新型コロナの水際対策が大幅に緩和され、観光を楽しむ海外からの旅行客。
一方、SNSに書き込まれた「便乗値上げ」のことば。
水際対策の緩和とともに始まった全国旅行支援の影響でホテルなどの宿泊料金が値上がりしているという声も出ています。
130人余りが宿泊できる東京・新宿区にあるゲストハウスは、感染拡大前は年間およそ4万3000人が利用し、その8割以上を外国人旅行者が占めていました。
水際対策の緩和が発表されて以降、宿泊予約は徐々に増えていて、この週末は20人余りの予約が入ったということです。施設ではQRコードをスマートフォンで読み込むと英語表記でチェックインできるシステムや外貨の両替機を設置して対応にあたっていました。
オランダから訪れた男性
「日本の文化が大好きで来たので、奈良や京都の寺社を回りたい。円安なので外国人が食事をしたり買い物をしたりするのにもプラスの影響があると思う」
水際対策の緩和とともに、「全国旅行支援」が始まりました。
「全国旅行支援」は、コロナ禍で大きな影響を受けた観光業界を支援しようと、一定の金額を上限に旅行代金の40%を割り引くもので、東京を除く46の道府県で10月11日から始まりました。
初日から予約サイトや旅行会社のホームページにはアクセスが集中したほか、旅行会社などではすでに旅行商品の予約を停止する事態も相次ぎました。
宿泊施設の価格が上がっているように感じるという声も聞かれました。
旅行サイトで調べましたが、値段が高く予約するのをやめたホテルもありました。2割増しくらいになっているイメージがあります。
全国旅行支援に便乗して上がっていると感じます。ただ、上げたくなる気持ちもわかるので、しかたないと思います。
SNS上にはホテルや旅館の宿泊料金について、割引きを前提とした値上げ、いわゆる“便乗値上げ”をしているのではないかという声が上がっています。
宿泊予約サイトの担当者によりますと、「全国旅行支援」が始まってから全体的に予約がかなり増加し、宿泊料金が高くなる傾向がみられるということです。
ただ、多くの宿泊施設は「ダイナミック・プライシング」と呼ばれる需要と供給のバランスに応じて価格を設定する仕組みをとっているため、予約状況に応じて価格を変動させるのは一般的だとしています。
航空・旅行アナリスト 鳥海高太朗さん
「宿泊施設はこれまで利益を減らしてでも予約をとりたいという状況だったので、需要が高まった分、値上げをしているものと考えられる。ただ、過度な値上げは消費者の信頼を失うことにつながりかねないので、高すぎず、安すぎず、消費者と宿泊施設の双方にメリットがある適正な価格を探る必要がある」
制度の趣旨を逸脱した悪質な値上げを防ぐため、独自に対策をとっていた自治体もあります。
山梨県
「不適切な宿泊プランの設定などが発覚し、悪質と認められた場合、参加の取り消しを検討する」とマニュアルなどで周知しているということです。
埼玉県
事業者が参加を申し込む段階で便乗値上げをしないことなど、禁止事項を盛り込んだ同意書への記入を求めているということです。
観光庁の担当者は、消費者から「便乗値上げではないか」という意見が出ていることは承知しているとしたうえで、次のように指摘しています。
観光庁の担当者
「料金設定の方法や考え方は事業者によって異なるため、どこからが不当な値上げなのかを一律に定めることはできない。ただ、助成分をあらかじめ上乗せするなど、割引きを前提にした不当な値上げがされないよう都道府県を通じて事業者に周知していく」