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消費者物価指数が上昇 円安で家計負担は年8.6万円増加の試算も

  • 2022年10月21日

家庭で消費するモノやサービスの値動きをみる9月の消費者物価指数は、天候による変動が大きい生鮮食品を除いた指数が、去年の同じ月を3%上回りました。
3%の上昇率は8年ぶり、消費税率引き上げの影響を除けば1991年8月以来、31年1か月ぶりの水準となります。
今後の家計の影響はどうなっていくのか?
円相場が1ドル=150円程度の状況が続いた場合、家計への負担が年間で平均8万6000円あまり増えることが民間のシンクタンクの試算でわかりました。

消費者物価指数上昇 約31年ぶり水準

総務省によりますと9月の消費者物価指数は生鮮食品を除いた指数が、去年9月の99. 8から102.9に上昇しました。

主な要因は、原材料価格の上昇に急速な円安の影響が重なった食料品の値上がりで、「生鮮食品を除く食料」は去年の同じ月を4.6%上回り、1981年8月以来、41年1か月ぶりの水準となっています。

消費者物価指数が3%の上昇率になったことについて、東京都内の商店街では物価の上昇で生活が苦しくなっていると訴える声が相次ぎました。
 

女性(69)

きょうも衣類が高くなっているなと感じ、買うのを諦めました。それでも、食費などは抑えるのが難しいので生活は苦しいです。

男性(84)

食費が上がっているから1か月に1回、まとめて買い物をして節約するようにしています。余計なものは買えませんが、しかたがないと諦めています。

大学生(18)

野菜や洋服の値段が上がって困っています。昼は外食せずにお弁当を作って節約するようにしています。

具体的に何が上がった?

具体的には去年の同じ月と比べると、次の通りとなっています。

品目 去年同月比
食用油 37.6%↑
食パン 14.6%↑
からあげ 11.3%↑
焼き魚 18.8%↑
ポテトチップス 14.2%↑
マヨネーズ 14.2%↑
あんパン 11.3%↑
チョコレート 8.6%↑
「エネルギー」全体 16.9%↑
電気代 21.5%↑
ガス代 19.4%↑
電化製品  
ルームエアコン 14.4%↑
ドラム式電気洗濯機 32.1%↑

 

総務省
「急速な円安による原材料の輸入コストの増加が物価の上昇につながっていて、さらに円安が進んでいることから今後も影響が続くとみられる。10月は食料品などの値上がりが相次いでいて引き続き、物価の動向を注視していきたい」

全体の70%が上昇

消費者物価の調査対象で、生鮮食品除く522の品目のうち、上昇したのは385品目と全体の70%余りとなり、前の月より13品目増えました。

さまざまな食料品で物価の上昇が続いていますが、「サービス」は0.2%の上昇にとどまり、ほぼ横ばいとなっています。

総務省によりますと「宿泊料」の上昇や「外食」で値上げがみられますが、価格の変動がみられない品目が多いことや去年行われた携帯電話の通信料金引き下げなどが全体を押し下げる形になっているということです。

民間のシンクタンクからは物価の上昇に対して賃金の伸びが追いついていないことも要因として考えられるという指摘も出ています。

賃金の状況は?

賃金をめぐる状況は、31年前と異なります。

厚生労働省の毎月勤労統計調査によりますと1991年の平均で、現金給与総額は前の年と比べてプラス4.4%、物価の変動を加味した実質賃金はプラス1.1%で物価が上昇しても賃金の伸びがそれを上回っていました。

一方で、ことし8月の実質賃金は前の年の同じ月を1.7%下回り、5か月連続のマイナスとなっていて、物価の上昇に賃金が追いついていません。
生活に身近な食料やエネルギーの価格が大きく上昇しても賃金が上がっていない状況になっているため家計の負担感は大きくなっています。

専門家などからはこうした状況が続くと個人消費の落ち込みなど景気への悪影響が懸念されるという指摘が出ています。

専門家「賃上げにつなげること重要」

「ニッセイ基礎研究所」斎藤太郎経済調査部長
「原材料価格の高騰を価格に転嫁するかたちでモノの値段だけがあがっているので偏った物価上昇になっていると考えている。とくに食料品を中心に生活に身近なものが高い上昇率になっていて、家計の負担感は大きくなっている。
今まで日本は賃金を抑えてサービス価格が上昇しないという流れでデフレが長く続いてきた。しかし、いまはさまざまなコストがあがって、値上げをせざるを得ないという状況で賃金が目減りしてしまうので、賃上げが必要だという流れになってきている。これをきっかけに賃上げを行っていけば値上げの動きが落ち着いた時に安定的な物価上昇となる可能性があると考えている」

家計の負担 8.6万円増の試算

今後の家計の負担は、どうなっていくのでしょうか?
「みずほリサーチ&テクノロジーズ」は、10月以降、円相場が1ドル=150円程度で推移した場合の今年度の家計への負担を試算しました。

それによりますと、これまでの政府による物価高対策の影響を含めても、2人以上の世帯の負担額は平均で8万6462円にのぼるということです。
内訳は、次の通りです。

食料:4万1877円
エネルギー:3万5329円
家電製品を含む家具・家事用品:9256円

また、年収別に見ると負担額は次の通りです。

300万円未満の世帯:6万6472円
400万から500万円の世帯:8万2625円
700万から800万円の世帯:9万2287円

年収が上がるにつれ負担額は大きくなりますが、年収が低い世帯ほど収入に占める負担の割合は大きくなるということです。

みずほリサーチ&テクノロジーズ 酒井才介主席エコノミスト
「今回の物価高は低所得世帯にとって消費税率3%分を上回る負担増となっている。資源価格が高騰する中でさらに円安が進めば家計の負担が増える可能性もある」

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