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上野動物園のパンダ “シャンシャン”中国返還まで1週間 別れ惜しむファン

  • 2023年2月14日

6年前、自然交配で生まれた上野動物園のジャイアントパンダ「シャンシャン」。
繁殖の適齢期の5歳となり、所有権を持つ中国と結んだ協定に基づいて2月21日に返還されます。返還まで1週間となり、動物園には多くのファンが訪れ、最後の様子を動画や写真に収めるなどして別れを惜しんでいました。

ファンは… “かわいかった” “頑張ってね”

上野動物園のメスのジャイアントパンダ「シャンシャン」は、6年前、上野動物園では初めて自然交配で生まれ育ちました。

繁殖の適齢期の5歳となり、所有権を持つ中国と結んだ協定に基づいて2月21日に返還されます。返還まで1週間となった14日、動物園には抽せんで選ばれたおよそ2600人が次々に訪れています。

シャンシャンを見られるのはおよそ2分間で、訪れた人たちは名前を呼びかけながら手を振ったり、時間ギリギリまで後ろ歩きで動画や写真を撮ったりして別れを惜しんでいました。

14日のシャンシャンは、施設の中を歩いたり、木組みの台にのぼったり、座り込んで長い笹を折ってかじったりと愛らしい様子を見せながら過ごしていました。

都内に住む40代 女性
「元気に正面を向いてささを食べてくれていてすごくかわいかったです」

神奈川県に住む50代 女性
「最後にかわいいところを見られてよかったですありがとう。元気に過ごして頑張ってねと声をかけました」

シャンシャンの上野動物園での観覧は、2月19日が最終日となります。

パンダ専門誌 編集者の思いとは…

大手出版社が2年前から発行する「パンダ自身」。
累計およそ18万7千部のパンダ専門誌で、内容の9割はパンダファンからの写真や情報を元に作られています。

2月21日のシャンシャンの返還日には特集号が発売される予定で、表紙にはシャンシャンが手を挙げ、目線を向けている写真が選ばれました。

さらに表紙の見出しも「シャンシャン自身」とすることになり、出版を間近に控えた編集部では原稿や写真の最終確認に追われています。

編集部によりますと誌面は128ページにわたってシャンシャンの写真およそ8000枚がちりばめられ、中国に帰る理由やお母さんの『シンシン』と過ごした記録も掲載されるなどまるごと1冊シャンシャンになるということです。

創刊から編集部に所属する編集者
「ファンから集まった数百通のメッセージを読むと涙が出そうになります。シャンシャンがくれた楽しい思い出、うれしかった思い出を忘れずに中国に行ってもずっと幸せに過ごせますようにと願いを込めました」

この女性編集者は編集部に来るまでパンダのことを全く知らなかったものの2年間のシャンシャンの取材が自身の仕事の幅を広げてくれたと言います。

今後のシャンシャンについては「パンダを世界に増やしていくために頑張って」などとエールを送っていました。

創刊から編集部に所属する編集者
「お母さんになってたくさんの子どもがいるシャンシャンを取材したい。住むところも変わってしまって大変だと思いますが、パンダを世界に増やしていくための大きな役割を担っているので頑張ってほしいです」

当時の飼育責任者は…

6年前の2017年6月12日に生まれたシャンシャン。
当時の飼育責任者で現在、多摩動物公園で園長を務める渡部浩文さんは、「中国で次の命をつないでほしい」と今後に期待を寄せています。

当時の飼育責任者で現在、多摩動物公園で園長を務める渡部浩文さんは、生まれた際、産声は聞こえたものの、シャンシャンの姿をすぐに確認できず、現場は緊張感に包まれたと言います。

というのも、ジャイアントパンダの赤ちゃんは大人のおよそ1000分の1という小ささで生まれるため、親に潰されてしまうことがあるためです。

1985年に生まれた上野動物園で初めてとなる赤ちゃんは、生まれて2日後に、死んでいるのが見つかり、動物園によりますと、親が赤ちゃんを下敷きにして死んだ可能性があるということです。

“無事に育つように飼育しないといけない”

渡部さんはシャンシャンの姿が無事に確認された当時を振り返り、「かわいいというよりは育てることが大事なので無事に育つようにしっかり飼育していかなければいけないと思った」と生まれたことの安どよりも今後の飼育への責任感のほうが強かったと話しました。

その後、渡部さんら飼育スタッフは3交代制で3か月間、シャンシャンと母親のシンシンのすべての行動を1分ごとに、絶え間なく観察し続けました。

母親がシャンシャンをどの位置に抱いているか、エサを食べているのか、それとも寝ているのかなど観察するポイントは多岐にわたったということです。

当時の飼育責任者 多摩動物公園 園長 渡部浩文さん
「職員、スタッフ含めて、あの3か月の緊張感は相当なものでした。本当に、元気に育ってほしいという思いだけでした」

一方、シンシンもシャンシャンを大事に育てていたと言います。

パンダの赤ちゃんは肌が弱いため、少しのけがが原因で感染症にかかって弱ってしまい、最悪の場合、死んでしまうケースもあり、そうした肌を清潔に保つため母親が赤ちゃんをなめることがあるということです。

シャンシャンの当時の毛は白黒ではなくピンク色にもなっていて、これは母親のシンシンが念入りになめていた証拠だと言います。

こうして飼育スタッフや母親、それに多くのファンに愛されたシャンシャンが2月21日、中国へ帰ることについて、次のように話します。

渡部浩文さん
「シャンシャンはしっかり育ちました。無事に中国に戻って、環境に早く慣れて、パンダの保全のために、次の命をつないでいく役割を果たしてほしい」

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