東日本大震災からまもなく10年。魚の魅力を多くの人に広める伝道師、ウエカツこと上田勝彦さんは、被災地・福島の復興プロジェクトにも取り組んでいます。それは地元の安全な魚のおいしさを、地元の人にあらためて知ってもらう事。今回は、サワラを味わい尽くします。
原発事故で被害を受けた福島県浪江町。3年前に一部の地域で避難指示が解除されました。
向かったのは、県内有数の漁獲量を誇っていた「請戸漁港」。
ウエカツさん
「この沖合は、いわゆる “常磐沖” と言われるところで、 “常磐もの” は日本の中でもブランド!カレイ類、スズキ、アイナメ、そういうものがものすごくおいしくなる」
請戸では、新鮮な常磐物の競りが、ようやく今年4月から始まりました。
漁協は、その日とれた全魚種を対象に、放射性物質のスクリーニング検査を行うなど、徹底した安全管理をしています。
しかし、原発事故の影響はいまだに続いていて、漁は週に2~3回の試験操業だけ。地元にいても、請戸産の魚や加工品は震災前のようには手に入りません。
この状況を何とかしようと、ウエカツさんに声をかけたのが東京工業大学の木倉宏成さん。
じつはこの2人、高校の同級生なんです。
3年前から国の復興事業に携わってきた木倉さんたち。今年から、本格的に町の産業振興に取り組んでいます。
木倉さん
「 “復興は請戸港から” という浪江町のキャッチフレーズがあった。ここに、新しい文化・新しい技術を芽生えさせなければならない」
ウエカツさん
「野菜とか魚がとれてきました。それをちゃんと買って食べてこそ、支援は完結する。『なんとなく不安で食べません』そこはなんとかしなきゃいけないと思っていた」
2人の復興プロジェクト、1回目は、浪江に戻ってきた人たちに改めて地元の魚のすばらしさを見直してもらうことです。
この日は、4年生以上の小中学生12人とその保護者が集まりました。
ウエカツさん
「請戸の海は、東京でも大変有名なところです。請戸でとれた魚は、 “常磐もの” と言って、それはそれはおいしい。ずっと受け継いできた味を忘れないためにも、おいしく食べていきましょう!さて、今日の魚は…」
この時期を代表する常磐物のひとつ、請戸産の『サワラ』を使います。
ところが…
「え~、これ無理だよ~」
ふだん、地元の魚を意識して食べることはなかったという子どもたち。
大きなサワラに悪戦苦闘。
それでも、自分で捌いてみると…
「もちもちしていて、かみ応えもある」
「けっこう甘い、魚自体が」
ウエカツさんが用意したレシピは5品。レシピはこちらをクリック
・サワラの漁師あえ
・サワラの湯煮
・サワラのあら汁
・サワラの炊かず飯
・シラスのいりあえ
ゆでて、煮て、炊いて、盛りだくさんの教室は3時間にも及びました。
そのお味は?
「あ~…うまい!!海を汚くしないように、僕たちができる限りつなげていこうと思います」
ウエカツさん
「一度途絶えたら、戻すのに何倍も、時間も、エネルギーも、努力も必要になる。だから、今しっかりつかんでおくことが大切だと思う。ぜひ、浪江を守れる大人になってもらいたい。そう祈っています」
町に行ってみると、工事中の所が多くて、浪江に戻って住んでいる人の数も、震災前の1割にも満たないそうです。まだまだ復興はこれからなのかなと感じました。
ウエカツさんは、「長い目で見るためにも、やはり子どもたちに町の魅力を伝えて、未来につなげていってほしい」と話していました。
浪江の魚については、東京工業大学 木倉研究室のホームページをご覧ください。