ページの本文へ

  1. 首都圏ナビ
  2. 埼玉WEB特集
  3. 耳で焙煎するコーヒー 埼玉 上尾 味の決め手ははじける音に

耳で焙煎するコーヒー 埼玉 上尾 味の決め手ははじける音に

  • 2022年02月08日

埼玉県上尾市にある福祉作業所が販売しているコーヒー豆が人気を集めています。焙煎(ばいせん)を行っているのは目の不自由な人たち。豆のはじける音を耳で聞き分けています。

上尾市にある福祉作業所「領家グリーンゲイブルズ」では、主に視覚障害のある人たちがものづくりや農業に取り組んでいます。
ここで販売されるコーヒー豆。パッケージには「僕らは耳で焙煎をする。」という文字が、点字とともに記されています。

作業所では、視覚障害者の活躍の場を広げようと、おととしからコーヒーの焙煎を始めました。最初は、温度や時間を自動調節できる電気式の焙煎機を使っていました。
指導を受けた地元の喫茶店の店長から「音をしっかり聞き分けられれば、本格的な焙煎ができるのでは」とアドバイスを受けて、ガスを使い、じか火の火力を調節する業務用の機械を導入しました。

コーヒーの味わいや香りの決め手となる「焙煎」。
加熱する温度や時間の細かな調整が必要ですが、そのあんばいを熱で膨らんだ豆が“はじける音”を聞き分けて判断しています。

この日、焙煎の判断をするのは全盲の生田健人さんと山仲聡彰さん。弱視の女性がストップウォッチを手にしてタイムキーパーを務め、焙煎機の操作や記録は職員がサポートします。

現在は産地が異なる5種類の豆を取り扱っています。はじけるタイミングや温度などは豆によって異なります。

焙煎開始から約15分。焙煎機の音が響く中で機械に耳を近づけます。

「パチパチ」という豆がはじけるわずかな音が聞こえ始めた瞬間、手を挙げて周りの職員に伝え、その時間や温度を記録します。

そして、「パチパチ、パチパチ」と激しくはじける音が落ち着いてきた瞬間。

「止めてください!」

絶妙のタイミングで豆を取り出しました。

いりたての豆をすぐにひいて、さっそく試飲。

香りや味を確認していました。

これまで600回を超える焙煎の記録を残して、どうしたら最もおいしいコーヒーができるか、追い求めてきました。

生田健人さん
「レシピに書いてある温度に合わせるようにしているんですが、やはり誤差が出るので毎回調整しなければいけない。きょうはいいものができたと思います」

山仲聡彰さん
「最初はすごく苦くなってしまう時もあったけれど、1年も続けていると、よりよいタイミングで判断できるようになってきた。みんながおいしいと言ってくれることが一番うれしいことです」 

耳で焙煎したコーヒー豆は、ネットショップやイベントなどで販売しています。当初は月3万円ほどだった売り上げは、去年12月におよそ45万円まで伸びたといいます。

施設長の加藤木貢児さん
「福祉作業所だから、視覚障害者だから買ってもらうというのではなくて、味がおいしかったから口コミで広がってリピートしていただくというところは、みんなにとっても励みになるし、とてもありがたいです。自分たちが焙煎しているというやりがいが増して、やる気が倍にも3倍にもなってきました。それぞれができることを増やし、チームでおいしいコーヒーをつくっていきたい」

ページトップに戻る