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バックカントリーとは スキーやスノボ 危険と魅力 外国人にも人気

  • 2023年1月31日

29日長野県小谷村のスキー場のコース外にあたるバックカントリーで起きた雪崩で現場周辺から心肺停止の状態で見つかった男性2人の死亡が確認されました。

「バックカントリースキー」は、日本人だけでなく外国人のスキーヤーからも人気を集めています。相次ぐバックカントリーでの遭難、その危険性と安全に楽しむために何が必要なのか、専門家に聞きました。

長野 コース外で雪崩2人死亡 

29日午後2時半ごろ、長野県小谷村にある栂池高原スキー場のコース外にあたるバックカントリーで雪崩が発生し、スキーなどをしていた外国人の3つのグループのあわせて10人以上のうち、4人が巻き込まれ、このうち男性2人が意識不明になっていました。

警察は2人が取り残された現場周辺の捜索を行い、午前10時半すぎに1人を、さらに10分後にもう1人をいずれも雪の中から見つけました。

警察によりますと、2人とも男性で心肺停止の状態で見つかり、いずれも死亡が確認されたということです。警察は、雪崩に巻き込まれた外国人の男性2人とみて確認を進めています。

現場は、白馬乗鞍岳にある標高2100メートル余りの天狗原の東側の斜面だということです。
 

死亡は米スキー選手か

アメリカの主要メディアは、長野県小谷村のスキー場のコース外にあたるバックカントリーで起きた雪崩で死亡した男性2人のうち1人は、アメリカのスキー選手、カイル・スメインさんだと伝えています。

国際スキー連盟によりますと、カイル・スメイン選手は、2015年の世界選手権でハーフパイプで優勝したほか、2018年のワールドカップでもハーフパイプで優勝するなどの成績を残しました。

アメリカ代表チームはソーシャルメディアに、「きょう、私たちはすばらしい人物であり、友人であり、チームメイトを失いました。スメイン選手は、山を探索するのを愛するとともに、力強い選手でもありました」というメッセージを掲載しました。

また、スメイン選手の妻も、ソーシャルメディアにメッセージを掲載し、「私はあなたと結婚し、そして、一緒に生きてきたことに心から感謝しています」とつづっています。

バックカントリースキーとは

「バックカントリー」はスキー場の敷地外にあたり、私有地ではない誰もが利用できる山岳エリアのことで、滑走は禁止されていません。ただ、危険な箇所もあるため注意を呼びかけているスキー場もあります。

こうした手つかずの自然の中でスキーすることを「バックカントリースキー」と呼び、スキー場にはない急な傾斜やまだ誰も滑っていないふかふかの雪の上を滑ることができるため、日本人だけでなく外国人のスキーヤーからも人気を集めています。

人気を集めている理由について日本バックカントリースキーガイド協会の長井淳さんは次のように指摘しています。

長井淳さん
「スキー場のような管理されていない自然の中を自分の判断で登って、安全を確保しながら降りていくのが魅力だ。ゲレンデでは見られない景色や環境、雰囲気がある」

毎年遭難が相次ぐ

捜索の様子

一方、警察庁によりますと、毎年100人前後がバックカントリースキーで遭難しているということです。

遭難した人の数は統計を取り始めた平成27年以降は次の通りとなっています。

平成27年 114人
平成28年 104人
平成29年 142人
平成30年 140人
令和元年 164人
令和2年 95人
令和3年 94人

また、日本を訪れた外国人観光客が遭難するケースは次の通りです。

平成30年 61人
令和元年 50人
令和2年 31人

雪崩事故 メカニズムは?

相次いでいる雪崩の事故について、雪崩が起きるメカニズムに詳しい防災科学技術研究所の山口悟総括主任研究員は「現地の気温や雪の状況などから雪の中の弱い層から上が崩れる『表層雪崩』が起きたとみられる」と指摘しています。

山口研究員によりますと、地面に積もった雪がすべて滑り落ちる全層雪崩が気温が急上昇した際に起きやすいのに対し、表層雪崩は気温が低い厳冬期に起こりやすいということです。

固まりにくい性質の雪が降るなどして崩れやすい層ができ、その上に雪が積もると一気に滑り落ちることがあり、今回、雪崩が相次いだ長野県や群馬県でもここ数日の気象状況から崩れやすい雪の層が作られていた可能性があるとしています。

山口研究員は、表層雪崩の特徴について、雪に亀裂が入るなどの前兆現象がなく、規模が大きいものでは速度が時速200キロに達することがあり、気づいてからでは逃げられないとしています。

防災科学技術研究所 山口悟総括主任研究員
「人は雪に40センチ埋もれると動けなくなるので、雪崩に巻き込まれたら自力で脱出するのは難しい。バックカントリーでは雪を整備しておらず雪崩の危険性が高いので、まずは危険な斜面に近づかないことが重要だ」

危険性と安全に滑るために

日本バックカントリースキーガイド協会の長井淳さんは、天候条件や地形を調べ、楽しさより安全度を重視すべきだといいます。

日本バックカントリースキーガイド協会 長井淳さん
「スキー場のように雪崩が起きないように管理されていないので、その分のリスクはある。雪崩だけなく、木への衝突や滑落の可能性も高くなる。

吹雪で雪が多いなら雪があまり降っていないところに移動するとか、急斜面がダメだったら急斜面ではなく楽しめるところを選ぶ。天気やコンディションによって遊ぶ場所を変えることが大事だ。楽しさよりも安全度の高い山の尾根や傾斜の緩やかな場所を選ぶことが重要だ」

また、初心者や経験が浅い人については「リスクを下げる地形選択を理解している人と一緒に行動することが初心者にはいい。しかるべき資格を取ったり勉強したりしているガイドと利用することが安全だ」と話しています。

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