子どもたちの給食、新型コロナ対策の基本的対処方針で「黙食」の記述がなくなったことをうけ、文部科学省は給食の時の過ごし方について、適切な対策を行えば会話は可能だとする通知を都道府県の教育委員会などに出しました。
通知の内容や、学校現場の受け止め、それに専門家の話などをまとめました。
こちらは豊島区内の小学校です。
3年近く前から、給食の時間中、会話を控えてきました。
4年生の教室では、給食の時間になると児童たちが横並びにならないよう、机を互い違いに移動させ、配膳を終えると黙って給食を食べていました。
20分ほどで食べ終わると再びマスクをつけて食器を片づけていました。
政府はこれまで、新型コロナ対策の基本的対処方針で「飲食はなるべく少人数で黙食を基本とする」などと明記していましたが、11月25日の変更でこの記述が削除されました。
これを受け、文部科学省は29日給食の時の過ごし方などについての通知を全国の教育委員会などに出しました。
通知では、基本的対処方針の変更について説明するとともに、文部科学省のマニュアルでも必ずしも「黙食」を求めていないことを改めて伝えています。
そのうえで、「座席配置の工夫や適切な換気の確保などの措置を講じた上で、給食の時間において、児童生徒などの間で会話を行うことも可能」などとして、地域の実情に応じた取り組みを検討するように求めています。
適切な対策を行えば会話は可能とされたことに対して、子どもや学校現場では。
1年生の時はみんなで話しながら食べていたので黙食してくださいと言われた時は戸惑いました。今は慣れましたが、話しながら食べるのは楽しみです。
好きな漫画の話をしながら食べたいと思います。でも、マスクをせず話をするのは感染したり感染させたりするかもしれないので少し不安です。
豊島区立仰高小学校 稲垣昌弘校長
「3年近く黙食を徹底してきたので、子どもたちの中には話しながら食べることに抵抗を感じる子もいると思います。感染者も再び増えている状況なので、まずは小声で会話することから始めて子どもたちの様子をみていきたい」
学校での新型コロナ対策をめぐっては、「継続した対策が必要だ」という声がある一方、「黙食やマスクなどが子どもたちのストレスやコミュニケーション不足の一因になっている」という声もあり、意見が分かれています。
子どものメンタルヘルスに詳しい専門家は、今回の文部科学省の通知について、次のように指摘しました。
中央大人文科学研究所 高橋聡美客員研究員
「コロナ禍で子どもたちのメンタルヘルスが悪化しているというさまざまなデータが出ている。学校で子どもどうしが会話できる時間は給食や休み時間、登下校など意外と短いが、毎日の給食でいろんな子どもたちと話す時間が増えれば友人関係の改善も見込まれ、社会的・心理的な発達にもつながる。
大人たちもマスクを外せない状況のなか、いきなりグループに分かれて真正面でおしゃべりしながら給食するような状況にはならないと思う。まずは黒板の方を向いたままおしゃべりすることを認めるなど、徐々に元のスタイルに戻していくべきではないか」
また、周囲の理解も重要だとして「コロナ対策を急に緩和すると、不安になる子どもや保護者もいる。保護者の心配を受け止めつつ学校としての方針を示し、心配な人は気軽に問い合わせできるようなコミュニケーションをとることが重要だ」と話しています。