人手不足が課題となっている物流業界では、労働環境改善に向けた規制への対応と物流網の維持の両立を迫られていて、各社はドローンの活用に期待を寄せています。こうした中、日本郵便は操縦士が目視できない範囲で飛行させる「レベル4」という高度な飛行を国内で初めて行いました。ドローン活用の状況と実用化が急がれる背景についてまとめました。
茨城県境町では、大手フードデリバリーの会社がドローンの開発会社や町などと連携し、ドローンを使って料理などのデリバリーを行うサービスが4月5日から始まりました。
サービスは、ドローンが、人がいない場所の上空を飛行できる「レベル3」で行われ、スマートフォンのアプリなどで料理や生活用品の注文を受けると、店から運ばれてきた品物を利根川の上を飛行して、川沿いにある町内の5つの着陸場所に運び、利用者はその場所で受け取ることができるということです。
さらに高度な飛行も行われています。日本郵便は3月24日、東京・奥多摩町で「レベル4」の配送を試験的に行いました。
1キロの荷物を積んだドローンは奥多摩郵便局の屋上から勢いよく飛び立ち、20メートルの高さまで上昇しました。
そして、あらかじめ設定されたルートをおよそ5分間飛行して2キロほど離れた住宅の庭先に着陸し、地上で待ち受けていた住民が荷物を受け取りました。
レベル4の飛行は2022年12月に法律が改正され、実現に向けて、機体の認証制度や操縦士の国家資格が設けられましたが、今回の飛行が国内で初めてだということです。
日本郵便がドローン配送の実用化を急ぐ背景には、手紙やはがきなど郵便物の急速な減少があります。
2021年度の郵便物は148億通と、メールやSNSなどが普及した影響で20年前の2001年より40%あまり減少しています。
手紙やはがきは宅配便などと比べて配送料が安く、利益を出すには一定の取扱量が必要です。しかし、奥多摩郵便局では、1通の封書を届けるために4キロ程の道のりをバイクで走らせることも多いということです。
過疎地を中心に配達コストがかさんでいることに加え、追い打ちをかけているのが配達員の不足で、都市部、地方を問わず、募集をかけても十分な人員を集められない状況が続いているということです。
一方、「レベル4」では、人が行き交う場所や住宅の上空も飛行するため、本格的な実用化に向けては安全性の確保や住民の不安の払拭が欠かせません。
今回、導入された機体はコントロール不能に陥らないようGPSのアンテナを2つにしたほか、墜落しそうになった場合には、パラシュートが自動的に開く仕組みです。
さらに会社では、ドローンが飛ぶ地域で繰り返し説明会を開き、安全対策を説明するなどして住民の理解を求めてきました。
小池信也 常務
「見たことがないものが空を飛ぶということで、不信感や驚きもあると思うが、自治体や住民の理解をいただきながら広げていきたい」
人手不足が深刻化する物流業界ではドローンの活用に各社が期待を寄せています。このうち、ネット通販サイトを運営する楽天グループは、ドローンを使った配送の実証実験を各地で行っていて、2021年12月には千葉県の都市部でも試験的な配送を行いました。
この時は、東京湾に面した倉庫から非常食や医薬品を積んで東京湾の上空を飛び、31階建ての高層マンションの屋上まで運びました。
また、佐川急便は2023年1月、東京・青梅市でドラッグストアの利用者から注文された日用品や医薬品などを、ドローンで届ける実験を行っていて、2025年度中の実用化を目指しています。