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東京都議会議員補欠選挙(大田区選挙区)の勝因は?敗因は?

  • 2023年6月5日

6月4日に投開票が行われた都議会議員補欠選挙(大田区選挙区)。
前の都議会議員2人が、ことし4月の大田区長選挙に立候補したことに伴う欠員をめぐり、元議員と新人のあわせて6人が2議席を争い、共産党や立憲民主党から支援を受けた無所属の元議員と、自民党の元議員が当選し、日本維新の会と都民ファーストの会の新人らが敗れる結果となった。
都議会の各政党は結果をどう分析しているのか、取材した。
(首都圏局/都庁クラブ)

都議会議員補欠選挙の結果は

東京都議会議員大田区選挙区の補欠選挙の開票結果は、次の通りです。

森愛(無所属・元)当選 4万8719票
鈴木章浩(自民・元)当選 4万349票
細田純代(維新・新) 3万363票
奥本有里(都民・新) 2万710票
溝口晃一(無所属・新) 8829票
原忠信(諸派・新)1390票

「逆に燃えた」自民党

「自民党の底力を再認識した。コロナが明け、3年ぶりに自民党のコアな支持層に会うことができ、熱心に応援してくれた。自民党として原点を見つめ直して、次の選挙に向かっていくという覚悟みたいなものができた気がする」

自民党都連の幹部の1人は、鈴木氏の当選が決まると、そう話した。

今回の補欠選挙で、焦点の1つだったのが自民党の候補がどれだけ票を集めるかだった。
自民党都連の中には、連立政権を組み、都議会では政策協定を結んでいた公明党からの支援を得るため、候補者を推薦してもらえるよう依頼する動きもあった。しかし、推薦は出されなかった。

告示日の直前に、衆議院選挙の小選挙区の「10増10減」に伴う公明党との候補者調整で、公明党が、自民党の対応に不満があるとして東京での選挙協力を解消する方針を決めたことも要因の1つだ。
ただ鈴木陣営の関係者は「公明党は大田区選挙区ですでに2議席あり、次の都議会議員選挙では、議席を死守しなければならない。今、推薦を出して公明党支持者に『鈴木』と投票用紙に書かせることはメリットがない」などと別の要因を指摘していた。

都連幹部の1人は「逆に自民党の党員たちが燃えている。支援者の士気が下がったということはない。公明党の支持がなければ動く人も一定数いる。公明党にはしっかり寝てもらって、自民党の票で勝つ」と意気込んだ。

こうした中、選挙戦で、自民党は、萩生田政務調査会長や小倉こども政策担当大臣など東京選出の国会議員が相次いで応援に訪れ、支援を訴えた。

結果は2位での当選。
投票率が25.33%と2年前の都議会議員選挙よりも18ポイントほど低くなり、組織票を持つ候補が有利とされる状況だったが、選挙前に持っていた議席を取り戻した。
都議会自民党の幹部は「とても厳しい選挙で、公明党との選挙協力は解消している中でも結果を出せた」と胸をなで下ろした。

推薦を出さなかった公明党の都議会議員の1人は「自民党は基礎票は本来はもっとあると思うが、堅実に固めたと思う。公明党支持層の票がなくても、当選したということは、それだけ基礎票がしっかりしているということだ」と冷静に分析した。

議席を失った都民ファーストの会

小池知事が特別顧問を務める東京の地域政党、都民ファーストの会は、危機感を持っていた。

都民ファーストの会は、6年前の都議会議員選挙で55議席を獲得し、都議会第1党になったが、その後は勢力を減らし、ことし4月、党所属だった森愛氏が離党して大田区長選挙に立候補。議席数は26になっていた。

党幹部は「小池知事から一貫して言われているのは『都議会での数を減らすな』だ」と話し、減らした1議席を取り戻すために挙党態勢で補欠選挙に臨んだ

一方、選挙では、恐れていた事態が起きた。森氏の立候補だ。
党幹部によると、森氏の区長選への立候補にあたって、森氏とは「補欠選挙では党の候補者を応援する」などと約束を交わしていたという。

森氏の立候補に党幹部は「森氏は不義理だ。区長選挙を戦っていて、活動量と知名度が全く違う。さらに都民ファーストの会と勘違いされた票が乗ってしまう」と怒りを隠さなかった。
陣営は、有権者が森氏を都民ファーストの会の候補者と誤解して投票しないよう、選挙選で積極的にアピールした。

こうした中で、小池知事は、奥本氏の応援演説で「都民ファーストの会」の公認候補であることを強調した。

「都民ファーストの会の唯一の公認候補である奥本有里さんの政策をお聞きいただきましたか。私と同じより『ゆりゆり』ということで覚えていただきたい。ぜひ、都民ファーストの公認候補である素敵な候補者、奥本有里さんを、何としてでも皆さんの一票で、都議会へと送っていただきたい」

しかし、結果は4位。
党幹部は「森氏が、いまだに小池知事が応援していて、党所属だという誤解や誤認は多かったと思う。われわれも差別化するため訴えたつもりだが、活動期間も短く、有権者に浸透しきれなかった」と分析。
また、小池知事への警備が厳しくなり、有権者が演説を聴くためにその場でとどまりにくくなっている現状があるとして「小池知事の力を生かし切れなかった」と悔やんだ。

共産党と立憲民主党は野党共闘の士気高まる?

その森氏を支援した共産党と立憲民主党は、手応えを強調した。
共産党都議団の幹部は「蒲蒲線の整備、スピーキングテスト、神宮外苑再開発の3つのストップを訴えて、都政課題の争点を明確にした上で当選したことは、これらが区民や都民の大きな願いだったということだ」と述べた。

都議会立憲民主党の幹部は「支援候補が当選し、都民ファーストの会の議席を減らせたことはよかった」とした上で「森氏は、立憲民主党と共産党の支援をもらいつつ、無所属で、さらに都民ファーストの会の印象も残っている。本人の十数年の実績も追い風になり、幅広く支持をもらえる好条件がそろっていた」と分析した。

そして、今後の「大田区や候補者の個別の事情を知らない人からすれば、野党共闘の候補がトップ当選したことは、野党共闘を進めていこうという士気を高める効果があるだろう」と指摘した。

維新は落選 勢いは?

そして、もう1つの焦点が、先の統一地方選挙で党勢を拡大させた日本維新の会が、どの程度の支持を集めるかだった。
「衆議院選挙の前哨戦」として臨んだ日本維新の会。
選挙戦の中盤、馬場代表は、JR蒲田駅前で声を張り上げた。

「今の東京はお金があるからといって無尽蔵に無計画に税金を使うとやがて破綻をする。 維新の会がやってきた政治家がまず身を切る改革をやる。東京都議会の議席の削減、
 報酬カット。行財政改革をやる。こういう流れを作っておかないと、東京でも絶対に安 心ができるということにはならない。
 今回の選挙は大激戦だ。迷っている人や、他党の候補者を応援しているという人も、
 今回は1度、細田さんに票を入れてみてください。そしてもし仕事ができなければ、
 次の選挙でクビにしてください」

結果は3位。
日本維新の会の幹部は「投票率25%という低投票率で3万を超える票を集めたのは評価したいが、負けは負けだ。ただ3万票の獲得は、東京でも政党としての力をつけてきていると感じられる結果だ。都内でも一定の存在感を示せた」と評価した。

同様の見方は、ほかの党の都議会議員からも聞かれた。

「落選はしたが、維新の勢いは感じた」(自民党)

「これまでの政治とは別の何かをしてくれるのではという期待が 維新に向いているなと感じる」(共産党)

「投票率が低いのに、新人が3万票というのは侮れない数字で、勢いがあることは間違いない」(立憲民主党)

今後は

東京では来年の夏に都知事選挙、再来年には都議会議員選挙の本選が行われる見通しで、国政では衆議院の解散の時期が取り沙汰されている。
各党は、今回の有権者の投票行動など選挙結果を分析しながら、次の選挙に向けて戦略を立てていくものとみられる。

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