実質賃金マイナス 物価高いつまで 食費補助の企業 手当ではない理由は

  • 2023年1月1日

2022年11月の消費者物価指数の上昇率は、1981年12月以来の水準となりましたが、2023年も引き続き家計の負担が増えるとみられます。物価高で企業のなかには手当の支給ではなく食費の補助で従業員の生活を支えるようという動きもあります。どんな理由があるのでしょうか。物価高の今後の見通しについての専門家の見方とあわせてまとめました。

物価高…実質賃金は7か月連続でマイナス

2022年10月の実質賃金は、確報値で2021年10月を2.9%下回り、7か月連続でマイナスとなっています。実質賃金のマイナスが続くと消費マインドが冷え込み個人消費などへの悪影響が懸念され、物価の上昇を上回る賃上げを実現して経済の好循環につなげることができるのかが課題となっています。

賃上げを前倒しして若手社員を支援 人材への投資

2023年も食料品などの値上げが相次ぎ、家計の負担が増えるとみられるなか、賃上げの実施を予定より早めて社員の生活を支えようという動きも出ています。

大阪市に本社がある社員800人余りの「岩井コスモ証券」は、物価上昇に苦しむ若手の社員を支援しようと賃上げを予定より半年早く1月に行うことになりました。

対象は20代から30代前半までの社員およそ180人でベースアップを行い毎月の基本給を一律に1.5%引き上げます。また、営業職の社員およそ280人には基本給の1.1%にあたる手当を来月から毎月、新たに支給することにしています。

岩井コスモ証券 沖津嘉昭会長
「物価高でとくに苦しんでいるのは若手の社員だと思います。若手社員は会社の将来を担う大事な人材で、物価高で躍動感がなくなり活性化しないということは一番怖いことです。賃上げを前倒しで行うことである程度の負担は増えますが人材への投資と考えていますしその分の利益は上げることはできると考えています」

食費補助 企業と従業員が折半

企業の間では食費を補助することで従業員の暮らしをサポートしようという動きが広がっています。

東京・千代田区のIT企業では従業員36人のうち希望した29人の従業員に飲食店やコンビニなどで使える専用のカードを配布しました。

都内の企業が提供する「チケットレストラン」と呼ばれるサービスで、毎月、最大7560円分が電子マネーでチャージされ、食べ物や飲み物を買うことができます。
チャージされる金額は従業員と企業が折半で負担し、企業が従業員の食費として最大で3780円分を補助する形です。

検討したインフレ手当の現金支給ではない理由

所得税に関する国の基本通達では企業が従業員の食費を補助する場合、会社の負担額が毎月、税抜き3500円以下で、従業員が支払金額の半分以上を負担していれば非課税となるため、このサービスを利用すると非課税扱いとなります。

サービスを導入した会社では、インフレ手当の現金給付も検討しましたが、このサービスを使えば、課税の対象にならない分、従業員により効率的に還元できるとして、導入を決めたということです。

「エデンレッドジャパン」(サービスを提供) 天野総太郎社長
「基本給を引き上げるベースアップをなかなか決断できない企業も多いが、物価の上昇に従業員が苦しんでいるのを見て何とかしたいという思いが背景にあると感じている。従業員を支援しようという動きは今後も広がると思う」

物価の上昇はいつまで続くのか 必要な対策は

11月の消費者物価指数の上昇率が40年11か月ぶりの水準となったことを受けて今後の物価の見通しなどについて三菱UFJリサーチ&コンサルティング小林真一郎主席研究員に聞きました。

〇今回の物価高の特徴
10月からの全国旅行支援の実施による物価の押し下げ効果がなければ4%程度の伸びになったとみている。
食料品や電気料金などのエネルギーといった身近なものの価格がとくに上がっている。消費者は数字以上に物価の上昇を感じているのではないか。

〇物価上昇はいつまで
年明け以降は政府の物価高対策の効果などで伸び率はいったん縮小する可能性はあるが、物価が低下していくということにはならないと思う。2023年4月から電力料金が大幅に値上げされる可能性があるため、当面は物価の上昇圧力が強い状態が続くのではないか。

〇物価高対策は。
物価の上昇が続く中で、個人消費を冷え込まないために何が必要かというと、やはり賃金の上昇だ。年明けの春闘の動向、この行方が来年の個人消費、さらには来年の日本経済全体の動きを大きく左右するポイントになるだろう。賃上げを実施することが、まわりまわって景気を良くする、自社の業績も良くするにつながるという面もあるので企業は何としても踏ん張って賃上げを前向きに検討してほしい。人件費をコストと考えるのではなく人材に対する投資だと前向きに捉えることで企業としても生産性、収益力を高めることにつながる。

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