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オミクロン株 XBB.1.5 日本では? 感染力 ワクチン 免疫 性質は?

  • 2023年1月24日

新型コロナウイルスのオミクロン株の1つ「XBB.1.5」は、これまでの変異ウイルスで最もワクチンや感染によってできた免疫が効きにくいおそれがあるとされています。「第8波」はようやくピークを越えたようにも見えますが、また拡大することにつながるのか。「XBB.1.5」はどんな性質なのか、日本国内の検出状況や専門家の見解とあわせてまとめました。

XBB.1.5の性質は

「XBB.1.5」は、オミクロン株のうち、2022年春ごろから広がった「BA.2」の2つのタイプが組み合わさった変異ウイルス「XBB」に、さらに変異が加わっています。

「XBB.1.5」の性質についての研究も発表され始めています。東京大学医科学研究所の佐藤佳教授が主宰する研究者のグループ「G2P-Japan」は、査読を受ける前の論文として、「XBB.1.5」の特徴を再現して人工的にウイルスを作り、実験を行った結果を公表しました。

〇免疫を逃れる性質
研究グループは、ワクチンの接種後に、2022年夏以降の第7波で主流だったオミクロン株の「BA.5」に感染した人の血液を使って、「XBB.1.5」に対する免疫の反応を調べました。
その結果、ウイルスを抑える中和抗体の働きは「BA.5」に対する場合のおよそ10分の1にとどまり、免疫を逃れる性質がハッキリしたということです。

〇たんぱく質に結合する力
新型コロナウイルスが人に感染する際には、細胞の表面にある「ACE2」というたんぱく質にくっつきます。人の細胞にくっつきやすいと感染力が高まります。
「XBB.1.5」には新たに「F486P」という変異が加わっています。佐藤教授によりますと、この変異があることで、「XBB.1.5」は細胞の表面のたんぱく質に結合する力が、無いタイプの変異ウイルスと比べて4.3倍になっていたということです。

“感染力高まっているのではないか”

これまでの変異ウイルスでは「中和抗体を逃れること」と「結合力が上がること」は両立しにくかったのが、「XBB.1.5」は両立していて、感染力も高まっているのではないかとしています。
一方、感染した場合の重症度や病原性については、まだよく分かっていません。

東京大学医科学研究所 佐藤佳教授
「免疫をかいくぐる力が高まり、いわば『完成形』だった『XBB』に、さらに変異が加わることで細胞への感染力も高まり、より広がりやすくなっていると考えられる。これほど大きな変異はこれまでにほとんどなかった」

アメリカでは推計49.1%

アメリカのCDC=疾病対策センターによりますと、1月21日までの1週間に新型コロナに新たに感染した人のうち、「XBB.1.5」が検出された割合は推計で49.1%に上っています。2022年12月17日までの1週間では7.3%だったので急速な拡大となっています。

数理疫学が専門で京都大学の西浦博教授は、1月17日の厚生労働省の専門家会合で、「1人が何人に感染を広げるか」を示す実効再生産数はこれまで世界的に主流だった「BA.5」の1.47倍に上るという試算を示しました。

東京都内の検出状況

国内では、東京都が1月19日にモニタリング会議で示した資料によりますと、東京都内では「XBB.1.5」がこれまでに22件検出されているということです。1月2日までの1週間では検出される割合は0.3%で、大きく増加している状況ではありません。

また、WHO=世界保健機関の1月11日の週報によりますと、年末の1週間では「XBB」系統全体で世界各国から報告される新型コロナウイルスのうちの8.36%となっています。

感染の再拡大につながるのか

海外の感染状況に詳しい東京医科大学の濱田篤郎特任教授は、今後、日本でも徐々に「XBB.1.5」への置き換わりが進む可能性は十分あるとみています。

〇XBB.1.5への置き換わり
アメリカでは感染者数が増えているというわけではなく、『XBB.1.5』が検出される割合が増えているという状況だ。最初はニューヨーク州など東部で多かったのが、西部にも広がってきている。拡大する速度はそれほど速くないようだ。広がっていることは確かなので、時間はかかるかもしれないが、ヨーロッパや日本でも『XBB.1.5』に置き換わっていくことは十分に予想される。置き換わりが進むことで感染者数が急激に増えないか、アメリカの様子も含めて、今後も様子を見ていかないといけない。

〇感染状況への影響
日本では第8波がピークアウトしてきているという見方が強くなってきているが、1日あたり数万人の感染者が出る状態は続くだろう。『XBB.1.5』が本格的に入ってくると『第8波』が長引いたり、いったん感染者数が減ったあとで『第9波』になったりする可能性はある。海外の状況を踏まえると、それほど大きな波にはならないのではないかと思われるが、減少傾向だった感染者数が再び増えることは、ある程度、予想しておいたほうがいいと思う。
中和抗体があまり効かないようだが、ワクチンがまったく効かないというわけではない。オミクロン株対応ワクチンを接種して、免疫を高めておくことが大切だ。重症化を防ぐためにも、追加接種をまだ受けていない人は早めに接種してほしい。

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