春 湧き出す水の里 ~長野 安曇野~

  • 2020年3月7日

今回訪ねたのは、長野県の中部にある安曇野市です。安曇野市は、北アルプスのふもとにあり、豊富な雪解け水が湧く『水の里』。雪解け水が育む春の恵みを探してきました。

名峰が並ぶ北アルプスの裾野に広がる安曇野市。山の雪解け水が町のあちらこちらで湧いています。その量は、1日なんと70万トンにも及びます。

その豊富な湧き水で育てられているのが・・・

「すごーい!広い!」

目の前に広がる一面の緑。全部わさびです。

長野県はわさびの生産量が日本一で、その9割が安曇野産。わさび田の水温は一年を通して12度ほどと一定のため、わさびが育つには最適な環境なんです。

わさび農場の川上清さんにお話を伺いました。

この季節の風物詩が・・・

「これがわさびの花です」

わさびは3月と4月の春先にだけ白い花を咲かせます。

「この辺は寒いので、花が咲くと やっと暖かくなってくる。そんな春の目覚めです」と川上さん。

 

じつはこのわさびの花、食べることができるんです。

いただいてみると・・・

「ん? ん!! んーッ!!! わさびのツーンとした感じが、鼻にきますね。お―――・・・」

そのわさびの花を、『お浸し』にして食べるのが地元の定番です。

こちらは・・・

「ツーンと辛い感じではなくて、花 独特のほのかな苦みと、わさびの香りがさっぱりとしておいしい」

わさびは、引き立て役のイメージが強いかと思いますが、地元では主役。花は、天ぷらにしてもおいしいそうですよ。

川上さんは「見ても楽しめるし、食べても楽しめる。春の訪れを感じる花」と話していました。

雪解け水は、川にも恵みをもたらしています。

「こんにちは。いま何されてるんですか?」

「カジカのうけの漁です」

漁師の矢花郁夫さんが獲っていたのは、12月から2月の間だけ漁が行われる、カジカ。カサゴの仲間で、きれいな水にのみ生息することから『清流のシンボル』と呼ばれています。なかなか市場に出回らない希少な魚です。

漁に使うのは、『うけ』と呼ばれるカゴ。河川敷に育つ柳の枝を100本ほど編み込んで作る自家製の仕掛けで、内側に返しがついていて、一度入ったカジカが出られないようになっているんです。

川の一部をせき止め、産卵のためにのぼってくるカジカを、底に仕掛けたカゴの中に誘い込みます。

私も特別にカゴをひとつ 引き上げさせてもらいました。

「何匹入っているか・・・。あ!入ってる!!」

開けてみると・・・

「わーすごい!」

「えらい入ってるわ!」

この日獲れたのは22匹と大量でした。中には、産卵前の子持ちのカジカもいました。

「旬です。今がいちばん。産卵の時期で脂を持っているし、一番いい。自然の恵み、水の恵み、焼いてあげるよ」

ということで、矢花さんお勧めの 炭火でじっくり焼いた『カジカの塩焼き』をいただきます。

「身がふっくら!おいし~い。香ばしいし、臭みも全くない」

「水がきれいだから。元は水だよ」

焼いたカジカに熱かんを注いで作る『骨酒(こつざけ)』も風味をしっかりと感じられて格別でした。

矢花さんは「友達や知り合いで 期待して待っている人もいる。そういう人に食べさせたい。酒飲みながら仲間と食べるのが一番いい」と笑って話していました。

さらに雪解け水の恵みを探して湖に向かうと・・・

「大勢の方がカメラを構えていらっしゃいます。何かを狙ってるんですかね?」

カメラマンたちのお目当ては・・・

「すごい!美しい!白鳥がいます」

その数およそ400羽。ほとんどが『コハクチョウ』という種類で、4,000キロ離れたシベリアからやってきています。

頭の色がグレーなのはまだ一歳にもなっていない幼鳥です。

きれいな水で育ったコケ類を求めて越冬のために安曇野に訪れます。

アルプス白鳥の会の、会田 仁さんは毎朝、白鳥の飛来数やケガをしていないかなどチェックしています。30年前 初めて見た白鳥の美しさに心を奪われ、以来、保護活動を続けているそうです。

湖で、今の時期にしか見られないのが・・・

「いっせいに出たよ」

「わー!飛び立ちましたね」

「あれは1つの家族ですね。幼鳥も5羽くらいいたかな」

故郷のシベリアに帰るために、親鳥が子どもに飛び方を教えているんです。

私も会田さんにコツを教わりながら撮影に挑戦!

「よーく狙って・・・」

『カシャ!カシャ!カシャ!カシャ!』

「飛び立つ瞬間、どうでしょう?」

「いいね いいね!これいいじゃん!羽も上がっている。スピード感もある」

 

会田さんは「白鳥は白い恋人です。安曇野の春は 白鳥の北帰行とともに。『ケガしないように帰れよ』と、『また来シーズン元気で帰ってこいよ』という思い」と話していました。

 

 “水の里”で、春の訪れと人々の温かさに触れた旅でした。

 

白鳥は、暖冬のためか例年より旅立ちが早く、会田さんによると、今朝(3月7日)すでに残り190羽。市のホームページでも最新の数は確認できるということです。

問い合わせ先

◇紹介したわさび農場について
 「大王わさび農場」

◆カジカについて
 カジカは捕獲数も少なく市場に出回りにくい。
 地元の、一部の旅館では季節限定で提供しているところもあるので、宿泊予定の旅館にお問い合わせください。
 ※カジカ漁は、地元の漁業組合に参加している人のみすることができます。

◆白鳥について
 会田さんによると、3月中旬ごろまでは見ることができるのではないかということです。
 ※安曇野市のHPで現在の白鳥の数を確認できます。

  • 報告・加藤 永莉香

    NHK長野

    報告・加藤 永莉香

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