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  • 2023年5月12日

保育所など保育施設での不適切な保育1316件 うち虐待122件 防ぐために何が

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全国の保育施設で園児への暴行や虐待といった「不適切な保育」が相次いだことを受けてこども家庭庁は全国調査を行い、2022年4月から12月の間に保育所では914件の「不適切な保育」が確認されたと明らかにしました。  
保育施設全体では「不適切な保育」は1316件、このうち「虐待」は122件確認されたということです。  
再発防止のために何が必要なのか、記者解説でお伝えします。

不適切な保育 保育所で去年914件 施設全体1316件

各地で相次いだ不適切な保育。こども家庭庁は全国調査を行いました。

それによりますと、去年4月から12月にかけて全国の市区町村が把握した保育所で行われた子どもの人格を尊重しない「不適切な保育」は914件で、このうち「虐待」にあたると確認したのは、90件あったとしています。

保育所以外の認定こども園、認可外保育施設などを含めた保育施設全体では「不適切な保育」は1316件、このうち「虐待」は122件確認されたということです。

保育施設の職員による虐待については、通報や公表の義務がなく、件数が公表されたのは初めてです。

一方、「不適切な保育」については、明確な定義がなく、保育施設への調査では園ごとの回答内容にばらつきがあったということです

こども家庭庁 ガイドライン公表

こうした結果を受け、こども家庭庁は、「不適切な保育」とは、「虐待などが疑われる事案」と定めるとともに、防止や対応についてのガイドラインを設け、12日公表しました。

この中では、静岡県裾野市の事案で、園や自治体の対応が遅れたことを受け、園内で虐待などが疑われる事案が発生したときは、自治体に速やかに相談することや、相談や通報を受けた自治体は迅速に対応するとともに、組織全体として情報を共有することなどを求めています。

こども家庭庁は、今後、保育施設の職員による虐待について、通報や公表を義務付けるよう児童福祉法の改正についても検討することにしています。

小倉こども政策担当相  
「虐待などはあってはならないことで、1件でも望ましくない。政府としても未然に防止するための対策を速やかに講じていきたい。  
大半の保育所では保育士が子どもの成長に真摯に寄り添って適切な保育を行っている。今後、子どもや保護者が不安を感じることなく保育所に通えるようにするとともに、保育士の皆さんが安心して保育を担えるよう対策していきたい」

各地で相次ぐ不適切保育

こども家庭庁が、不適切な保育について調査結果をまとめ、ガイドラインを示した背景には、去年、全国の保育施設で暴行や虐待などが相次いだことがあります。

静岡県裾野市の認可保育所では、去年、元保育士3人が園児の足をつかんで宙づりにするなどの虐待をしたとして、暴行の疑いで逮捕され、このうち1人が略式起訴されています。

この問題では、市が事態を把握しながら公表まで3か月かかるなど対応が遅れたことも指摘されました。

また、富山市の認定こども園では、園児の両足をつかんで体を引きずるなどの暴行をした疑いで去年12月、20代の元保育士など2人が書類送検されました。

仙台市の認可外保育施設でも、保育士が園児に下着姿のまま食事をさせたり、体をさかさまにして持ち上げたりするなどしたとして、ことし1月、市から行政指導を受けています。

保育現場「余裕持った人員配置を」

「不適切保育」につながりかねない場面に接したことがあるという保育園長に話を聞きました。

千葉県八千代市にある勝田保育園で園長を務める丸山純さんは、トイレに行きたくないと言う園児と、行ってもらいたい保育士との間で、大きな声でのやりとりになっている場面に出会ったことがあるということです。

その時は、丸山さんが園児を引き受ける形をとり、保育士から離したことで落ち着いたということです。

丸山さんは「不適切保育」はあってはならないとしたうえで、次のように話しています。

保育園園長 丸山純さん  
「子どもと1対1で対応する時はどうしても気分が高ぶってしまうことがある。その時、保育士1人に任せるのではなく、周りの保育士とお互いにフォローし合えるような関係性があれば不適切な対応になるのを未然に防げると思う。  
そのためにも今の保育士の人数の基準では1人1人の子どもの主体性を大切にした保育を行うことは難しいのではないか。保育士たちがお互いに助け合えるように余裕ある人員の配置が大切だ」

専門家「子どもに関心を」

保育学が専門の中村学園大学の那須信樹教授は、「『不適切な保育』が起こる背景には、忙しさのあまり保育士の間での会話が不足していることや研修に出かけることさえできない実態がある。保育士に時間的なゆとりを持たせるとともに、技能向上のために研修に行くことを後押しするなど支援が必要なのではないか」と指摘しました。

中村学園大学 那須信樹教授  
「保育園は保護者や子どもとの関係性の中で成り立つものなので、保護者も園の実情にもっと関心をもって接していくことが必要ではないか。また、街で子どもたちと先生が散歩をしている様子を見たらひと言かけたり温かく見守るなど、社会全体で子どもの存在に関心を寄せていくことも求められている」

今後の対策は?記者解説

井上アナ

今回の不適切保育が1300件を超えたという国の調査結果、まずはどう感じますか。

浜平記者

国がこれまで不適切保育だとして公表していた件数は340件ほどです。今回の調査は、国がかなり厳格に行いました。

その結果、その3倍以上の件数が表になったかたちです。現場を取材してきた立場からすると、それぐらいはあるのだろうと感じます。

 

こども家庭庁は、「不適切な保育」の定義を初めて示しましたね。

 

国は今回、「不適切な保育」の定義を「虐待などと疑われる事案」としました。

例えば、首をしめる、おむつを替えずに不潔なままにするなど、虐待が疑われれば「不適切な保育」ということになりました。

今回、不適切な保育は1316件で、このうち、より深刻な虐待に相当したものが122件あったということになります。

ただ、こうした把握だと、「言うことをきかないので罰を与える」などの行為は、明らかな虐待かどうか判断できないので、状況によっては、不適切な保育に含まれない可能性もあります。

 

今後はどうしたら、こうした「不適切な保育」を防げるのでしょうか。

 

解決にむけては、こうした保育所の実態把握や監査を強化するのは必要かと思います。

ただ、保育問題に詳しい「保育園を考える親の会」の普光院亜紀さんに伺うと、「不適切な保育をなくし保育の質を高めるには、時間と労力がかかる。今の国の配置基準では不十分。見直しが必要」と指摘していました。

不適切保育が起きる背景には、保育士の過度な働き方や処遇の問題があります。こうした保育所が抱える根本的な問題にもしっかり目を向ける必要があると、改めて感じます。

 

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