ページの本文へ

  1. 首都圏ナビ
  2. 埼玉WEB特集
  3. レインボーさいたまの会に聞く カミングアウトとアウティング

レインボーさいたまの会に聞く カミングアウトとアウティング

  • 2021年12月09日

最近、LGBTQなど性的マイノリティーの人たちをめぐる社会的な動きが急速に進んでいます。こうした動きを、当事者の人たちはどのように受け止めているのでしょうか。レインボーさいたまの会のメンバーに岩崎愛キャスターが伺いました。
スタジオには、事務局長の大澤由季さん、副代表の川崎しょうさん、共同代表の鈴木翔子さんにお越しいただきました。2回目は、カミングアウトとアウティングについてです。

1回目はこちら↓
レインボーさいたまの会に聞く パートナーシップ制度

カミングアウトの難しさ

大澤さんは、女性のパートナーと生活していますが、家族にはどのように説明したのですか。

大澤さん

私の場合、できることなら一生、母に言わないつもりでいたんです。ただ、ばれてしまいました。 

20代半ばのときです。当時は今のようにインターネットが盛んではなかったので、個人が発行している冊子を実家に送ってもらっていたのですが、仕事の関係で実家を出たとき、うっかり引っ越し届を先方に送るのを忘れておりまして、私が引っ越したあとに実家に冊子が届いてしまいました。

もちろん普段だったら、母は他人宛ての郵便物は、家族であろうと開けることはしないんですが、引っ越しのばたばたもあったので、たまたま開けて、LだのBだのGだのと書いてある冊子を見てしまったんです。

私は“おかしい、冊子が届かないぞ”と焦って、母に“なにか郵便物が届いてなかった?”と聞いたら、“変なのが届いていたわよ”と言われて、もうその瞬間に汗がばーっと出ました。それで、次に実家に帰ったとき、冊子が入っていた引き出しを開けたら、冊子はあるにはあったのですが、1回くしゃくしゃに握りつぶしあとに広げなおした状態で置いてあったんです。 

うわ〜、どう思いました?

大澤さん

覚悟は決めていたので、自分で直接、話をしようと思ったのですが、たぶん、伝えきれないと思ったので、友達のアドバイスで、手紙を書いていきました。子どものころからの経緯をきちんと書いて、母に話しかけたのですが、母に泣かれてしまって、お互いに話にならなかったので、その日は手紙だけ置いて、逃げ帰りました。 

このあと、何回か母と手紙のやり取りをして、母も少しずつ落ち着いてくれたのですが、半年ぐらいたって会ったときに、“やっぱり、すぐに受け入れるのは難しい”と言われたんです。ただ、“あなたは大事な娘だから、 あなたの生き方を否定することは、あなたという人間を否定することになるから、それはできない。だから、まずは見守らせてほしい”と言ってくれて、そこからがスタートでしたね。

まず、私自身がちゃんと仕事をして、生活も整えて、幸せに生きていくことが母に認めてもらうために大事なことだと思ったので、そういう自分自身を母に見せながら生活していきました。今、20年ぐらいたちましたけれど、もう普通に母とセクシャリティの話もしますし、自分のパートナーも会わせたりしています。本当に、ちょっとずつ、ちょっとずつ切り開いて、今がある感じです。

カミングアウトとアウティング

カミングアウトやアウティング、ゾーニングという言葉がありますが、私、恥ずかしながら初めて知りました。これらの言葉の意味を教えていただいてもいいですか。 

大澤さん

カミングアウトは、簡単に言ってしまうと、自分のセクシャリティを誰かに伝えることを言います。ただやはり、今まで話してきたように、自分のセクシャリティを公にするのは、本人にとってすごくリスクのあることです。 もしかしたら、自分自身を否定されたり、攻撃をされたりするおそれがあることなので、当事者にとって、カミングアウトすることは、すごく勇気が必要な行動です。 

ただ、それでもカミングアウトしようと思うのは、やはり相手に対する信頼があるからです。その方と、これからもよい関係を築いていきたいという願いがあるからなので、カミングアウトは当事者にとって大きなものだということは、知っていただけたらありがたいと思います。

アウティングはどういう意味ですか。

大澤さん

アウティングは、カミングアウトを受けた方、もしくは、誰かのセクシャリティを知った方が、当事者本人の許可を得ずに勝手に第三者に話してしまうことです。

もちろん故意に悪意を持って第三者に話すことは言語道断なのですが、ただ、気をつけていただきたいのは、善意を基にした情報のシェアだったとしても、本人の許可を得なければ、アウティングになってしまうことです。

例えば、学校で生徒が信頼できる先生に自分のセクシャリティをカミングアウトしたとします。その先生が、生徒がいい学校生活を送るための環境を整えてあげたいと思って、自分一人だけではなく、ほかの先生にも知っておいてもらったほうがいいと思ったとしても、本人の許可を得ていなければ、それはやはりアウティングになってしまいます。 

カミングアウトを受けた先生にとっては、ほかの先生も信頼できる対象かもしれないですが、生徒にとって、ほかの先生にも同じようにカミングアウトしたいと思えるかどうかは、その生徒にしかわからないことなのです。 

仮にカミングアウトを受けた場合は、必ず当事者本人から、今、誰にどこまでカミングアウトしているのか、この先、誰にカミングアウトする予定なのか、そういったことをきちんと確認をしていただきたい。これをゾーニングと言います。当事者が“ここまではする、ここからはしない”と決める、この線引きがゾーニングです。ですので、ゾーニングがおろそかになってしまうと、アウティングにつながるおそれがあります。

カミングアウトしてもらった側は、どういう対応をとるのが一番いいのでしょうか。

鈴木さん

ただ素直に話を聞いていただきたいと思います。カミングアウトする前もカミングアウトした後も、本人はなにも変わらないわけです。以前から知っている人が、さらにもう一歩、奥まで話をしてくれたということだけです。

結局は人間関係だと思います。別にLGBTQにかかわらず、皆さんが悩みを抱えていて、この人だったら相談できると思って話したときに、相手が親身に聞いてくれると本当に助けになるじゃないですか。単純に、お互いの気持ちや考え方を尊重する、そこに尽きるのではないかなと思います。

ジェンダーの平等実現に向けて

ここ数年、LGBTQの認知度がかなり高まってきていると感じているんですが、いかがでしょうか。 

川崎さん

私たち当事者の意識が変わってきたこともありますが、それ以上に、「アライ」の存在が大きいと感じています。アライとは、LGBTQ、性的マイノリティーの理解者、支援者という意味です。 ソーシャルインクルージョン、社会的包摂と言いますが、社会的に弱い立場にいる人の気持ちに寄り添って、支援してくれている人たちですね。 

鈴木さん

2015年に渋谷区でパートナーシップ制度が創設されたことが大きかったのではないかなと思っています。当時、私は海外に住んでいたのですが、日本ではあり得ないだろうと、どこかで思っていました。ところが、もう今や、2021年においては、ジェンダーの問題が、ここまで当たり前に、特別なことではなく、市民、国民が感じる課題として話題になっています。このことは本当に大きな変化だと思います。 

最後にみなさんが目指す日本のあり方を教えていただいてもいいですか。 

川崎さん

日本だけにかぎらないですが、人間の価値に「高い低い」をつけることで、人間はこれまで何度も失敗を重ねてきました。本人の意思では変えることができない特性が原因で、悲しい思いをすることがないような世界、そして、誰もが同じくらいかけがえのない存在だと思い合える社会を目指したいと思います。 

鈴木さん

特に私は4人の子どもがいて、毎日、関わっていくなかで、子どもたちの置かれている環境がすごく気になるんです。自分は子どものときに、苦しんで悩んでいた時期が長かったものですから、自分の子どもたち、また、その周りにいる人たちが当たり前にお互いを尊重して、気がつかないうちに加害者になったり、気がつかないうちに被害者になったりしてしまわない、そういった教育が進んでほしいというのが切なる願いです。

大澤さん

誰もが、普通とか、当たり前という感覚を持っていると思います。ただ、あくまでも自分にとっての当たり前であって、すべての人が当てはまるとはかぎらない。ちょっと言い方が荒いかもしれないですが、普通とか当たり前という言葉がなくなればいいなと思います。

みんなが自分の個性を輝かせる、このなかには、普通も異常もないと思います。みんなが自由に、自由にというのは決してやりたい放題ということではなくて、心が自由に、そして、楽しく生きることができる、そんな日本になってくれればいいなと思います。

キャスターからひと言

アウティングとは、本人の了解を得ずに勝手に第三者に本人の性的指向などを伝えることでした。LGBTQにかぎらず、本人の望まない情報をほかの人に広げて誰かを傷つけてしまう重みを、私たちがより理解していくことが大切だと感じました。 

記事の内容はさいたま放送局のFM番組「ひるどき!さいたま~ず」で放送しました。(11/25)

ページトップに戻る