夏になると、辛くて真っ赤な料理を食べたくなりませんか?
カレーや中国料理やエスニック料理など、辛い料理に必ずと言っていいほど入っているのが、唐辛子(とうがらし)。実はこの唐辛子、辛さの先に本当の魅力があるそうなんです。唐辛子の知られざる魅力を調べてきました。
信州大学農学部の教授で20年以上、植物遺伝育種学を研究している 松島憲一さん。アジア各地で栽培されている唐辛子の種を採取し、栽培実験や遺伝子解析、新種の開発などを行っています。
唐辛子は、1492年、コロンブスが西インド諸島で発見し、スペインに持ち帰ったのが世界中に広まったきっかけになったと言われています。それ以来、瞬く間に世界中で栽培されるようになり、さまざまな料理に使われるようになりました。
ただ辛いだけではない、辛さの向こうにある、うまみ・甘味・酸味・香りを兼ね備えた、魅力的な食材…唐辛子が世界中に愛され続けてきた理由はこれだと、松島さんは考えています。
唐辛子の特に辛みの強い部分を取り除くと、うまみを感じやすくなるといいます。
唐辛子は種が辛い!と思われがちですが、実は、辛み成分であるカプサイシンは、果実の“隔壁”と種の周りにある“胎座(たいざ)”と呼ばれる部分に含まれています。ここを取り除くと、種類にもよりますが辛味はあまり感じなくなるんですよ。
松島さんによれば、日本で、唐辛子で作った香辛料が生まれたのは、今からおよそ400年前の江戸時代。漢方をヒントに唐辛子を乾燥させて砕いたものを材料として七味唐辛子が売り出されたのです。その後、江戸では、そばの人気と共に薬味の一つとして七味唐辛子が注目され、みそ汁やおかずにかけるなど、庶民の食卓には欠かせない調味料になったと言われています。
そして現代では、昭和59年に発売された、唐辛子を使った辛いポテトチップスが激辛ブームのきっかけに。
子ども向けには刺激があるものは売れないとされていた菓子業界。しかし、学生や大人たちの間で人気となり、これまでにはないスナック菓子の真骨頂を切り開き、激辛ブームへの礎を築いたのです。
菓子メーカー マーケティング部 加藤俊輔さん
「唐辛子の粉末を加えることで、ジャガイモのうまみだけでなく、他の調味料の味を総合的に引き上げていることがわかったんです。辛さだけでない、唐辛子にしかないうまみがあり、それが継続して、商品の人気が続いているのだと思います」
唐辛子の辛味の先のうまみを知るためには、ぜひ、唐辛子から“だし”を取ってみてください。
そばのつゆに、唐辛子のだしを加えると、とってもおいしいんです。
【唐辛子のめんつゆ】
<材料>
・唐辛子(芝平なんばん) 5本
・水 500ml
・めんつゆ(濃縮)
<作り方>
(1)唐辛子の胎座と隔壁を3つ分取り除いて、だしが出やすくなるように、小さくちぎっておく
(2)水の中に(1)を入れて、20分間じっくりだしを取る
(3)(2)を70度以下の熱で、20分間加熱する
(4)お好みの濃度のめんつゆを(3)で割る
※今回は信州伝統野菜の「芝平なんばん」を使いました。大ぶりの果実なので、辛味のある胎座・隔壁が取り除きやすい唐辛子です。乾燥した「鷹の爪」は果実が小さいため、胎座・隔壁が残りやすく、辛味が強くなるのでご注意ください。
唐辛子は、温度によって抽出されるうまみの成分が変わります。
まずは水で20分、そして、加熱して20分、じっくりうまみを引き出します。
70度以上の熱を加えると、雑味が出てしまうので、絶対に沸騰させないよう気を付けてください。
上村
リポーター
唐辛子の“だし”だけを口に含むと、最初に、優しい甘味を感じ、その後、香ばしい香りが広がります。
最後に舌の上で少しピリピリした刺激がありますが、とにかくおいしい!驚きました!
唐辛子の魅力は、スパイスだけにとどまりません。ピーマンやパプリカと同じナス科のトウガラシ属で、野菜としても魅力のある食材なんです。
埼玉で年間50種類以上の唐辛子を栽培しているサカール祥子さん。
サカールさんによると、「世界には、甘い唐辛子や、酸味の強いもの、肉厚でフルーツのようにジューシーなものなど、味も形も全く異なるたくさんの品種があります。辛さの向こうの世界を味わいたいなら、ぜひ、生で食べてみてほしい」といいます。
そこで今回は、肉厚で爽やかな辛味と酸味のバランスがよいという、“ハラペーニョ”を使った、サカールさんオススメのレシピを伺いました。
【ハラペーニョのぬか漬け】
<材料> ※分量はお好みです
・ハラペーニョ
・ぬか床
<作り方>
(1)唐辛子の胎座と隔壁を取り除く
(2)ぬか床に漬ける
【ハラペーニョのサルササラダ】
<材料> ※分量はお好みです
・ハラペーニョ
・トマト
・玉ねぎ
・にんにく
・パクチー
・オリーブオイル
・塩
・レモン
<作り方>
(1)ハラペーニョの胎座と隔壁を取り除く
(2)ハラペーニョ・トマト・玉ねぎは角切り、にんにくはみじん切り、パクチーは食べやすい大きさに切っておく
(3)(2)にオリーブオイル・塩・レモンで味付けをする
【ハラペーニョの肉詰め】
<材料> ※分量はお好みです
・ハラペーニョ
・ひき肉
・玉ねぎ
・塩
・こしょう
<作り方>
(1)ハラペーニョの真ん中に縦の切り込みを入れ、胎座と隔壁を取り除く
(2)ひき肉とみじん切りにした玉ねぎを混ぜて、塩こしょうで味をつける
(3)(1)に(2)を詰めてフライパンで焼く
生の唐辛子は、スパイスにないフレッシュな香りと食感が楽しめます。
ぜひ、野菜の一つとして、いろいろな料理に試してほしいですね!
パプリカのような甘味とトマトのような酸味、生の唐辛子でしか味わえないおいしさを知りました。
ただ辛いだけではない、辛さの向こうのおいしさをたっぷり堪能することができました!