“あの人” を思い続ける手紙

  • 2019年2月14日

長年連れ添った配偶者や大切な家族に先立たれたとき、喪失感を抱えて、その後の人生をどう生きていくのか。亡くなった妻や夫などに宛てて手紙を書くことで、いつまでも大切な人と共に人生を歩もうとする人々を取材しました。《天谷唯ディレクター》

■墓地の一角に “亡き人に手紙を書く” 場所

千葉県にある墓地。その一角にお寺がつくった、亡き人への手紙を書く場所があります。訪れる人の多くが、伴侶を亡くした50代以上の人たちです。

訪れていた人
「位はいに向かってしゃべるのと、手紙を書くのは違う。気持ちが改まる」

2年前に夫を亡くした 岡田苑子さんは、夫婦で経営していた会社の整理に追われていたことを夫に伝えます。

“やっと冷静に考えられるようになってきました。大変なことばかりあったと思っていましたが、全てに感謝しています”

「文字にしていくうちに、 “全部これで良かったんだ” と、自分に納得させているのかもしれない。手紙を書くことは私にとってはいい作業」

手紙はお寺へ託され、供養のため、たき上げられます。

■届かない手紙だからこそ本音が書ける

この手紙を発案したのは、住職の井上城治さん。15年ほど前にお寺の経営で悩み、逃げだしたいと思っていた時に見つけたのが、父が残した言葉でした。

『後継に告ぐ、證大寺の念仏の灯を絶やすな』

父の強い言葉に、寺を守る決意を改めて固めたといいます。これをきっかけに、生前、本音で話をしてこなかった父に手紙を書くようになりました。

亡き人へ手紙を書くことは、自分の生き方を問い直し、前を向くきっかけになると井上さんは考えています。

「亡くなって、別れてから、自分の本当の思いをつづることができる。届かない手紙だから本音が書けるのかもしれない。真心がそこには出せる」

■初孫が誕生 亡き妻への感謝を手紙に

2年前、がんで妻を亡くした南俊彦さん。妻の秀子さんは、金融の仕事で忙しい南さんを29年にわたって支え、家事や子育てを一手に担ってきました。

「日常生活の、こまごましたことまで妻が全部やってくれていた。ありがたみが、今わかる気がする」

南さんにとって秀子さんの存在は今も身近にあります。

「ママのレシピ見ながらやって」
「見ながら・・・もう頭に入ってる」

秀子さんが亡くなる10日前に残したレシピです。病院で息子に口述筆記させました。

料理をしない夫のために、秀子さんが残した家庭の味です。

「いただきまーす!」
「さあ…」
「うーん、おいしい!」
「それはやっぱりママの隠し味だよ!」

秀子さんが亡くなったあと、初孫に恵まれた南さん。妻の誕生日に手紙を書きました。

“初孫を抱っこしたかったよね?さぞかし楽しみにしていたんだろうと思うと、無念な気持ちで一杯。君のおかげで、娘の長男や息子のお嫁さんが家族に加わり、その輪が広がっています。感謝の気持ちで一杯です”

南さん
「家族の輪が広がってきているのは、妻が愛情を持って子どもたちを育ててくれたから。感謝の気持ちを届けることができたら…、手紙を書くことは夫婦の会話ができるいい時間」

大切な人を思い続ける手紙。残された人たちの心の支えになっています。

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