「ついに牛乳も」「粉ミルクの値上げは痛い」
民間信用調査会社によりますと11月に値上げする800品目のうち「牛乳・乳製品」は318品目あったということです。家計への影響を心配する声があがる一方で、乳業メーカーは、生産コストの増加は企業努力の限界を超えていると訴えています。牛乳や乳製品の値上げの詳細やその理由、生乳の需給見通しなどについてまとめました。
11月もまた、暮らしに欠かせない商品の値上げが相次いでいます。消費者からは生活への影響を心配する声が聞かれます。
牛乳の値上がりは悩ましいです。少しでも飲む量を減らします。
子育て世帯としては、粉ミルクと牛乳は据え置きで願いたい。
粉ミルクまで値上げなのか。子育てに厳しい国だな。
東京・葛飾区に住む岡田乃梨子さんは、生後5か月になる双子の兄弟の授乳のため、粉ミルクを使っています。3か月ほどの間に使用した粉ミルクは30缶近くにのぼり、1か月の粉ミルク代は1万5000円ほどに達しています。
粉ミルクなどの値上げが家計にどう影響するか不安に感じているといいます。
岡田さん
「粉ミルクは子どもたちにとってのご飯で、削ることはどうしてもできないので、値上がりはしんどいです。1つ1つの値上がりは小さくても、量が多くなると家計への影響も大きくなるので大打撃となりかなり厳しいです」
〇明治
あわせて115の商品を値上げします。このうち牛乳や乳飲料などは出荷価格で2.8%から5.5%、また、希望小売価格でヨーグルトが3.6%から6.3%、プロテイン飲料が2%から6.5%、乳幼児用の粉ミルクが7.4%から7.5%、それぞれ引き上げます。
〇森永乳業
牛乳やヨーグルトなどあわせて80の商品について値上げします。引き上げ幅は希望小売価格や出荷価格で3.6%から10.2%になるとしています。
〇雪印メグミルク
牛乳や清涼飲料、それにヨーグルトなどあわせて67の商品について値上げします。引き上げ幅は店頭で販売する商品が希望小売価格で4%から12.5%、宅配の商品が出荷価格で5.3%から8.3%になるということです。
民間の信用調査会社、「帝国データバンク」は10月末時点で国内の主な食品や飲料メーカー、105社に調査を行い、値上げの動きをまとめました。
それによりますと、今月の値上げは833品目となり、牛乳やヨーグルト、乳幼児向けの粉ミルクなどの「牛乳・乳製品」が318品目となっているということです。
牛乳の値上げの背景にあるのが酪農家の厳しい経営状況です。酪農家の苦境を背景に、ことし7月、関東地方を中心に生乳を販売する生産者団体と大手乳業メーカー3社は、生乳の価格を11月の出荷分から1キロあたり10円値上げすることで合意しています。
茨城県小美玉市でおよそ230頭の乳牛を飼育する宮澤智浩さんは、牛乳の原料となる生乳を1日およそ5トン、県内の生産者団体を通じて乳業メーカーなどに出荷しています。
エサとなる牧草やトウモロコシなどはおよそ90%を輸入しているため、ウクライナ情勢や急速な円安の影響でエサ代が高騰し、1頭あたり1日2300円と、これまでのおよそ1.5倍になっているということです。
宮澤さんの出荷する生乳も11月から値上げになりますが、それでも生産コストが上昇した分の3分の1程度しか補えず、厳しい経営状況が続くとしています。
宮澤さん
「為替の状況にもよりますが、30円くらいの値上げをしていただかないと、酪農家はかなり厳しいです」
茨城県石岡市にある乳業メーカーも、現在の生産コストの増加は、企業努力で抑えられる限界を超えていると訴えています。
このメーカーでは、牛乳やヨーグルトなど9種類の商品を製造していますが、11月の出荷分からすべての商品を値上げすることになりました。
理由についてメーカーは、生乳の価格が引き上げられたことに加え、ヨーグルトの容器や牛乳のパックといった包装に使う資材の価格が上昇しているためとしています。
茨城乳業 社長室 浜田慎一室長
「企業努力で抑えられるコストは抑えて、それでもかなわないものをお願いする形にしています。消費者の皆さまには大変心苦しいですが、この危機的な状況をなんとかご理解いただきたい」
値上げによって、牛乳や乳製品の消費の冷え込みが懸念されていることから、飲料メーカーの中には牛乳を使った新商品を発売し、消費を後押ししようとする動きが出ています。
アサヒ飲料はJA全農と共同で、主力の「カルピス」の原料に国産の脱脂粉乳のほか、牛乳を加えた新商品の販売を1日から始めました。JA全農は、ほかのメーカーとも牛乳を使った飲料や菓子などの開発を進めているということです。
JA全農 山田晋也さん
「酪農家は懸命に作っているが、値段が上がり消費が低迷することを懸念している。今後も企業とのコラボを通じて消費拡大を促したい」
牛乳や乳製品の業界団体である「Jミルク」は、9月30日に会見を開き、原料となる生乳の需給見通しを発表しました。
それによりますと、今年度(2022年度)の生乳の生産量は、前の年度より0.5%増える一方で、牛乳などの供給量は、新型コロナによる外食需要の低迷や値上げなどの影響で、2.6%減少する見込みだとしています。
生乳は、バターや脱脂粉乳などの生産にも使われていますが、値上げによる牛乳の需要の落ち込みも予想され、今年度もあまる可能性があるとしています。
Jミルク 内橋政敏専務理事(9月30日)
「最大限、廃棄という事態にならないよう、価格改定の影響や生産状況を注視したい」