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東京・小平 丸型ポストのタイムカプセル開封 “親子の思い”とは

  • 2022年10月13日

東京・小平市で、10年後の我が子に向けて親が書いた手紙を封印していたタイムカプセルが開封されました。タイムカプセルの保管に使われたのは、小平市に数多く残る昔懐かしい丸型の郵便ポストで、手紙を読んだ子どもたちは親への感謝の思いを新たにしていました。

丸いポストのまち タイムカプセル開封

東京・小平市には、今ではあまり見かけなくなった丸型の郵便ポストが37か所にあります。
このうち32か所は、現役のポストとして使われていて、市は「丸いポストのまち」としてPRしています。

10月1日には、西武線小平駅の近くにある、高さ2メートル80センチの大きな丸型ポストの中に10年前に入れられたタイムカプセルを開封するイベントを行いました。

封印されていたのは、当時10歳の子どもがいたおよそ40組の親たちが、10年後、つまり20歳になったわが子に向けて書いた手紙です。

タイムカプセルは、ふだんの郵便業務では使わないポストの上部のスペースで保管されていて、手紙を託した家族およそ40人が見守る中、クレーンを使ってポストのふたを取り外していました。

手紙はその場で手渡され、参加した親子は封筒を光に透かして中身が入っているか確認したり、すぐに封を開けて一緒に読んだりしていました。

このうち19歳の大学生の女性は、両親や兄のほか、ことし6月に亡くなった祖母からの手紙も入っていたことに驚いていました。

女子大学生

祖母は字がきれいだったので、見てすぐに祖母からの手紙だと分かりました。いま読んだら号泣してしまいそうなので家に帰ってゆっくり読みたい。この手紙は一生大切にします。

親としての思いを娘に伝える

この丸型ポストのすぐ近くで、夫とともに理容店を営む永井路里絵さん(48)と、長女のみのりさん(19)も、この日を心待ちにしていました。

永井さんは、これまで店の切り盛りでずっと忙しい日々を送り、みのりさんを出産した時も3週間後には仕事に復帰し、土日も店に立ち続けてきました。

親子で過ごす時間は限られ、運動会や授業参観に行けなかったこともあり、みのりさんにさびしい思いをさせてきたのではないかと気がかりだったといいます。

そんな時、店のすぐ近くにある丸型ポストを利用したタイムカプセルの取り組みを知り、親としての思いを娘に伝えるいい機会だと考え、手紙を託すことにしたのです。

Q.当時を振り返って?

永井路里絵さん
「娘が20歳になるときに過去から届く手紙は、ふだんの手紙とは違った意味を持って、気持ちが届くのではないかと思いました。すごく考えて何枚も下書きして時間をかけて書いたことを今でも覚えています」

その後も、丸型ポストの前を通るたびに、「開封まであと何年だな」と指折り数えて楽しみに過ごしてきたといいます。

さみしいとは思っていない “お母さん ありがとう”

一方、みのりさんも、母親が手紙を託した10年前の日のことをよく覚えていて、何が書いてあるのかずっと気になっていたということです。

1日のイベントで、みのりさんが10年越しで受け取った親からの手紙には、みのりさんへの感謝の気持ちと、健やかな成長を願う思いが細かい字でびっしりとつづられていました。

 

~手紙の内容~
「このお手紙を見るのは10年後、みのりが20歳になった時だね。いつもいろいろとさみしい思いをさせてしまったけど…それでもみのりは本当によく笑う子で、悲しい時も落ち込んだ時も疲れた時も、みのりの笑顔がどれだけパワーになったことでしょう。ここまで元気に笑顔いっぱいで育ってくれてありがとう。いつもパパとママに喜びをくれてありがとう。名前のごとく、みのり多き人生であることを、ずっと祈り続けています。私たちはいつだって変わらず家族だからね。ずっとずっと仲良くしよう。困ったことは何でも相談するんだよ。20歳の節目にパパとママから贈ることばです」

Q.手紙を読んで…

長女のみのりさん
「ありがとうという言葉がたくさん書いてあったけど、こうして健康で目標を持って生きていられるのは両親のおかげなので、私のほうこそ、ありがとうと言いたいです。私自身はさみしいとは思っていなかったので、母には大丈夫だよと伝えたいです。手紙は大切にしまっておいて、つらくなった時とかに読み返そうと思います」

永井路里絵さん
「さみしくなかったという娘の言葉を聞いて、一緒に居られる『時間の長さ』より『濃度』を大切にしていたことが伝わっていたのだと安心しました。このイベントを通じて家族の会話もより増えましたし、きっと一生忘れないです」

みのりさんは今、両親と同じく美容師や理容師になることを目指して専門学校に通っていて、来年春に就職する予定だということです。永井さんはこれからも「丸いポストのまち」で、家族の思い出を積み重ねていきたいと話していました。

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