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コロナ5類 リモートワーク・在宅勤務から出社に回帰の動きも

  • 2023年5月15日

新型コロナでリモートワークが急速に広がりましたが、民間の信用調査会社が先週、感染症法上の位置づけが「5類」に移行されるのに合わせて全国の企業に働き方について尋ねたところ、4割近くが「コロナ前と同じ」と答え、リモートでなく出社する働き方に回帰する動きが見られることがわかりました。

原則出社に

IT企業で社員およそ1100人のGMOインターネットグループは感染が拡大した当初、リモートワークを推奨し、多い時には社員のおよそ8割が在宅勤務を行っていました。

しかし、社員間のコミュニケーションが不足することで業務のスピード感が下がったり、新入社員の教育が円滑に進まなかったりしたことなどからコロナの収束を見据えて、ことし2月から原則出社での勤務に戻しました。

現在はほとんどの社員が出社していて、管理部門では月に1回、社員全員がひとつの部屋に集まって会議を開き、業務の報告や新入社員の紹介などを行っています。

4月には新入社員が全員出席した入社式で歓談の時間が設けられ、役員と新入社員58人が直接、交流したということです。

3年前に入社の社員
「社会人として経験がなかった分、リモートワークでは何かトラブルが起きたときに1人でどうしようもできないという不安がものすごくありました。しゃべったことがあるのとないのは全然違うのでそこが出社のメリットだと思います」

GMOインターネットグループ広報チーム 新野貴史マネージャー
「直接、顔と顔を合わせてコミュニケーションをとっていくのは、非常にスピード感が早くなるので原則出社という形にしました。出社すれば業務の話や相談、ちょっとした雑談など、コミュニケーションの質が上がってくると思うので、それでモチベーションやパフォーマンスを上げて業務に生かしてもらえればいい」

調査結果 4割がコロナ前と同じ

民間の信用調査会社帝国データバンクはことし3月、全国の企業を対象に新型コロナが「5類」に移行したあとの働き方について調査を行い、1万1428社から回答を得ました。

それによりますとリモートワークの実施や業態の変化などで働き方が「コロナ前と半分以上異なる」と答えた企業は15.5%、「2割程度異なる」は22.5%で、コロナによって働き方が変化した企業は38%となりました。

一方で、「コロナ前と同じ状態」と答えた企業は39.1%で、コロナによって働き方が変わらなかったり、出社を促されるなど以前の状態に戻ったりした企業も少なくないことがわかりました。

業界別にみると「コロナ前と同じ」としたのは多い順に農林水産業、建設業、不動産業、金融業、製造業などとなっていて、サービス業が最も少なくなっています。

企業の規模でみると、従業員数が1000人を超える企業では「コロナ前と異なる」が52.9%にのぼった一方で、6人から20人の企業は34.4%などと従業員数が少なくなればなるほど働き方の変化も少なくなっています。

帝国データバンク 藤井俊情報統括部長
「資金や人員面で比較的余裕のある大企業や、リモート環境との親和性が高い情報サービス業では働き方が変わった企業が多かった一方、1人で何役も担う中小企業や現場で人が関わる業種ではオンライン環境の導入や維持が難しい面もあり、コロナ前に回帰する動きが見られる」

製造業 出社せざるを得ない

5類移行後の働き方について、およそ4割が「コロナ前と同じ」と答えた製造業では、出社せざるを得ない事情があるといいます。

東京・大田区にある社員12人のプリンター販売と部品製造を行う会社は、受注先からの依頼を受けて3Dプリンターで歯形やロボットの部品などを製造しています。

この会社では、新型コロナの感染対策として自宅から3Dプリンターを遠隔操作できる技術を独自に開発して2年前から在宅勤務を進め、多いときには社員の半数がリモートワークをする時期もありました。

しかし、できあがった製品が受注先の要望通りに仕上がっているか寸法や質感を確かめるため、結局、多くの社員が出社することを余儀なくされ、去年6月からは原則出社での勤務に戻しました。

グーテンベルク 鈴木亮介取締役
「リモートで形ができているのは確認できますが、これを検査したり手に取ってはめ合ったりしないとそれが果たしていいものか悪いものなのか判別できません。やっぱり限界がありました。このままだとモノづくりができないと思い、再び出社に戻したところ完成スピードは4倍ぐらい早くなりました。やはり、物と人が顔を突き合わせることが品質に深く関わっていることを再認識しました」

リモートワーク続ける会社も

IT企業で社員およそ1200人のディー・エヌ・エーは、新型コロナを機にリモートワークを本格的に導入し緊急事態宣言の時期は最大で社員の99%がリモートで働いていたということです。

「5類」移行後の現在はリモートワークと出社を社員が自由に選べる働き方になっていて、いまも平均して7、8割の社員がリモートワークを続けています。

中には自宅で子どもの世話をしながら仕事をする社員もいます。

先週リモートで勤務の社員
「プライベートも仕事も充実させられるのでこの働き方を継続したいです。原則出社と言われるとつらいなと思います」

会社ではリモートワークを前提におととし本社を移転し、およそ3000あった席数をおよそ5分の1の700弱に減らして、オフィスの規模を大幅に縮小しました。

さらにIT人材の確保が難しくなる中で、リモートワークは勤務場所にとらわれずに全国から優秀な人材を採用できることにもつながると期待しています。

ディー・エヌ・エー 清水琢也総務部長
「仕事のスタイルに合わせて出社かリモートワークかを選べた方が、会社としても社員にとっても良いのではないかとハイブリッドワークを決めました。リモートワークでも業績が伸びた事業もありますし、全国での人材の採用にもつながっています。この働き方が今後、会社の良い文化や働き方になっていくと思っています」

専門家「柔軟性が求められる」

労働政策に詳しい大正大学の塚崎裕子教授は企業が原則出社に戻す理由について「リモートワークでは勤務状況を管理するのが難しいことやコミュニケーションが不足がちになってしまい、社内での人的ネットワークの形成や人材育成が難しかったりするなどの課題がある」と指摘しました。

大正大学 塚崎裕子教授
「働き手の側はコロナ禍でリモートワークが身近になり、柔軟な働き方を求める人が増えてきている。企業は今後、リモートと対面のバランスを考えていくことが大事だ。社員1人1人のキャリアの具合によって変えていく柔軟性があってもいい。
例えば入社してすぐは一定期間、出社して人的ネットワークなどを作り教育をしっかり受け、その後、リモートと出社のハイブリットにしていくといった具合に取り入れるなど柔軟性が求められている」

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