新型コロナの感染拡大で収容人数が制限されていたライブハウスについて、観客が声を出す時間を限定するなどの条件で会場の収容率を100%とすることを認めるガイドラインを業界団体がまとめたことがわかりました。
新たなガイドラインで示された声出しルールはどのように受け止められているのか。アイドルの合同ライブイベントを取材しました。
ライブハウスをめぐっては、おととし、大阪市内で新型コロナの感染者の集団=クラスターが発生するなどして、いわゆる「3密」の条件がそろいやすい場所として指摘されました。
3つの業界団体は国や専門家の協力を得て、おととし6月以降、感染対策のガイドラインの改訂を重ね、収容人数を制限したり、マスク着用で声を出さないよう観客に求めたりしてライブを継続してきました。
そして、14日、ワクチンの接種が進み、感染者が一時期に比べて減っていることなどを踏まえ、観客が声を出すことができる条件を定めて、会場の収容率を100%とすることを認めるガイドラインを新たにまとめました。
今回、業界団体が取りまとめたガイドラインでは観客が声を出すことができる条件を定めました。
内容は次の通りです。
具体的には、マスクの着用や換気など基本的な感染対策を徹底したうえで観客の声が通常の会話の音量を上回らず、観客が声を出せる時間が1曲当たりの25%程度を限度とすることを挙げています。
ライブハウスの担当者はコール&レスポンスと呼ばれる演者と観客の掛け合いが条件の範囲を超えて行われないかや、演者が観客をあおって大声を出させるようなことがされないか、大声の会話を誘発する大音量のBGMが流されないかなどをチェックリストで確認することになっています。
新型コロナの感染拡大で収容人数が制限されていたライブハウスについて、観客が声を出す時間を限定するなどの条件で100%の収容率を認めるガイドラインをまとめた業界団体の幹部は「業界やファンにとって大きな一歩になるが、しっかり守ってもらい安心して楽しめるようにしていきたい」として、全国のライブハウスなどに対しガイドラインの順守の徹底を呼びかけています。
ガイドラインをとりまとめた日本音楽会場協会 阿部健太郎会長
「100%の収容率で声を出せるのは、コロナで影響を受けてきた業界や声出しを我慢してきたファンにとって大きな一歩になる」
一方、SNS上では、今回の条件が「現実的ではない」などと疑問の声も上がっています。
「困惑や解釈の違いが生じるかもしれないが、感染を広げないためにいろいろな議論が行われることが大切だ。われわれとしては、ガイドラインを守ってもらい皆が安心して楽しめるようにしていきたい」
新たなガイドラインで示されたライブハウスでの声出しルールは現場でどのように受け止められているのか。
16日、試験的に新たなルールが運用された東京・千代田区のライブハウスでのアイドルの合同ライブイベントを取材しました。
このイベントは収容率が50%以下だったため、これまでのガイドラインのもと、観客はマスク着用の上で音量も時間も制限なしで声を出すことはできますが、今回、1曲のみ、収容率100%の条件となる通常の会話を上回らない音量で、1曲あたりの25%程度を限度とする時間の声出しが試されました。
曲の前にはメンバーのひとりが、ファンにガイドラインの内容を説明した上で、協力を呼びかけました。
アイドルの曲は、ファンが「コール」と呼ばれる合いの手の声をところどころ入れるのが魅力の1つとされていて、今回はアイドルが「全開」と呼びかけるとファンが「はじけろ」とコールすることになっています。
ファンはガイドラインに従って通常の会話程度の音量で「はじけろ」とコールし、手に持ったコンサートライトを振り上げて、高ぶる気持ちを表現していました。
また、4分ほどのこの曲ではファンが声を出せるのは1分程度となり、アイドル側が代わりにファンのコール部分の一部について声を出し、盛り上げる工夫をしていました。
記者がファンの声出しの時間を計測したところ、30秒程度に抑えられていました。
訪れたファンは、声を出せることにうれしさを感じる人がほとんどで「ルールを守ることがメンバーや会場のためでもあるので今は我慢して、思いっきりコールできる日が来るのを楽しみにしたい」と協力する姿勢を見せていました。
アイドルグループ「仮面女子」のメンバーは、会話程度の音量でも声援がはっきり聞こえていたとした上で、次のように話していました。
「仮面女子」のメンバー
「声が小さくても声援があるのはうれしいです。私たちアイドルとしては、決められたルールの中でファンに最大限楽しんでもらえるパフォーマンスを新たに考えたいです」
イベントの責任者
「観客が声を出せたこともあり、ここ半年ぐらいの中でも雰囲気のよいライブだったので今後が楽しみだ。しかし、ルールを逸脱する観客もいるかもしれないので、どのように注意すべきかなど課題はある」
業界団体は全国のライブハウスなどにガイドラインを周知して順守するよう呼びかけていて、感染状況によっては見直しを行うとしています。