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2020東京オリンピック・パラリンピック 新競技場に込める “55年間の思い” 6月26日

東京オリンピック・パラリンピックに向け 新しい競技場の建設が続いています。

そのひとつ、世界最大規模の木製の屋根を備えた『有明体操競技場』。建設には55年前の東京オリンピックに関わった、ひとりの技術者の思いが込められています。

 

建設中の『有明体操競技場』。ここに何度も足を運んでいる人がいます。

「ダイナミックですよね。柔らかいけどダイナミック。とてもいいですね」

斎藤公男さん、80歳。

斎藤さんは今から55年前の東京オリンピック、そして今回と、2つのオリンピックに直接関わっている 数少ない現役の技術者のひとりです。

 

オリンピックとの最初の関わりは、大学院に進んだばかりの22歳のときでした。

『国立代々木競技場』の建設に、建築家の丹下健三さんのもとで、構造を考え、より強度の高い建物をつくる “構造エンジニア” として関わりました。

『歴史に残る建物をつくるプロジェクトに参加した』 その経験が人生を決めたといいます。

「建築家とエンジニアという、2つの全く違うプロフェッショナル同士が 同じ目標に向かって力を合わせていく。もし代々木競技場にあの時 出会わなかったら、今の自分はなかったと思う」

 

東京オリンピックのあと、構造エンジニアとして本格的に歩み始めた斎藤さん。

41歳のとき、『張弦梁(ちょうげんばり)』という技術を提唱します。

屋根を弓のようにしならせて、両端をワイヤーなどで固定。そのワイヤーは真ん中で支えられています。こうすると強度が増し、広い空間が確保できるのです。

 

この技術を使って、島根県の『出雲ドーム』や『さいたまスーパーアリーナ』など、広い空間を持つ建物を全国各地に次々と生み出します。

その数、国内だけでも100を超え、斎藤さんは “構造エンジニア” の第一人者として知られるようになりました。

 

今回の東京大会でも斎藤さんの張弦梁の技術がいかされています。それが、いま造っている『有明体操競技場』です。

『日本の伝統である木の文化を世界に向けて発信したい』と、設計プランでは、木をふんだんに使った競技場が求められました。

 

しかし、問題になったのは、世界最大規模となる木製の屋根。強度とその下に広がる空間を確保することでした。

「大空間をぜひやってみたいと思いましたけど、とても難しい」と話すのは清水建設、構造技術担当の西谷隆之さん。

 

そこで、相談を受けた斎藤さんは、今までの経験をもとにアイディアをまとめます。

『デザインを変えず、メカニズムを変える!』

張弦梁の技術を応用すれば、木をいかした大きな建物が建てられるとアドバイスしました。

「走馬灯のように、いろんな50年間のプロジェクトがヒュッと浮かんだ感じ。『これはうまくいんじゃないか』と直感で感じた」と斎藤さん。

 

こうして無事着工にこぎつけた競技場。

去年(2018年)11月には、世界最大規模となる木製の屋根の取り付けも行われました。

斎藤さんにとっての2度目のオリンピック。自身が生み出した技術で選手の活躍を支えます。

 

斎藤さんは「これほどの規模の木のドームというのは 今までなかった。人間を優しく包みながら、アスリートたちの演技をエキサイティングにする。両方の仕組みがある気がする。オリンピックを2度迎えられるとは思わなかった。本当にありがたい。神様のおかげ」と話していました。

 

『有明体操競技場』は10月に完成し、11月にはオリンピックのプレ大会としてトランポリンの世界大会が開かれる予定です。