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外国人観光客受け入れ再開2か月 日本と各国の水際対策 最新情報

  • 2022年8月15日

経済の活性化をめざして、外国人観光客の受け入れが再開されてから10日で2か月。
ただ、本格的な回復には至っていません。
円安を背景に観光客の増加に期待する声が出ていて、感染対策を徹底しながら経済の活性化をどのように進めていくのかが課題です。
日本と各国の水際対策の最新情報や、首都圏の観光地などの動きをまとめました。

外国人観光客受け入れ再開

政府は新型コロナの感染拡大の防止を目的に、受け入れを停止していた外国人観光客の受け入れをことし6月に再開し、10日で2か月となりました。

受け入れは1日あたりの入国者数の上限2万人の範囲で行われ、入国の対象はアメリカや韓国、中国など102の国と地域です。
感染拡大を防ぐために添乗員付きのツアー客に限定されています。

出入国在留管理庁によりますと7月末までに入国した外国人観光客は8000人あまりにとどまりました。

6月:252人
7月:約7900人

また、観光庁によりますと、8月5日から8月31日までに入国すると申請した外国人観光客は8500人あまりで、1日平均でおよそ310人となっています。

その背景としては、訪日客が多かった中国で海外への渡航が厳しく制限されていることや、現在はすべての国や地域でビザの取得や新型コロナの陰性証明の提出が必要で手続きに時間がかかること、それにツアー客に限定されているため個人旅行を好む欧米からの観光客の入国が低調なことなどが考えられるということです。

浅草 インバウンド需要見込めず

東京・浅草のレンタル着物店では、新型コロナウイルスの感染拡大を理由に予約のキャンセルが出るなどインバウンド需要が見込めない状況が続いています。

このレンタル着物店では、新型コロナの感染拡大の前は、着物で町を散策したり記念写真を撮ったりするため多くの外国人観光客が訪れていました。
時には、店の代表やスタッフが出張で数十人のツアー客に着付けを行うこともあったということです。

しかし、今は売り上げが当時の半分ほどに落ち込み、店舗も縮小して営業しています。ことし6月からの外国人受け入れ再開に期待をかけていましたが、2か月がたった今も店に来る外国人観光客はほとんどいない状況が続いているということです。

ことし10月にはおよそ3年ぶりに30人ほどの外国人のツアー客の予約が入っていましたが、日本での新型コロナの感染急拡大を理由にキャンセルになりました。

店では、外国人が好むあでやかなではっきりした色づかいの着物は需要が減ったため、並べる数も少なくして、店内や自宅などで袋に入れて保管せざるを得ず、インバウンド需要が見込めない状況が続いています。

レンタル着物店「華雅」 小野玲子代表
「コロナ前に比べると厳しい状況が続いている。以前のように多くの人に日本の文化を感じてもらったり浅草を楽しんでもらえるようになってほしい」

「ギョーザのまち」不安続く

外国人観光客の受け入れ再開から2か月がたつ中、「ギョーザのまち」として知られる宇都宮市のギョーザ店では、2年半ぶりに外国人のツアー客が来店しましたが、その先の予約は入っておらず不安が続いています。

宇都宮市郊外のギョーザ店「さつき」は、長引くコロナ禍で売り上げが大きく落ち込む中、外国人観光客の誘致に活路を見出し、新たなメニューの開発などに取り組んできました。

4年前に開発した、イスラム教徒向けの豚肉などを使っていない「ハラール餃子」に加え、厳格な菜食主義者向けに「ビーガン餃子」を新たに開発して外国人観光客の来店を待ち望んできました。

そして、受け入れ再開からおよそ2か月がたった8月6日、シンガポールからのツアー客26人が店を訪れ、「ハラール餃子」を食べたりギョーザ作りを体験したりして楽しんでいました。

外国人観光客
「入国などの手続きが大変でしたが、日本の独特な文化をどうしても体験したくてやって来ました。今後はもっと入国しやすくなればうれしいです」

 

シンガポールの旅行会社の担当者
日本は今のところ、ツアー客しか受け入れていないので、現地で自由行動ができず、外国人からすると旅行しづらくなっている

この店に外国人のツアー客が訪れるのは2年半ぶりでしたが、この先、ツアー客の予約は入っていないということです。

店長 山下登貴雄さん
「久しぶりの来店に感無量ですが、第7波の終息が見えず、不安が続いています。早く新型コロナが収束して国には受け入れの制限を緩和してもらいたい」

日本の水際対策は

98の国と地域を対象に受け入れが再開されたのにもかかわらず増えない外国人観光客。
日本の水際対策はどうなっているのか。

受け入れの対象になるのはアメリカや韓国、イギリスなどリスクが低いと判断されたあわせて98の国と地域からの添乗員付きのツアー客に限定されます。
これらの観光客はワクチン接種を受けていなくても入国時の検査や待機措置は免除されます。

これ以外の国と地域については、引き続き入国目的はビジネスや留学などに限定され、観光客は受け入れの対象とはなっていません。
ただ、このうちインドやベトナムなど99の国からの入国者は3回のワクチン接種で検査や待機措置が免除され、パキスタンなど4か国はこれまで通り検査と待機を求めます。

各国の水際対策は

○アメリカ
バイデン政権は新型コロナウイルスに関する入国規制を緩和し、ことし6月12日からは外国から航空機で入国する際は新型コロナの検査の陰性証明を不要としています。

理由についてCDC=疾病対策センターは、ワクチンの普及などによって「アメリカでの死亡や重症化のリスクが下がったため」と説明しています。
ただ入国する外国人にワクチン接種の完了を原則として義務づける措置は継続しています。

○イギリス
ことし3月、ワクチン接種が完了していない人に求めていた出発前や入国後の検査などを廃止しました。

○フランス
入国の際にワクチンの接種証明書などの提示を求めていましたが、8月から不要としました。

○イタリア
入国の際にワクチンの接種証明書などの提示を求めていましたが、ことし6月から不要としました。

○ドイツ
ことし6月、暫定的な措置として入国の際のワクチン接種証明書などの提示を不要としています。

○スペイン・オランダ
EU=ヨーロッパ連合の加盟国に居住する人などに限って水際での措置を撤廃していて、日本などから入国する場合はワクチン接種の完了などが求められています。

今後の水際対策は

新型コロナの水際対策について、岸田総理大臣は、記者会見で次のように述べました。

岸田総理大臣(10日の会見)
「感染拡大の防止と社会経済活動のバランスをとりながら、他のG7諸国並みに円滑な入国が可能となるよう、緩和の方向で進めていきたい。しかし具体的な措置については、内外のニーズや検疫体制などを勘案しながら、内外の感染状況もしっかり踏まえた上で適切に判断していきたい」

今後の受け入れ 専門家は

観光などの分野に詳しい日本総合研究所の高坂晶子主任研究員は、今後の受け入れについて、性急な受け入れの拡大は慎重にすべきだという考えを示し、受け入れ拡大を判断する際には国民の理解を得ることが重要だとしています。

日本総合研究所 高坂晶子主任研究員
「インバウンドは日本経済、特に地方にとって重要な活動のため、円滑に再開することは大変重要だ。しかし、あまり急ぎすぎると、地方の観光地などでは雇用や感染対策など受け入れ側の準備が十分に整っていないところもあるので、かえって、あつれきが生じることもある。
1日あたりの入国者数など制約がなくなれば観光客の数は自動的に回復する。
国民が支持をして、歓迎するような観光でなければ長続きしない。外国人観光客を喜んで迎えられるような環境をいかに早く達成するかが政府に求められる」

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