塩野義製薬は、重症化リスクのない人も服用できるよう開発を進めている新型コロナの飲み薬「ゾコーバ」について、最終段階の治験で発熱などの症状を改善する効果が確認されたと発表しました。この薬は、承認をめぐり厚生労働省の審議会で継続審議となっていますが、会社は改めてデータを提出するとしています。新たな治験結果や経緯をまとめました。
新型コロナウイルスの薬「ゾコーバ」は、重症化リスクが低い人も軽症の段階で使える飲み薬として塩野義製薬が開発を進めています。
新型コロナウイルスは感染すると細胞の中に侵入し、ウイルスのRNAをコピーして増えていきますが、新たな薬はコピーの準備段階で働く酵素を機能しなくすることでウイルスの増殖を抑える仕組みです。
アメリカの製薬大手、ファイザーが開発した飲み薬「パキロビッドパック」と同様の仕組みで効果が期待されるとされ、塩野義製薬はことし2月、「ゾコーバ」の承認を厚生労働省に申請しました。
塩野義製薬はきょう、開発を進めている新型コロナの飲み薬「ゾコーバ」について、最終段階の治験の結果を速報として発表しました。
それによりますと、治験は重症化リスクがない人やワクチンを接種した人を含めた、12歳から60代までの軽症から中等症のコロナ患者1800人あまりを対象に、ことし2月から7月中旬まで行われました。
この中で、1日1回、5日間、ゾコーバを服用するグループと偽の薬を服用するグループに分けて、患者も医師もどちらが投与されているか分からない方法で比較した結果、ゾコーバを服用したグループでは、せきや喉の痛み、鼻水・鼻づまり、けん怠感、発熱・熱っぽさの5つの症状すべてが7日前後でなくなり、およそ24時間短縮されたとしています。
また、投与を始めて4日目の段階でウイルスの量が大きく減少したほか、重篤な副作用はなかったとしています。
この薬について、ことし7月、新たに創設された「緊急承認制度」を使って厚生労働省の審議会で審査が行われました。
専門家の委員からは「ウイルス量を減少させ、重症化予防の効果は推定できる」という意見が出た一方で、「胎児に影響が出るおそれがあり妊娠の可能性のある女性や慢性疾患のある高齢者は服用できない」といった意見や、「オミクロン株の症状に本当に効果があるのか」などと効果を疑問視する指摘が相次ぎました。
このため「有効性が推定されるという判断はできない」などとして、継続審議とすることが決まり、新たな治験の結果を踏まえて改めて審査が行われる見通しとなっていました。
会社は、治験の結果、良好な結果が得られたとして改めて厚生労働省などにデータを提出するとしています。