新型コロナの感染拡大で自宅にいる機会が増えて、部屋の片づけが進んだという方も多いのではないでしょうか。埼玉県川越市を拠点に活動する整理収納アドバイザーの鈴木ゆりさん(34歳)は、家庭の片づけで出た衣類や日用品などの不用品を必要な人に無償で譲り渡す活動を始めました。岸田祥子キャスターが取材しました。
「しまうとき左から 使うとき右から」
鈴木さんの自宅のタオルが入った棚に貼られたラベルです。タオルを洗うたびに左から丸めて収納し、家族が使うときは常に右端から持ち出すようにしています。こうすることで、タオルを棚にしまったままにすることなく、効率よく使うことができるといいます。
鈴木さんが家庭の整理整頓で大切にしているのが、家族みんなで片づけることができる仕組みづくりです。自分一人で抱え込まず家族を巻き込むことで、片づけが持続可能になり、より効率的になると考えています。
鈴木さんがこの仕事を始めたきっかけは、4年前にマイホームを購入したことでした。当時、鈴木さんは片づけが大の苦手で、買い物が大好きな、今とは真逆の生活を送っていました。自宅にはモノがあふれ、探し物に時間がかかってイライラしたり、家族とトラブルになったりしたこともあったと言います。これまでの生活を変えたいと、新居への引っ越しにあわせて断捨離に取り組み、約300キロに上る不用品を一気に処分しました。
「いっぱい手放してすごく不自由な生活になるかなと心配していたんですが、逆に探し物は減ったし、掃除もしやすくなって家事が好きになりました。居心地がよくなったので、家でゆっくりお茶を飲むだけで幸せになって、満足感を得られるようになりました。本当に気持ちが変わりましたね。」
(鈴木さん)
自宅にモノがなくなったことで、家族も片づけを手伝ってくれるようになりました。この春、小学1年生になる6歳の奏人くんは、幼稚園から帰って手を洗うと、すぐに決められた場所にカバンを置いて、次の日に着ていく服を準備します。実は、奏人くんもお母さんから影響を受けて、整理収納アドバイザーの資格を持っているんです。
奏人くんのおもちゃが入った収納ボックスには、なにが入っているのか、わかりやすく説明したラベルが貼られています。遊び終わったあと、すぐに元の場所に戻せるようにするためです。また、お気に入りのおもちゃは手前の取り出しやすい場所に収納し、半年に一度は中身を点検して、要らなくなったものは処分しています。
「面倒くさいことを先にやっちゃうと、気持ちよく遊べます。将来はお母さんみたいな、片づけ上手な大人になりたい」と奏人くんは話してくれました。
鈴木さんが今、力を入れているのが「お片づけでSDGsプロジェクト」です。整理収納のサポートをした家庭で使われなくなった衣類や日用品を、福祉団体など必要とする人に無償で寄付しています。去年6月から始めました。
ことし1月に川越市で開いた譲渡会には、未使用の食器や使わなくなったおもちゃなど250点ほどが出品されました。自宅に眠っていた小物を出品した女性は「捨てられないという気持ちがずっとあったんですが、誰かに使っていただけることで、手放しやすくなると思います」と話しました。
「お客さんと一緒に悩みながら処分したものを、喜んで持って帰ってくれるのを見るとやっぱりうれしいですよね。個人の力量では本当にわずかなSDGs活動だとは思いますが、誰かが同じようにやってくれたら、より大きい活動になると思うので、ぜひ、自分にできることは何かということをみんなが考えるきっかけになってほしいですね。」
(鈴木さん)
鈴木さんは、自宅の様子を紹介しながら、片づけのアドバイスを行うオンライン講座も始めました。コロナ禍で、片づけの依頼や相談の数は3倍に増えたということです。
また、川越市からの依頼を受けて、防災備蓄についての講座も開催することにしています。非常用の食品は種類別に保管しがちですが、賞味期限別に分けて普段の生活で使いながら管理することで、食品の鮮度を保ち、いざというときにも日常生活に近い食生活を送ることができるということです。
鈴木さんはこれからも、快適で、安心で、地球にも優しい暮らしを提案していきたいと話していました。