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太陽光パネル義務化へのリスクは?疑問を東京都の担当者に聞いた

都庁Q&A
  • 2022年10月26日

東京都が3年後の2025年4月の施行に向け準備を進めている全国初の「太陽光パネルの設置義務化の条例」。
2030年までに都内の温室効果ガスの排出量の半減に向けた、小池知事の肝いりの政策の1つです。
ただ都民の受け止めもさまざま。ネット上には、制度がどんなものか、設置したあとのリスクはどうなるかなど疑問が次々と投稿されました。
そこで、こうした疑問を、都の担当者にぶつけてみました。

太陽光パネル設置義務化 ポイントは?

条例のポイントは次の通りです。

・対象は大手住宅メーカー。新築住宅への設置が義務づけられる。
・メーカーは年間の施工計画などを基に発電容量の目標を設定。達成状況を都に報告する。
・都は設置費用の補助拡充と維持費用の支援を検討。12月の都議会定例会に条例の改正案を提出し、条例改正にあわせて具体的な支援内容を公表する方針。
・都は、設置費用が100万円程度の場合、発電量の4割は自家消費、6割は電力会社に売ることで、10年程度で費用分を回収できると想定。

太陽光パネル設置義務化の疑問

この制度への疑問について、東京都環境局気候変動対策部の担当者が回答しました。

何kW分の太陽光パネルを義務化するのか?

A.東京都環境局気候変動対策部
この制度は、住宅メーカーに対して、供給する住宅に太陽光発電設備を設置した総量で目標の達成を目指すもので、住宅1棟ごと、施主ごとに義務が課されるわけではありません。

 
東京は年間降水量が多いけど、大丈夫か?

A.東京都
屋根に4kWの太陽光パネルを設置した場合、一般家庭の平均年間電力消費量の8割程度の発電量に相当します。

算出の根拠
設置容量1kWあたりのシステム年間発電量を約1000kWhと仮定。
4kWのパネル設置で、年間4000kWhの発電量。
一般家庭の平均年間電力消費量は4573kWh。
(太陽光発電協会より)

ビルの隣の日陰の土地にも設置するのか?

A.東京都
義務の対象となる住宅供給事業者が、どの建物にパネルを設置するかについては、日照などの立地条件や屋根の大きさなど個々の住宅の形状などを踏まえて判断することになります。なお、屋根の面積が20平方メートル未満の住宅などについては、太陽光パネルの設置対象から除外することが可能です。

太陽光パネルは雹(ひょう)で割れるのではないか?

A.東京都
通常の大きさであれば割れることはありません。JIS規格で太陽光パネルのガラス面は、ひょうを想定し、2.5センチの粒を毎秒23メートルの速度で当て、耐えうることが条件として定められています。
ただし、大粒のひょうに集中的に打ちつけられるなど、想定以上の負荷がかかった場合は、破損やひび割れなどが生じる可能性も考えられます。

台風で被害が出るのでは?大雨で水没すると感電するのでは?

A.東京都
JIS規格では風速に換算すると秒速62メートルに耐えうる設計となっています。太陽光発電システムが水没・浸水した場合の感電による事故などの事例はありません。接近・接触すると感電するおそれもあることから、水没・浸水した場合には太陽光発電システムや電気設備に十分な知見を持つ専門家へ依頼することが必要です。

火災のとき、消火が困難になるのではないか?

A.東京都
太陽光パネルが設置されている住宅などの火災でも、水による消火は可能です。
消防隊員が、消火活動で直接水をかける場合は、安全確保の観点から、噴霧状の放水や放水距離の確保が必要で、状況に応じて絶縁性の高い防護衣・手袋・長靴などを着用しています。さらに、鎮火後、必要に応じて太陽光パネルを消防活動用の遮光シートで覆うことで、再出火の防止を図っています。

パネルの処分が大変。処理まで面倒を見てくれるのか?

A.東京都
支援策の考え方として「設置時からアフターフォローまでの支援を推進する」としていますが、具体的な支援内容は、検討中です。
近年、将来の大量廃棄を見込み、首都圏でも、さまざまなリサイクル施設が稼働し、事業用太陽光発電設備の処理がすでに行われています。都は、解体業者やリサイクル業者、メンテナンス業者などで構成する協議会をことし9月に立ち上げ、既存の事業用ルートを活用することで、住宅用太陽光発電設備のリサイクルルートの確立に取り組んでいきます。
廃棄する際は、設置時の販売店や施工店、太陽光パネルを取り扱うメーカーの相談窓口にご相談ください。

メンテナンスも補助するのか?

A.東京都
修理費用は、事業者が加入する保険などからまかなわれます。新築から10年間、住宅の構造と防水の欠陥に関する修理などが必要になった場合、住宅供給事業者が修理を行います。新築工事の請負契約に含めて設置された太陽光パネルや、新築の分譲住宅の購入時にあらかじめ設置された太陽光パネルについては保証の対象となります。

太陽光パネルを屋根に設置すると防水効果が落ちると聞いたことがある。

A.東京都
太陽光パネルを設置する際、水の侵入を防ぐ屋根の防水層を破損させないような設置の仕方をしなければなりません。パネル設置の際には、太陽光発電協会が認めた十分な設置技能を持つ事業者にパネルの設置をしてもらうことが必要です。

夏の昼間に不必要に発電しすぎて送電線が壊れるのでは?

A.東京都
壊れません。一般的な住宅に設置される太陽光発電の容量は4kW程度とみています。
経済産業省は、東京電力管内では、発電容量が10kW未満の太陽光発電設備のある住宅は出力抑制の対象外としており、4kW程度では送電線に影響はないとしています。
自家消費して余った電力は売電できるほか、蓄電池にためておくことで曇りの日や夜間に利用することができます。

疑問への回答を取材して

投稿された疑問への回答を取材すると、思った以上に都はさまざまな状況を想定して対応策などを検討していると感じました。
ただ、とりわけ災害時には、想定を超える事態が起きることも考えられます。

今回の制度の意義について東京都の小池知事は「都全体で二酸化炭素の排出の7割が建物由来ということだ。戸建ての建替えなどを考えると、40年、50年先の二酸化炭素の排出を決定づけていくので、今まさに行っていくことが重要だ。住宅に屋根がついているのが当たり前のように、その屋根が発電するのも当たり前という機運を醸成していく」と述べています。

スカイツリーから東京の町並みを見下ろすと、太陽光パネルがずらりと並ぶ…。
制度への疑問が解消していけば、そんな光景が広がることになるのかもしれません。

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