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「コロナで日本はおしまいだね」 子どもの不安をどう受け止める?

  • 2021年2月17日

NHKの新型コロナ特設サイトには、毎日多くの視聴者から声が寄せられています。その中の一つ、6歳の子どもを育てる母親からの投稿に目が留まりました。
「コロナで日本はおしまいだね」
この子どものつぶやきに驚き、困ってしまったというものです。子どもたちの「コロナの悩み」を大人はどう受け止めればいいのでしょうか。
(首都圏局/ディレクター 井手 遥)

子どもの問いにどう答えたら… 親の悩み

投稿者の真理子さん(仮名・30代)にお話を聞きました。家族で何気なくニュースを見ていたとき、6歳の娘が発した言葉に衝撃を受けたといいます。

真理子さん
「コロナの新規感染者数がどんどん増えているというニュースを見て、『もう日本は終わりだね』って。暗いというよりは、諦めたような表情で、ちょっと笑っているような感じで。こんな小さい子どもがこの先の未来に希望を持てないで絶望しているような言葉をつぶやいたことがすごくショックでした」

真理子さんが気になる娘の言動は他にもありました。去年7月、七夕の短冊を一緒に書いた時の事です。

真理子さん
「『コロナが収まりますように』って書いてたんです。『わざわざ一枚しかない短冊にそんなこと書かないでいいじゃない』って冗談交じりに言ったら、『でもコロナが終わらなかったら何もできないから、私はコロナが収まれば何でもいい』って。もっと、将来これになりたいとか、このおもちゃが欲しいとか、そういうお願いでもよかったと思うんですけど。
先日初詣に行った時にも『コロナが収まりますように』ってお願いしたと言うので、コロナが収まるっていうのが彼女の中では一番の重大事として、もう一年近く頭の中にあるのかなと思ったら、びっくりしたし、ショックでした」

子どもが口にする「不安」をどう受け止め、答えればいいのか。大人の自分にも分からない事が多い中で、子どもを安心させてあげる方法があるのか、真理子さんはずっと頭を悩ませてきたと話します。

真理子さん
『いついつになったら、こういうことができるよ』ということをはっきり言うことができたら不安は取り除けるんじゃないかと思うんですけど、私自身もそれがわからないので、プラスな話がしてあげられなくて。かといってこれ以上落ち込ませるのもいやなので、別の話にすりかえちゃいそうになる時があります。子どもに対して、どうやって明日も楽しく過ごそうっていう気持ちにさせてあげられるかっていうのを…もし何かアドバイスがあれば知りたいなと思っています」

当たり前の日常が子どもの心を支えていた

子どもの不安を大人はどう受け止めればいいのか、緊急事態宣言が出されている今も、地域の子どもたちの居場所の運営に携わっている杏林大学教授で精神保健福祉士の加藤雅江さんに話を聞きました。コロナ禍の1年、子どもたちの様子を見てきた加藤さんは、コロナの影響で「居場所」が無くなっていることが子どもの心に深刻な影響を与えているといいます。

杏林大学教授 精神保健福祉士 加藤雅江さん
「今まで当たり前に、子どもたちの周りにあったこと、学校行事や習い事、部活動などが制限されてきました。どんな小さなことでも、役割であったり、居場所であったり、子どもが自分にとって『好きだなあ』と思えることを経験する場所がないことを心配しています。
学校行事も存在意義があって、去年は卒業式もやらなかったという学校が多かったですけど、卒業式って5年生にとっては6年生を送り出して、『次は自分が最高学年だ』と認識する機会でもありましたよね。行事だけでなく、部活動も『目標に向かって頑張る』というイメージを与えてくれるものです。それらが軒並み中止になることで、自分が持っている力を発揮できる体験や、次のステップに進もうという気持ちを持つ機会がない。『自分って、何のため頑張ってるんだろう』、もっと言えば、『自分っていていいのかなあ』とか、『自分が生きてる意味ってなんだろう』と。自分を認めてあげるということが、なかなかしづらくなっている状況が、今このコロナ禍で起きていると感じます」

「居場所」続ける意味

日常が大きく変わってしまう経験をした子どもたちのために、加藤さんは東京・三鷹市で4年前から続けてきたこどもの居場所を、緊急事態宣言中も閉めずに続けてきました。これまではみんなで一緒にご飯を食べていましたが、今はお弁当の配布だけです。それでも、開き続けることにこそ意味があるのだと加藤さんは言います。

居場所作りプロジェクト だんだん・ばぁ

加藤さん
「去年の4月、学校が休校になったときに、子どもたちが行き場所を失って、でも大人たちは仕事に行かざるを得なくて、子どもだけが家に取り残された時期があったんです。あのときに、居場所というものが本当に必要だなあと思って。お弁当の配布が私たちの目的ではなく、お弁当を通して子どもたちの生活や気持ちをふだんと変わらないように、支えていきたいという思いがあります。
子どもたちって本当に困ったことがあった時、周りの大人に『助けて』とは、そうはいっても言えないと思うんですよね。ふだんから顔見知りになっておいて、コロナのことで何か心配事が起きたときに、『あ、そうだ、あそこに聞くのも手かな』っていうことで、頭に浮かんでくれるような場になったらいいなと思います。そのためにはやっぱり、ずっと開けていないと」

子どもの不安 否定せず聞いて

子どもの困りごとや不安を聞く大人の存在が重要だと加藤さんは言います。親や周囲の大人は子どもの不安をどう受け止め、答えを返せば良いのでしょうか。

加藤さん
「子どもたちが不安を伝えてきた時には、『そういう気持ちになって当たり前だよね。私たちも一緒だよ』と、不安に感じることを否定しないような周りのサポートが必要だと思います。
マイナスなことを言われたりすると、大人って、ちょっとドキッとするわけです。だけど、不安を否定してしまうと、子どもたちって、その先の言葉を飲み込んでしまうので、『どうしてそんなふうに感じたの』とか、『何のお話を聞いてそんなイメージをしたの』と話をする材料を見つけることを心掛けるといいのではないでしょうか。
例えば大好きなおじいちゃんおばあちゃんに会えないことで、すごく鬱々として、『こんな状況がいつまで続くんだろう』と子どもが口にしたときには、『今は会えないけど、何かできることはないかな』と少し視野を広げて、具体的にできること、電話したり手紙を書いたりを一緒にやってみる。その上で、『まずは夏まで会いに行くのを我慢してみよう』とか、具体的な目標を提案してみる。そこに到達したときに、例え状況が変わっていなかったとしても『この数か月頑張ったね。次、何ができるか一緒に考えよう』っていう作業を積み重ねていくことが大切かなと思います」

子どものSOS 聞き逃さないで

加藤さんが所属する日本精神保健福祉士協会では、メールでの相談事業を行っています。

去年5月の開始当初は子育てに悩む親からの相談を想定していましたが、10代、20代を中心にした若い世代からのSOSが半数以上を占めているといいます。中には、「周りに話せる人がいなくて、ここ数年間ほとんど人と話していない」とか、「親とのちょっとしたやりとりで自信をなくし、死にたくなる」といった深刻な内容の相談もあります。

加藤さん
「相談するって、ものすごくエネルギーがいることなので。私たちもそうですよね。本当にしんどくて追い詰められていたら、人に相談するなんてことはしないですよ。だけど子どもたちは勇気を持って、すごく頑張って、相談をしているわけです。それに対して、大人が思うような反応してくれなかったらやっぱり失望する。失望すると、もう話しても仕方ないなって思ってしまうんですね。なのでメール相談でも、何か困ったときに人に相談すると物事って動いてくんだなっていう体験をしてもらうことをなにより大事にしています」

取材の時に印象に残ったのは「ちゃんと聞いてもらえなかったと感じたら、子どもはもう大人に話そうとはしない」という加藤さんの強い言葉でした。いま、子どもたちの心が危機的な状況にある中で、SOSを取りこぼすことはできないという強い思いを感じました。

 

加藤さんが所属する団体の相談窓口
日本精神保健福祉士協会 「子どもと家族の相談窓口」(メールは24時間受付)
http://www.japsw.or.jp/consultation_counter/

  • 井手遥

    首都圏局

    井手遥

    2016年入局。札幌局を経て、2019年から首都圏局。性的マイノリティやシベリア抑留などを取材。

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