荒川が育む豊かな自然が魅力で年間約300万人の観光客が訪れる埼玉県長瀞町。町の地域おこし協力隊に応募した清水勇多さんは、WITH RIVERというプロジェクトを立ち上げ、川の環境問題と町おこしに取り組んでいます。岸田 祥子キャスターが伺いました。
清水さんは、ふだんはアパレル関係の仕事をしながら、長瀞町の地域おこし協力隊として活動されているということですが、WITH RIVERというプロジェクトはどういったきっかけで始めたんですか。
もともと環境問題やゴミ問題に関心があって、長瀞町に来てから、まず観光名所の岩畳でゴミ拾いを始めました。そこで、ライン下りやラフティングなど川で観光事業を営む人たちと出会って、一緒に取り組むようになり、プロジェクトが少しずつ大きくなっていきました。
具体的にこれまでどんなプロジェクトをしてきましたか。
ことしの夏、サップという一人乗り用のボートを漕いで、長瀞から東京の赤羽まで3日間かけて荒川を下るイベントを開きました。川の上からゴミ拾いをしたり、環境問題を考えたりするのが目的でした。
川の上から環境問題について考えると、なにか目線が変わりそうですね。
普段、川の上で長い時間、過ごすことはないので、川の上から見る景色であるとか、田舎から都会に変わっていく風景を見ていると、私たちが当たり前に考えている今の暮らしが、どれだけ便利で素敵なことなのかということを感じることができました。この川下りの様子は、本にしたり、ドキュメンタリー映画として上映したりもしました。
ほかには、どんな活動をしていますか。
8人くらいが乗ることができるラフティングボードを使って、観光客や子どもたちにゴミ拾いをしてもらう活動もしています。去年11月14日の県民の日に、3艘のラフティングボードでゴミ拾いをしたんですけれども、長瀞エリアだけで1日で160キロのゴミが集まりました。これはペットボトルや燃えるゴミだけの量で、このほかに鉄のゴミもあったりしたので、合わせるとたぶん200キロ以上になったと思います。
そんなにたくさんのゴミが川の中にあるんですね。これは私たちも考えなければならないですね。
私たちが拾ったゴミは、きちんと処分をしていれば、川から出ることはなかったと思うんです。私たちには“消費する責任”があるんだということを、WITH RIVER の活動を通じて発信していきたいと思っています。
川の上からのゴミ拾い、参加した子どもたちはどんな様子でしたか。
単にラフティングが楽しいということもあるんですけれど、川の中から自転車の車輪を拾ったり、宝さがしのような感覚もあるので、すごく楽しんでくれたみたいです。私たちも子どもたちの笑顔が見ることができて、素敵な時間を過ごすことができました。
一方で、長瀞町でも、実際に川で遊んだことがある子どもたちはすごく少ないようですね。
長瀞町の中学生に聞いたアンケートでは、実際に川で遊んだことのある子どもは2割程度しかいなかったということなんです。やはり、川は危ないという親からの教えがあって、なかなか気軽に遊ぶことができないということがあるみたいです。
ですので、ことし4月から、地元の事業者と協力して、長瀞や秩父地域の子どもたちに無料でラフティングや川遊びを楽しんでもらいながら、ゴミ拾いをしてもらう企画を始めたいと考えています。
WITH RIVERでは、子どもたちが大人になっても荒川とともに笑顔で暮らせるようにしたいという目的を持っています。川の豊かな自然環境を改善しながら、地域経済の発展に貢献できるプロジェクトを進めていきたいと考えています。
長瀞町の地域おこし協力隊は、最長3年間の任期で町の魅力を外部に発信・PRしています。町の産業観光課の職員も、清水さんの取り組みは、長瀞だからこそできる観光×SDGsの取り組みなので、期待していると話していました。