1. NHK
  2. 首都圏ナビ
  3. もっとニュース
  4. 首都高速道路 開通60年 大規模プロジェクト始まる その工夫は?

首都高速道路 開通60年 大規模プロジェクト始まる その工夫は?

  • 2022年12月21日

首都圏の交通の大動脈、首都高速道路は最初の区間が開通してから20日で60年です。

都心部の道路整備は一区切りした一方、既存の路線の老朽化が深刻さを増していて、道路や橋をまるごと造り替える大規模なプロジェクトが始まっています。

その工事を取材すると、都心部をつなぎ交通量が多い首都高ならではの工夫が行われていました。

首都高60年 深刻な老朽化

首都高速道路は1962年、最初の区間の京橋・芝浦間の4.5キロが開通してから20日で60年となります。

首都圏の交通の大動脈として時代とともに路線が拡大してきましたが、2015年には中央環状線がすべて開通して、都心部の整備は区切りを迎えました。

こうした中、直面しているのが既存の路線の深刻な老朽化です。
総延長327キロのうち建設から50年以上が経過した区間は3割にあたる97キロにのぼっています。

都心部に整備された首都高は、多くの路線が用地買収の手間を省こうと川や道路の上や地下などに建設されたため、橋やトンネルなどの構造物が多いの特徴で損傷が激しくなっています。

「まるごと造り替える」大規模プロジェクト

首都高速道路会社は、2014年から特に損傷が激しい5か所で道路や橋をまるごと造り替える大規模なプロジェクトを進めています。

工事が計画されているのは、次の通りです。

1号羽田線 東品川~鮫洲の区間
1号羽田線 東京・大田区と川崎市を結ぶ高速大師橋
3号渋谷線 池尻・三軒茶屋出入り口付近
都心環状線 竹橋ジャンクションと江戸橋ジャンクションの区間
都心環状線 銀座・京橋出入口付近

道路や建物がひしめく都心部では工事のスペースが少なく、さまざまな工夫が行われています。

高速大師橋 架け替え進む

このうち多摩川にかかる1号羽田線の高速大師橋は、開通から50年以上が経過しこれまでに1200か所以上の損傷が確認されています。

工事にあたっての最大の課題が、1日8万台もの車が通るこの橋を通行止めにする期間を、いかに短縮できるかでした。

このため行われているのが、短時間で新旧の橋を架け替えるための工夫です。
現在、利用中の橋の車は通行させたまま、古い橋のすぐ隣で、新しい橋を建設する工事や川の中の5か所にレールを設置する工事が進められています。

そして、来年5月下旬にはレールを使って古い橋を上流側にスライドさせて撤去。今ある橋の場所に新しい橋をスライドして架け替える予定です。

通行止めの期間は2週間とする計画で、一から橋を造り替える場合、年単位の時間がかかるとしているのと比べると、大幅な短縮につながるということです。

橋の重量はおよそ4000トンと東京タワーに匹敵する重さで、これだけの規模の橋を入れ替える工事は過去に例が見つからないということです。

首都高速道路更新・建設局 野網孝之事業推進部長
「橋のスライドによって短期間での掛け替えが可能になったが、期間中は周辺で通常以上の混雑が予想されるため、並行する湾岸線の利用など混雑緩和へのご協力もお願いしたい」

「日本橋に青空を」3200億円の工事

また、注目されているのが、東京・中央区の日本橋の上を覆うようにかかる高架部分を地下に移設する計画です。

具体的には、JR東京駅の北側にある新常盤橋交差点付近と江戸橋ジャンクション付近の間の1.1キロの区間を地下に移すことが決まっています。

この工事は、老朽化の対策に加え、国の重要文化財の日本橋の上空に青空を取り戻そうと進められています。

ただ、膨大な費用がかかる見込みで、総事業費はおよそ3200億円にのぼり、首都高速道路会社に加え、東京都や周辺で再開発を計画している民間の事業者も負担するということです。さらにすべての工事が完了するのは、2040年になる予定です。

今後は…

日本橋の工事も含め、首都高で現在計画している大規模な更新工事は2040年にすべて完了する見込みです。

ただ、そのほかのトンネルや橋などについても老朽化が進んでいくため、工事の必要性の検討が進められています。

特に中央環状線より西側の区間は渋滞が深刻で、将来の大規模工事に備えて計画的に渋滞の緩和策を進めていく必要性も指摘されています。

また現在の大規模な更新工事は、通行料金の無料化の時期を15年延長して徴収を続けることで財源を確保していますが、さらに大規模な工事を行う際にどのように財源を確保していくのかも今後の課題となります。

首都高速道路更新・建設局 野網孝之事業推進部長
「構造や立地によっては点検が困難な箇所もあり、ドローンなどの新技術を積極的に活用し日々の維持管理の高度化に取り組んでいる。工事の実施に際しては交通への影響を最小限にする工夫や、周辺のまちづくりとも連携していきたい」

ページトップに戻る