ることが多い
▽回復まで6か月以上かかる場合があり、日常生活に支障をきたすことも多い
▽日常生活の中で活動と休息のバランスを取る療養指導をしていくこと
▽患者が症状とうまくつきあっていけるよう支援することが必要

耳鼻咽喉科
▽10代の患者が多い
▽嗅覚や味覚の障害で生活の質が落ちた状態となり、精神的なサポートが重要
▽治療法の1つとしてさまざまなにおいを嗅ぐことで機能の改善を促す、嗅覚トレーニングなど紹介

深刻な後遺症患者 半年以上改善しないケースも

新型コロナの後遺症の患者の中には、半年以上、症状が改善せず、仕事を続けられなくなるケースもみられます。

埼玉県に住む60歳の男性は、去年8月に感染し、39度近い発熱や、けん怠感、肺炎の症状が出て、自宅で療養を続けました。味覚や嗅覚もなくなり、食事がほとんどとれず体重は10キロ以上、減ったということです。
建設現場の仕事に復帰したものの、体のだるさや不眠などの症状を訴え、家族からは「ぼんやりしている」と言われ、去年12月、仕事を続けられなくなったということです。

60歳の男性
「1時間ぐらい寝ると朝まで眠れません。仕事に行っても持続力がなく、やらなければいけないことがわかっていても、ぼんやりして手足が止まってしまい、こうした状況では仕事に行けないと思いました」

男性は、後遺症外来で、頭がぼんやりして記憶力や集中力が低下する「ブレインフォグ」の症状だと説明されました。

「日常生活とか社会生活とか、今どんな状況ですか」

「何かやるにしてもすぐに取りかかれないし、集中力がない」

薬の処方や療養指導を受けていますが、発症から7か月がたった今も症状は大きく改善せず、けん怠感や頭がぼんやりした状態が続いていると訴えています。

60歳の男性
「まさかこんなに長引くと思っていなかったし、1年以上、受診している人もいると聞きました。この先どうなるのか不安です」

男性の主治医 公平病院 公平誠病院長
「後遺症の症状の中でもけん怠感やブレインフォグは軽快しづらく、半年以上、症状が続く方もいます。継続的なサポートが重要です」

「元の生活を取り戻したい」粘り強い治療で症状改善

新型コロナの後遺症の患者の中には、粘り強く治療を続けることで症状が改善するケースもあります。

埼玉県の高校に通う16歳の女子生徒は、高校入学直後の去年5月に感染が判明し、39度近い発熱や、激しい頭痛、息苦しさなどの症状が出ました。
ホテルでの療養を終えて登校を再開しましたが、数日でめまいや頭痛、強いけん怠感、それに味覚や嗅覚に異常がみられたということです。特に、めまいはひどく、秋には学校に通えなくなり、1日のほとんどを自宅のベッドで過ごすようになったということです。
4か所の医療機関で診察を受けましたが、なかなか症状は改善しなかったということです。

女子生徒

「治らなかったらどうしようという不安が大きかったです。病院を転々として悲しかったです」

女子生徒の母親

「最初は娘のつらさがわからずに学校に行かせようとしたんですが、さらに具合が悪くなってしまいました。娘はめまいが心が折れるほどきつくて、絶望的な気持ちになっていました」

そして、後遺症外来がある耳鼻咽喉科を受診し、治療とともに、めまいや嗅覚の改善を促すトレーニングに取り組みました。
めまいを治すため、壁の1点だけを見つめて、目だけを上下左右に動かすことでバランス感覚を取り戻そうとしました。

嗅覚を元に戻すためには、ラベンダーやレモンなどのアロマオイルを実物の写真を見ながら嗅ぐことでにおいと記憶を結びつけようとしました。
こうしたトレーニングを自宅で毎日繰り返し、徐々に症状は改善したということです。

女子生徒
「自分が元気になれるという自信や、うれしさが出てきました。後遺症は絶対に治らないことはないと、体験としてわかって前向きになれました」

女子生徒は、4月から通信制の高校に通うということです。

女子生徒が通院の川越耳科学クリニック 坂田英明院長
「早期に受診して対策した場合は、比較的改善が進むと感じますが、3か月、半年たってからだと、症状が変わらない患者もいます。第6波の患者はこれから出てくると思うので予断を許さない状況です」

オミクロン株で後遺症患者増加か 症例集を診療の指針に

埼玉県医師会の会合

今回、分析の対象となったのは、オミクロン株の拡大より前に感染した患者がほとんどで、埼玉県と県の医師会は、今後、オミクロン株による後遺症についても分析していくことにしています。
また、埼玉県は、4月1日からは後遺症を診療できる医療機関を県内全域をカバーする形で120か所以上に増やすことにしていて、この症例集を診療の指針としていかすことにしています。 

埼玉県医師会 丸木雄一常任理事
「今後、おそらく第5波の数倍の後遺症の患者が出てくるのではないかと思います。そうした患者に対応しながら、新しい知見が得られればこの症例集に新たに加えていきたい。
症例集では、各診療科のスペシャリストに感じたことや注意した方がいいことを書いてもらった。より多くの医師に後遺症を理解してもらい、患者側に立った診療をしてほしい」

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