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第170回芥川賞受賞 九段理江さん「東京都同情塔」思いは 生成AIの未来は スタジオで語る

  • 2024年1月19日

第170回芥川賞。さいたま市出身の九段理江さんの著書「東京都同情塔」が選ばれました。都内の書店では早くも品切れのところも出てきているようです。
この作品、どのような思いを込めて書いたのか。受賞が決まった翌日(1月18日)首都圏ネットワークのスタジオにお越しいただき、井上・牛田の両キャスターがお話を伺いました。

九段理江さん出演

Q.1日経ちましたが、いまの気持ちは?

きのうからきょうにかけてたくさんの方から「今のお気持ちは?」とたくさん声をかけていただいて、お気持ちという言葉が何なのかわからなくなってきました。

Q.寝られましたか?

寝てないです。いま、ここ(スタジオ)にテレビ画面があって、そこに私が映っていて、私の本の話をしているのがなんだか信じられないです。

Q.振り返るのは初めてですか?

きのうからきょうにかけて、全然、反響というものを見る時間がなかったので「本当に世の中で起きていることなのかい?」と疑問に思いながら見てました。

九段さんの受賞作「東京都同情塔」とは

「東京都同情塔」は、「犯罪者は同情されるべき人々」という考え方から、犯罪者が快適に暮らすための収容施設となる高層タワーが新宿の公園に建てられるという未来の日本が舞台です。
タワーをデザインした建築家の女性が、過度に寛容を求める社会や生成AIが浸透した社会の言葉のあり方に違和感を覚え、悩みながらも力強く生きていく姿が描かれています。

東京・新宿の書店では、開店から1時間しか経っていないにも関わらず、九段さんの「東京都同情塔」はすでに品切れとなっていました。

ここに飛んできて買おうと思ったんですけどね。この状態で…

紀伊國屋書店 新宿本店吉野裕司 副店長
「予想以上の動きで正直びっくりしています。一昼夜というか一晩足らずで空っぽになってしまいました」

作品を通じて伝えたかったことは

Q.この作品を通して、どのようなことをいちばん伝えたかったですか。

伝えたかったことというよりは、自分で勝手に書きたかったことというのが答えになってしまいますが、いま、生成AIや人工知能というものが人間の機能の代わりを担うようになっていると思います。そういった中で、では、人間には何が残っているか、人間にしかできないことは何なんだろうということを小説を通して考えていきたい、議論するきっかけになったらいいなと思いながら小説を執筆しました。

Q.小説では一貫して身近な言葉の定義や捉え方を登場人物が自問自答するところが印象的でしたが、九段さんにとって「言葉の原点」「大切にしている理由」は何ですか。

言葉の原点。明確な原点とかきっかけは思いつかないですが、幼い時から、言葉に対しての、意識というか、不思議な性質を持ったものだなと思いながらいたので、なんか気になってしまう存在。いつも無意識に気になってしまうそういう存在です。
言葉って本当に不思議で、言葉で何ができるか、どこまで行けるのだろうとか、あとは、ポジティブな面だけではなく、言葉によって損なわれてしまうものもあると思うので、いろいろな性質を考えていきたいと思います。

生成AIを駆使した小説

九段さんは、受賞の記者会見で、作品について次のように述べていました。

「文書生成AIを駆使して書いた小説でして、全体の5%くらいは生成AIの文章をそのまま使っているところがある」

Q.言葉を大切にされているということですが、あえて生成AIを活用しているのはなぜ?と思った

この小説が、生成AIと人間がどう付き合っていくか。それを使うことで、人間の意識や価値観にどう作用してしまうかをテーマにしていますので、生成AIの文章。本文をお読みになったらわかると思いますが、どこが生成AIでどこがAIでないか、すぐにおわかりになうかと思います。いろいろな言葉を1つの小説で表現することで見えてくるものがあるかもしれないなと、そういう可能性にかけて生成AIを活用、利用しました。

Q.生成AIを取り入れることには、SNSで賛否いろいろ上がっていますが、どう受け止めていらっしゃいますか。

そうですね、議論が起こっていくことはいいと思います。何を求めるか、私は正解を書こうとは思っていなくて、考えるきっかけを小説を通して、届けられたらいいかなと思っています。

金沢の古書店でアルバイト

ところで、九段さんはかつて、金沢市内の古書店でアルバイトをしていました。店長の山崎有邦さんは、九段さんについて「ふらっと店にやってきて、『働けますか』と聞かれ、アルバイトとして採用しました。店番などを任せましたが、すごくテキパキしていて、仕事もそつが無く、助かりました」といいます。

井上アナ

画面には、九段さんがアルバイトをしていたお店が映し出されていますが、店長の山崎さんからお祝いのメッセージが届いております!

九段さん

えー!うそー!

金沢の古書店の店長 山崎有邦さん
「受賞が決まり、うれしかったです。芥川賞はスーパースターになるきっかけだと思います。
これからもマイペースにがんばって、落ち着いたら店に遊びに来てほしいです」

すぐにでも遊びに行きたいです!
いま、金沢、いろいろ落ち着かない日々をお過ごしだと思いますが、いま山崎さん聞いていらっしゃるということを想定して話していますが、いつでも呼んでください、遊びに行きます。いや、働かせていただきます。

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