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少子化対策 児童手当どうなる 対象や支給額は 制度 経緯 財源

  • 2023年2月8日

児童手当を中心とした少子化対策の具体化についての議論が進められています。このうち児童手当について支給の所得制限や対象年齢などに関してどんな意見が出されているのでしょうか。児童手当についてのこれまでの経緯や現在の制度、財源などについてまとめました。

児童手当の給付 現在の所得制限は

今の児童手当は、所得制限を設けた上で、中学生までの子どもがいる世帯に市区町村などから支給されます。

例えば、扶養している配偶者と子ども2人がいる4人家族の場合、世帯で最も収入が高い人の年収額の目安として、960万円以上の場合は「特例給付」*となります。
ただ、このうち、2022年10月以降は、年収1200万円以上の場合は「特例給付」も含めて支給されません。

こうした所得制限の対象は、全体で、中学生までの子どものおよそ1割、160万人程度に及んでいます。


*「特例給付」一定以上の所得がある世帯では給付に制限

児童手当の考え方と変遷

【経済的負担に着目】
児童手当は、少子化対策というよりも、子育て家庭の経済的負担に着目し現金給付を行うことで、家庭における生活の安定や、子どもの健全な育成と資質の向上を図ることを目的に1972年に始まりました。

【社会全体で支える理念】
制度が大きく変わったのは、すべての子どもの育ちを社会全体で支えるという理念から「子ども手当」創設を掲げた2009年の民主党政権の誕生がきっかけでした。
2010年4月からは、「子ども手当」として、所得制限をなくし、中学生までの子ども1人あたり月額1万3000円が支給されることになりました。

【その後の支給額や所得制限】
しかし、財源確保が課題となる中、衆参で多数派が異なるいわゆる「ねじれ国会」の影響もあって、1年半後の2011年10月から支給額がいまと同じになり、2012年4月からは名称が児童手当に戻ったほか、6月からは所得制限も復活しました。

少子化対策 関係府省会議 有識者からヒアリング

少子化対策の具体化に向けて、政府は2月7日、関係府省による会議を開き、児童手当を中心とした経済的支援の強化をテーマに有識者からヒアリングを行いました。
有識者からは、現金給付の大幅な拡充に加え、保育や教育といった現物給付などとバランスのとれた支援を求める意見が出されました。

会議で意見述べた有識者 “支援につながるのでは”

7日の政府の会議でも有識者として意見を述べた中京大学の松田茂樹教授は、政府の少子化対策は一定の評価ができるという見解を示しました。
その上で、児童手当の拡充について、政府が支給対象年齢の18歳まで引き上げも含めて具体的な検討を進めていることについては「主要な先進国では我が国よりも上の年齢まで児童手当を支給していて、子育て支援につながるのではないか」としています。

〇少子化対策の議論について
コロナ禍もあり昨年の出生数が80万人を割るなど、対策を拡充して出生数や出生率を反転させなければ次世代が安心して暮らすことが難しくなってしまう。少子化対策のうち現金給付については、必要性を認識されながらもこれまで進んでこなかったので政府の検討事項になっていることを評価したい。

〇所得制限の撤廃について
さまざまな意見があるが、少子化対策の観点からみれば、子どもを育てていない世帯から育てている世代への所得移転につながり、所得の違いに関わらず、すべての子どもを育てている世帯を応援するメッセージにつながることが期待される。
現在の所得制限の水準では、特に大都市圏では住宅価格の高騰などにより、ゆとりを持った子育てが難しくなってきている。子どもを産み育てることは我が国の社会経済や、社会保障の持続のために必要なことなので、所得水準に関わらず、子どもを持たない方が経済的に合理的な制度にしてはいけない。

困窮家庭の子どもの支援団体 “所得制限撤廃だけでは不十分”

政府が少子化対策として児童手当の拡充を議論していることについて、困窮家庭の子どもを支援する団体からは「児童手当の所得制限撤廃は必要だが、それだけでは不十分だ」としてより幅広い視点での支援の強化を求める声があがっています。経済的に厳しい家庭の子どもの学習支援や居場所づくりなどの活動を行っている認定NPO法人「キッズドア」の渡辺由美子代表に聞きました。

〇所得制限の撤廃について
所得制限の撤廃は必要でやるべきだが、それだけでは昔に戻るだけで経済支援としては不十分だ。児童手当で1番重要なのは18歳までの延長で、児童手当を対策の中心に据えるのであれば、増額なども含め大胆に変えていくことが必要だ。

〇支援のポイントは
1番の目玉になるのは高等教育の無償化だと思う。現在は大学などを卒業しても厳しい生活環境のなかで奨学金の返済が負担となり将来の結婚や出産を考えることができない若い世代も多く、こうした負担をどう減らしていくかということも重要だ。

〇少子化対策の考え方は
子どもを産む産まないはそれぞれの考え方なので尊重されるべきで、強制されるものではない。大切なのは子どもを産みたいと考えている人に安心して産んでもらうために社会がどう変わっていくか。世代別に必要な支援は違うのでそれぞれどういった対策をとっていくのか、場当たり的なものではなく、全体の設計図のなかで緻密に考えていくことが必要だ。

児童手当の財源は

児童手当の給付額は、令和5年度の予算案ベースで、総額1兆9442億円です。財源は、原則、「国」が全体の3分の2、都道府県と市区町村を合わせた「地方」が3分の1を負担します。
ただ会社員などの場合は、一部を「事業主」が負担しています。

【所得制限の撤廃】
児童手当の所得制限を撤廃する場合、試算では、1500億円程度の追加の財源が必要になります。

【対象年齢の拡大】
また、対象年齢を現在の「中学生まで」から、「高校生まで」に拡大し、月額1万円を支給すると仮定すれば、4000億円程度の追加の財源が必要になります。

【多子世帯への支給額増】
自民党少子化対策調査会の提言にあるよう、多子世帯への支給額を増やし、第2子には月額最大3万円、第3子以降は月額最大6万円支給するとすれば、数兆円規模の追加の財源が必要になるという試算もあります。

児童手当 各党の主張

児童手当について、各党の主張です。まず、与党側です。

〇自民党
自民党は、茂木幹事長が所得制限を撤廃する方向でまとめたいという意向を示し、党内の議論が始まっています。ただ、党内には野党時代に所得制限がない「子ども手当」に反対した経緯も踏まえ、撤廃に慎重な意見もあります。
このほか、児童手当の拡充をめぐっては、自民党の調査会が去年5月に、第2子以降の支給額を増額し、支給額については、世帯の所得に応じて段差を設けることを政府に提言しています。

〇公明党
公明党は所得制限の撤廃を求めるとともに、支給対象年齢を18歳までに引き上げ、支給額も増額もすべきだとしています。

 続いて野党側です。立憲民主党、日本維新の会、共産党、国民民主党、れいわ新選組の5党は、そろって所得制限の撤廃を求めています。

〇立憲民主党
立憲民主党は、支給対象年齢を高校卒業までに引き上げ、月額で子ども1人あたり一律1万5000円に増額すべきだとしています。

〇日本維新の会
日本維新の会は、児童手当に限らず、子育て支援の給付に関する所得制限は全てなくすべきだとしています。

〇共産党
共産党は、支給対象年齢を18歳までに引き上げるなど拡充すべきだとしています。

〇国民民主党
国民民主党は、支給対象年齢を18歳までに引き上げ、月額で1人あたり一律1万5000円に増額すべきだとしています。

〇れいわ新選組
れいわ新選組は、支給対象年齢を18歳までに引き上げ、月額で1人あたり一律3万円に増額すべきだとしています。

各党の主張を見ると、児童手当の拡充を求めるという方向性は一致しています。

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