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無戸籍 ある男性の50年

  • 2018年10月29日

出生届が出されずに、戸籍がないまま暮らしている『無戸籍』の人たちの存在が問題となっています。50年間戸籍がないまま過ごしてきた男性が、念願の戸籍を作ることができました。その日々を追いました。

■無戸籍の理由を明かさぬまま両親が他界

 

生まれてから50年、無戸籍で過ごしてきた矢光勝美さんに9月、人生の転機が訪れました。

「お待たせしました。こちらが戸籍謄本になります。内容に間違いがないか、ご確認をお願いします」

手にしたのは、初めて見る、自らの戸籍謄本。念願の戸籍を作ることができたのです。

「紙切れ一枚なんですけどね。でも、これがないとだめなんですよね・・・」

 

千葉県で育った矢光さん。戸籍がないとわかったのは20歳を過ぎてからでした。一般的には、離婚などが原因で出生届を出せないケースが知られていますが、矢光さんの両親は離婚していません。なぜ戸籍がないのか教えてくれないまま2人とも亡くなりました。

「拾われてきた子なのかな? とか、そういうことがないかぎり 出生届を出さない意味がわからない」

■本人の証明書がなく仕事にもつけず

矢光さんは、日雇いの仕事や生活保護などで暮らしてきました。本人を証明するものがないため、アルバイトなどの仕事もできなかったのです。

 

「『本人証明書がない』って言ったら、 “あー” って。『申し訳ないけど本人証明書ないと無理だね』って」

携帯電話やアパートの契約もできず、結婚も諦めました。

「やっぱ人と違うんだなって。日本にいるけど日本人じゃないっていうか。 “影” じゃないけど・・・、誰にも言えなかったし」

■念願の戸籍取得 50歳からの再出発

事態が動いたのは、ことし。無戸籍の問題に詳しい弁護士の助けを得て、戸籍を新しく作る手続きを行うことになったのです。裁判所に証拠を提出し、日本人であると認められれば戸籍を作ることができます。

 

申し立てを行ってから4か月。うれしい知らせが。矢光さんの親戚にあたるという人物が、身内であると証言したのです。

「記憶あります?」 「ありますね」

親戚は矢光さんの幼い頃の写真も送ってくれました。

「お母さん?」 「おふくろですね。懐かしいなと思いました」

こうした証拠がそろい、先月末、矢光さんは戸籍を作ることができました。そしていま、行政の支援を受けて就労のための訓練を受けています。矢光勝美さん、50歳からの再出発です。

 

矢光さんは「普通がうれしいんですよね、普通じゃなかったから。平凡なのかもしれないけど、働いてお金を得て、普通に生活して・・・。生きていきたいです。普通に」と話していました。

矢光さんのような、中高年の無戸籍の人がどれくらいいるのか、実態は把握されていないということです。

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