ことしも残すところあとわずかとなりましたが、この時期にピークを迎えるのがふるさと納税の申し込みです。好きな自治体に寄付すると所得税と住民税の一部が控除されるふるさと納税。
ことし分の期限は12月31日となっています。
特産品などの返礼品を楽しみに寄付先を選ぶという人も多いと思いますが、ことしは返礼品選びのトレンドにも変化が出ています。背景にあるのは物価上昇です。
ふるさと納税は個人が好きな自治体に寄付すると所得税と住民税の一部が控除される制度で、特産品などの返礼品も受け取ることができます。
12月31日がことし分の期限で、例年年末にピークを迎えます。
仲介サイト大手、「ふるさとチョイス」の運営会社によりますと、物価上昇を背景に、ことしはふだん使いの食材や日用品を返礼品とした寄付が伸びているということです。
ことしの11月までの寄付の件数をみると、ことしの春に大きく値上がりした「たまねぎ」が2倍、燃料費の高騰などで価格が上昇している「さけ・サーモン」が1.3倍、去年以降、繰り返し値上げが行われている食用油が1.3倍などとなっています。(いずれも去年1~11月比)
月ごとでは、大手メーカーが年明けの値上げを予定しているトイレットペーパーの11月の寄付件数が、前の年の同じ月に比べて2.8倍となっています。
このほか1万円未満の寄付の件数が増えていて、寄付額5000円の返礼品ではことし11月までにパスタが2.3倍、牛肉の切り落としが2.2倍、卵が1.4倍(いずれも去年1~11月比)などとなっています。
物価上昇で家計が影響を受ける中、1度の寄付金額を抑えたいというニーズも増えているとみられています。
別の仲介サイト大手「ふるなび」の運営会社も、日用品などの返礼品を求める寄付が増えているとしています。
また、返礼品自体の価格が上昇していることを受けて、寄付の金額を引き上げる自治体も出てきているということです。
市内に製紙工場がある埼玉県川口市では、トイレットペーパーの12ロール8セット分を寄付金1万円の返礼品としていますが、ことし11月末までの申込件数は427件と、去年の同じ時期の3倍に上っています。(去年1~11月 139件)
ふるさと納税仲介サイトの運営会社によりますと、大手メーカーが年明けの値上げを発表していることが影響しているとみられています。
川口市税制課 須江明香 課長
「都市部の地域なので、ふるさと納税の申し込みは例年少ないのですが、ことしは予想以上に伸びていて驚いています」
こうした状況を受け、市内の製紙工場ではフル稼働の状況が続いています。
この工場では現在、返礼品として人気になっている色つきのトイレットペーパーの生産を増やしているということです。
鶴見製紙営業二課 星光亮 課長
「しっかりと対応できるように体制を強化して、年末に向けた駆け込みの受注を楽しみにしています」
返礼品の値上がりを受けて、寄付の金額を引き上げた自治体もあります。
千葉県勝浦市では、市内の水産加工場で切り分けた銀ざけのうち、色が薄いものや形が不ぞろいなものを返礼品としていて、ことし7月には、1万2000円分の寄付に対して2.8キロ分を送っていました。
しかし、提供元の水産会社では餌代や輸送費の上昇などを背景に仕入れ価格が去年より3割ほど上がっていて市と提供元で話し合った結果、ことし8月に寄付金額を1万5000円に引き上げました。
ふるさと納税の返礼品は、自治体の調達にかかる費用を寄付金額の3割以下にするように求められているため、物価の影響も受けるということです。
勝浦市企画課 高橋吉造 課長
「物価高や原油高、円安などの理由で商品の値段が高くなっている。返礼品の業者はかなり努力しているが、仕入れ価格が高騰しているのでしかたない」
ふるさと納税に関する情報サイトを運営している飛田啓介さんは、ことしの傾向について、「日用品やふだん自宅で消費する食材の需要が伸びている。ふるさと納税の返礼品を消費することで、ふだんの買い物を減らそうという節約意識が強まっている」としたうえで、「返礼品の人気がぜいたく品から日用品などに移ることは想定していたが、ここまで大きな変化が短期間に起きていることは予想外だ」と話しています。
今後の見通しについては、次のように話しています。
ふるさと納税 情報サイト運営 飛田啓介さん
「物価高の影響で、同じ返礼品に対して必要な寄付金額は上昇する傾向にある。ただ小売店などに比べれば金額の変動は緩やかで、寄付金額が据え置きのままになっているところもある。そうしたお得感のある自治体を選ぶのもひとつの手だ」